5年後(リンク先は55秒から)

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     早くに目が覚めて、朝日をぼけーと見つめながら、なぜかふと母親のことを考えた。母親は、ガンが見つかってすぐのころ、「せめてあと5年は生きられれば」というようなことを言って、親父が「欲張りやな」と茶化していた。で、気づいたことが、あれから5年がとっくにたっていたということで、欲張りな願いがかなっていたとしても母親はもう死んでいる勘定になる。今更そんなことに気が付いて、俺はパンを焼いてコーヒーを淹れた。
     ちなみに母親が死んだのは震災の少し前のことだった。5年てのは、俺にとってはそんな期間なのだった。

     さて、本日の朝、知り合いのD氏から連絡があり、出張で今関西にいるのだという。正確には昨夜に電話があったのだが、疲れ切っていたので早寝した上、電話にも気づかなかった。それで仕事終わりで合流すると、これから梅田で坂田明のライブに行くからお前も来いとのたまう。この人から名前をちょこちょこ聞くジャズの人だと記憶していたので、てっきり梅田のジャズバーで酒でも飲みながら、かと思ったら、場所は楽器屋(といっても軟弱な電気楽器ではなく高価な管楽器の店)が構える小ぶりな明るいホールで、楽器はクラリネットだった。

     坂田明とまじめな仲間たち、という生活の党みたいなグループ名だが、坂田氏以外の「まじめ」な人々は、つまりは皆クラシック畑で、ナントカ音楽院首席卒業だとかナントカコンクール最優秀みたいな経歴の持ち主ばかりだった。対する坂田氏は大学の水産学科卒と経歴にあるからまじめではない。まじめだったら今ごろ養殖でもしている。MCも「そのうち終わります」とまじめでなく、笑った。

     さてクラリネットといえば、昔親族が警察の音楽隊に所属していて結婚式のときに披露していたのを聞いたことがあるくらいだ。披露宴にはお約束のなかなかにぎこちない演奏で、会場が微妙な空気になる中、母親は隣でけらけらと笑っていたものだった。クソ真面目で面白味のない人だと高校生当時の俺は思っていたが、まさかこんなオフィシャルな場で毒っ気を炸裂させるとは。お陰で音色の記憶は全くない。

     改めて極度にうまい人の演奏を聞く格好となったわけだが、うーむ、よくわからないがあまりピンと来なかったというのが正直な感想だった。音が好みではないような気もするし、耳が、律動がベースにある商業音楽に毒されているせいかもしれない。でも、坂田氏がサックスみたいにディストーションかけまくって吹いているのは染みたから、要するに自分も不真面目なのだろう。

     D氏はこの面々とすっかり昵懇らしく、流れで俺も打ち上げに参加することとなった。適当な居酒屋を想像していたら、頑固ずしの座敷だったので若干場違いだと後悔した。およそ会う機会のない種類の人々なので、そういう人たちと話せる機会は貴重なはずだが、クラリネット談義に混じれるはずもなく、結局奏者のみなさんと唯一話が通じ合ったのは、ホールの人間にはなぜ一定量態度の偉そうな好かんヤツがいるのか、という話題だけだった。よりにもよって悪口かよ。ママ〜、アイジャストdisったざマン。まさにパッキャラマードな夜だった。

    まさかの巻き

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        久々に外タレのライブ。久々のバックチェリーだ。最新アルバムの前の前の前のアルバムの時に来日して以来。もう何年前のことか。時の流れがあーやだやだである。

       ロックバンドのライブで一番興奮するのは、始まるときだと思う。客電が急に落ちて、ダラダラと流れてたBGMが落ちて、真っ暗な中で客がワーキャーと気勢を上げて、ギターかドラムの音とともに照明がバチコーンと点灯して、というあの瞬間が一番毛が逆立つと思う。

       というわけで、遅刻厳禁なんだが、連中はしばしば平気で20分30分くらい開始時刻を遅らせる。中にはKISSみたいに「遅れて始めるのはダサい」と定刻開始を明言しているバンドもあるけど、はてバックチェリーはどうだったかと会場へ向かうが、モタモタしているうちに、開始ギリギリに会場に着いた。もぎりの人にチケットを渡す傍らでドアが閉められ、その隙間から、もう始まってるのが一瞬見える。あれ?遅れた?と思って時計を見たら、開始時刻の3分前。まさかの巻きでスタート。新しいスタイルのロックだなおい。

       いかにも日本人ウケしそうなこのバンドだが、いまいち売れてないのか、小さ目のハコでのライブだった。こっちにすれば近くでみれるからいいんだけど、飛行機代回収できてるのかなとか余計なことを考えてしまう。

       ライブは普通に素晴らしかったんだけど、何がよかったかって、全員ちゃんと楽しそうにやっているのがよかった。天狗になってるせいか何なのかよくわかりませんが、やる気ないのバレてるぞっていうバンドは珍しくないもんで、帳尻を合わせることは熟達者ならではの技とはいえるかもしれんが、当人が思ってるよりはバレバレなもんである。そこへいくと彼らは、全身刺青でファックだのビッチだのコケインだの唄ってるわりには、真摯な姿勢で、見てて気持ちがいいもんです。高野連の理事か。

       ライブはよかったけど、目の前のデカい男が、曲に合わせて熱唱していて、それはそれで自由に陶酔してくれればいいんだが、なぜかいちいちドヤ熱唱のままこちらを振り返ってくるのが面倒臭いを通り越して、若干むかついた。英語が歌えるのを自慢したいんか。

      ストロベリーオンザホールケーキ

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          『ああどうも、今よろしいですか』
         「なんでしょう」
         『森下君、23日木曜の夜は空いてますか』
         「まあ、そうですね」
         『嫁さんとライブに行く予定が、嫁さんが骨折して行けなくなりまして。で、どうでしょう』

         という知り合いのムァツイさんからの棚ボタな誘いに乗っかって、久々にビッグキャットに行ってきた。あそこの嫁さん、骨折はこれで二回目な記憶があるが、大丈夫なのだろうか。脱臼ぐせというのは聞いたことがあるが、骨折ぐせというのもあるのでしょうか。

         前座、メイン、ともに知らないバンドのライブに行くというのは、以前に薄〜い知り合いのタカハシさんから「是非」とタダ券付きで薦められて以来のことだ。あの時は、是非!と薦めてきたのがまさかのコミックバンドで往生した。演奏どうのということではなく、会場の異様な一体感に全くついていけなかったのだ。

         今回はともにメタルだった。メタルの中でもテンポがめちゃ速くて、ボーカルが低い声でがなる系の、真似したらすぐ喉から血が出そうな、どっちもあれ系のバンドだ。あまり得意なジャンルではないが、会場はただ暴れてるだけだから、気分は随分楽である。

         さて、俺は開演20分前には着けたのだが、ムァツイさんの姿が見えない。早くも客席でスタンバっているのかもと客席を覗くが、フロアは既にごった返していてとてもじゃないが見つからない。なんだか邪道だなと思いつつ電話してみる。

         「今、どちらですか?」
         『私はここです。今、手を挙げてました』

         最前列の中央で、ひょろっこい手がヒラヒラしているのが見えた。場所取りが本気過ぎる。あれでもう管理職なんだから若いというか何というか。とてもじゃないが、俺は前列は遠慮した。熱心なファンが暴れるスペースだからだ。

         前座は台湾のメタルバンドだった。その名も高砂軍。高砂族という台湾の現住民族の名を関した、なかなか反逆的な名前がよろしい。編成は、Vo、Gt、B、DrにKeyの五人。我らが直列6気筒エノモトと同じ編成だが、違いはベースが女性だったのと、キーボードがスケ番刑事3みたいな仮面を着けていたことである。上地にもあんな鉄仮面をつけてもらってキャラ立ちしてもらおうかしら。まあ、元から仮面のように無表情で淡々と演奏する男ではあるのだが。ベースの女性は、薄〜い知り合いの矢島女史によく似た涼しい顔をした美女であった。あんなほっそい体と腕で高速メタルを演奏するんだから、やってれん。

         それなりにファンが多いようで盛り上がっていた。台湾から来たメタルバンドが日本で受けるというのは、時代も変わったなあと思う。

         メインはLamb of Godというバンドだった。ボーカル以外のメンバーは皆一様に、無造作な長髪とエンゲルスのようなボーボーの髭。なぜだかメタルバンドにはこういう風体の人が多い。ベースの人だけちょっと変わっていて、白いロン毛に白いロン髭。板垣退助かライススペースの高橋代表みたいだなと思った。

         このバンドの演奏はドラムに特徴がある。曲の中で、AメロとBメロのリズムパターンを変えるというのは手法として普通なのだが、このバンドの場合、リズムパターンの変化がえげつない。途中、何ビートを叩いているのかサッパリわからなくなるくらい、恐ろしく手が込んだ、いや手も足も込んだドラムだった。足だけであんなリズム、痙攣でもしてなければ叩けんぞ。メッシもビックリの足技だった。

         最近は、客がダイブするのは厳しく禁じられているらしい。高速で演奏するこの手のバンドは、必然客が盛り上がってダイブをするものだ。ダイブというのは胴上げみたいなもので、下を支える客の手で前へ前へと押しやられて、最終的に客席とステージの間に設けられた通路に下ろされる格好になる。するとスタッフに確保され、何事か警告を受けながら客席の外周の通路をぐるっと連れて行かれて最後列のゲートで釈放される。懲りない面々はそれでもダイブを繰り返すから、ピンボールのように人間が外周を回って、なかなかケッタイな光景だった。

         曲の合間にボーカルが急に「そういや今日はサウンドエンジニアのブライアンの誕生日だったな」とワザとらしく思い出し、スタッフがケーキを持って現れた。ボーカルが促し客席とともに♪ハッピバースデーと唄い出す。ブライアンは客席の後ろのブースにいたから、屈強なスタッフの先導で、派手な衣装を着た女性がケーキを掲げて客の合間を横断していったのだが、俺の目の前に来たとき、うすらデカい白人がグイっと割り込んできたので何だこいつはと目をやると、その白人は高々と掲げられたケーキの皿を下から叩き、哀れケーキは放物線を描いて地面に叩きつけられた。クリームが飛び散り、イチゴのにおいがぷうんと充満する。ハゲで眼鏡の学者風な白人は、印象とは裏腹の意地悪い笑いを浮かべて「ドッキリ大成功!」とばかりに一人盛り上がっているが、白けきった空気が充満していたのは言うまでもない。
         異変に気付いた屈強なスタッフ(前身刺青)が、「really?」と半笑いで実行犯に近付き、そのまま二人でどこかへ消えた。ダイブの客と違い、二度と戻ることはなかった。バンドメンバーが全く気付いていなかったのが幸いか。ケーキを食い損ねたブライアンには特別なバースデイになったとはいえるだろう。幸あれ。


        テンカウント

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            香取慎吾と小林克也が出てる、あの趣旨のよくわからん番組が、日本人の好きな洋楽ベスト20というテーマだったのでつい見てしまった。ランキングに出てきたシンディ・ローパーだの、ボンジョビだの、いくつかのミュージシャンについて、小林が「ここでクエスチョーン」と、ゲストに「10秒で誰々の魅力を語ってください」と三回ほど振っていた。ゲストは土屋アンナ。この人、三回とも「まず」と語り出していたから、その時点で10秒で収まるはずもない。語りたがりの可愛らしい人なのか、同じ轍を何度も踏む要領の悪い人なのか。それはさて置き、学生諸君は、面接で「まず」と回答を切り出さないように。まとまりませんから。

           ところで大きな試合なんかで、国歌斉唱を有名人が歌うという風習が定着しているが、基本アカペラで唄うのは、演出ではなく、伴奏に合わせて唄うとハズす公算が非常に高いという曲の性格に因るという豆知識を聞きかじったことがある。自分の歌いやすいキーで歌うのが無難てことだ。これは日本国歌だけでなく、アメリカ国歌でも同じらしく、このランキングに登場していたような有名ミュージシャンも、よくしくじっているらしい。そんな難曲を堂々と歌ってのけてみせたのが、ホイットニー・ヒューストンで、大した人だったんだなあと思う。歌手がロクな死に方をしないというのは世の常のように思ってしまうが、歌を唄えることが幸せにはつながらないというのは考えてみると変な話ではある。まあ、天文学者の方が圧倒的に報われず死んだ人が多いんだろうが。

          ミカミッヒ、シャングリラに出るの巻

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              このブログに何度も登場しているミカミッヒ君が梅田のシャングリラに初めて出演するというので、それは見ねばなるまいてと行ってきた。ドラムのウエケンさんとの出演だったんだけど、サトシ!お前は何をしてる、お前のベースが要るんだ!ステージ上では立派なマーシャルのアンプが演者を持たぬまま電源オフで突っ立っておったぞ。「西の方の国から」は君のベースがないと西の方感が足りんのだよ。ベースを手に取れ、取るんだサトシ!

             対バンはホールがホールだけにといおうか、いずれもスキルと方向性のハッキリした連中だった。そんなのを見てこんな感想で申し訳ないのだが、とあるバンドのベースのあんちゃんが今吉に滅茶苦茶ソックリだった。舞台を見に行くとかなりの確率で今吉に似ているやつが出演しているという演劇あるある(もしくは今吉あるある)がとうとうミュージックシーンにも波及したか。ただしベースの彼は今吉と違ってゆっくり喋る。(ところでリンク先の映像はこの日のライブの映像。撮影者の仕事の早さには脱帽)

             うーんしかし、みんな上手いなあ。そして俺たちが「ベタなジャパニーズロックやなあ」と思いながら作ってる曲は、今時からは随分離れて意図せずオリジナルな感じになってるような気もする。

            I Can Get SATISFACTION

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                野江のS-Paceで練習。チラシではよく見る場所だけど来るのは初めて。京阪の野江駅がまず結構シブくていい感じで、小屋も何だかいいところだった。もう3日くらい合宿してるんじゃないかという気分になった、そんな雰囲気の場所だった。

               実のところ、台本がようやく今日上がったのだが、まあエエ具合にまとまったんじゃないでしょうか。非力ながらこのワタクシめが最終的なアウトプットの体裁を整えるとしましょう。

               練習終わって、梅田で記者のO君とその彼女のMさんと待ち合わせ。Mさんが多少の長丁場を経てようやく就職が決まったのでその祝杯である。漂泊の就職浪人ハナヤマほどではないにしろ、結構なワイディングロードを越えての内定で、かつ希望していた職種に就けたようなので、人のことをどうこう言える立場ではないことを重々承知しながら、よかったなあと思う。

               3人で向かった先は、南森町の「シェルター」というバー。ここでミカミッヒのワンマンライブがあるので、半ば強制的に連れて行ったのである。

               店内はカウンターに座ると後ろが通れないくらい細長い間取りだった。京都か。食い物が充実していたので、レインドックスよりは腹の虫をおとなしくさせながら見ることが出来たけど。

               この日のミカミッヒは、MCも手短で次々演奏していてよかった。やれば出来るじゃないか青年。んで気の置けない関係性という立場を濫用して、就職が決まったMさんにおめでとう的な言葉を言うてくれとお願いする。何せ就職祝的な席は今日が初めてというし、人間「おめでとう」って言われる機会は意外と少ないもんだ。ミカミッヒが曲の合間のMCんときにそんな話でもしてくれれば、パっと盛り上がってエエお祝いになるんじゃなかろうかと、人任せの祝辞である。

               ところがいざギターを構えたミカミッヒは、「さっきエエ話聞いたんで、即興で歌います」とマイクに向かって宣言し、やたらよく出来た就職活動の歌を歌い上げて、Mさんの涙を誘っていた。やるなあミカミッヒよ。Mさんは後で「『何で私の気持ちがわかるの?』って思った」と言ってたけど、人は意外と似たような悲しみとかしょっぱさとかを抱えて生きているものなのだよ。ミカミッヒは普段はアホなくせに、歌になった途端、エエ言葉を詞にするなあ。こち亀の本田か。

               「自分には存在意義がないんじゃないか?」的な内容の出だしに始まり、全ての学生の共感を呼べる歌詞だったと思う。これキッチリまとめたら、就職活動中の学生のバイブルになるような歌が出来上がるんじゃないか?そうなりゃ21世紀の尾崎豊も近いぞ。

               まあ、とにかく、人は他人にあまり関心がないものだが、手を差し伸べると意外と分かり合えることも多かったりするもので、他人の本のタイトルをまんま引用すれば、「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」ってことですか。

               以上のように俺の出番はちっともないイイ話なのだが、俺自身は実にいいことをしたような自己満足の夜であった。他力本願やないか!ってね。だけど親鸞聖人はむしろそれを教えといておられるのであります。

              写真:会場細!手前のシルエットがMさん。

              日本橋の昼、桃谷の夜

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                  昼間から練習なので、役作りのため今日は朝からコーヒーを淹れた。無論、単に自分が飲みたかっただけの話だ。豆からガリガリと挽いて淹れる。よく人からは「本格的過ぎる」と、スノッブなヤツに思われて(コーヒーだけに)引かれることが多いんだが、世間的にはそんなもんか?よくわからん。ミルは安物で豆も業務スーパーの安物だ。それで何の不満もないから自意識的にはたいしたことない。
                 練習場所にギリギリで到着すると、河上さんが若干遅刻気味に現れる。彼女はチャリ通なのだが、大阪市内でマラソンやってたから交通規制かかっててエラい大回りする羽目になったとのこと。


                 練習終わりで桃谷へ移動し、記者時代の先輩のナカムラさんと合流した。ナカムラさんはおっかない暴れん坊でそのくせ繊細でとても優しい、実に卑怯な素敵なオッサンである。2人で向かった先は良元優作ライブだ。4枚目のアルバムの発売記念ということで、バンド編成のワンマン。これは行かねばなるまいて。

                 会場は高架下の「夢屋」という場末の小料理屋みたいな名前のハコだった。高架の橋脚がむき出しで店内にドーンとあって、そのせいでなんとなく全体がアーチがかって見えて白壁で、要は京都のアートコンプレックスが天井低くなったような面白い場所だった。

                 到着がギリギリだったこともあって、既に満席状態だった。立ち飲み屋のとっさんとか、クワバラさんとか、これまた記者のミズシマさんとか、知った顔にやあやあと挨拶して、ナカムラさんとともに座れる場所を探していたら、結局エラい端っこのソファになってしまった。どれくらい端っこかというと、李忠成と長友の位置関係くらい端っこだった。無論、俺が長友の位置である。横顔、それも若干後頭部側やんけ、という。

                 さて演奏だけど、何曲か12弦ギターを弾いていたのが嬉しかった。「あれ、俺があげましてん」と周りに「あいつは俺が育てた」的なみっともない自慢をする。ま、俺がというか、もともとマツイさんからもらったものを、天下り法人のごとく横滑りさせただけだけど。

                 バンドはギターの西條氏、ウッドベースの中島氏、自転車の小竹氏という編成だった。やはりバンドに自転車がいると曲に奥行きが出る。あまりバンドに自転車はいないのだが。って、いるか!そんなもん。つーか自転車って何やねん。

                 正確には一曲だけ自転車のチェーンのカラカラという音と、チリンチリンを打楽器的に加えていただけの話なんだが、チリンチリンを楽器として曲に乗せるのは、クイーンの「バイシクルレース」以来の事件かもしれん。

                 つまり小竹氏はドラムで、基本はブラシで叩くスネアとハイハットの演奏である。やっぱドラムはいい。曲のメリハリが一気に増強される。ハイハットがバチって決まると実に気持ちいい。優作君の曲が、結構色んなリズムパターンで出来てるんだなあというのもあからさまわかる。俺の好みでは一度ドラムセットをドンガラ叩いて演奏してみて欲しいものだが。

                 終わってナカムラさんとミズシマさんと、ミズシマさんの知り合いで元ボクサーのアンチェイン梶さん、梶さんの友人のキタオさんと5人で一杯やりに行く。梶さんは映画にもなった人だ。俺はまだ見たことないけど、とにかく面白いドキュメンタト映画らしい。優作君の客層は、ホントわけのわからん面白い人が多い。
                 ミズシマさんが疲れた様子だったので、理由を聞くと日中マラソンしてたらしい。おい、交通規制かかってたところを疾走してた人がこんな身近にいたのかい。

                 ナカムラさんと京橋の立ち飲み屋で暑苦しく語って帰宅。優作君の新作を聞いた。「春の虹」が一番響いた。まぜっかえすような話で大変申し訳ないが、アルバム未収録である。会場で配ってたオマケに入ってた。収録すりゃよかったのに。と外野は勝手に思う。もう6回聞いた。


                「souvenir-episode3」

                ■日時
                 2月15日 18時〜 / 20時〜

                ■場所
                 in→dependent theatre 1st (地下鉄堺筋線・恵比寿町駅最寄)

                ■料金
                 1500円

                ■出演
                 森下淳士、諏訪いつみ(満月動物園)、河上由佳(同)、西出奈々(彗星マジック)、
                 白木原一仁(ななめ45°)、伊藤由樹(突劇金魚)

                ■問合せ
                cc@at-will.jp


                レインドッグスにて

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                   実に3年ぶりだ。
                   劇団ころがる石が舞台をやる予定だ。
                   それも来月。
                   台本がちっとも出来てないので井上ひさしがごとくポシャるかもしれない。
                   アナウンスでもしておかないと、心が折れそう。なので告知にもならない告知をしておこう。
                   タイトルは「sengoku38」にしようかと思ったが、そこまでの蛮勇はなかった。

                   というわけで私様は忙しい。忙しいんだが本日はレインドッグスだった。
                   ミカミッヒ君主催の企画「歌うたいのバーにて〜サヨナラのウタゲ」の撮影を頼まれたからだ。カメラを2台抱え、姉のような顔で毎度のごとく客席にいた村居&きのっぴに無理矢理手伝わせ、撮影しましたよ。しめて6時間。なげー。総勢8人の歌うたいを、一部カメラトラブルで撮れなかった場面もあったけど、撮りましたよしっかり。疲れた。
                   どれくらい疲れたかというと、ミカミッヒ君の常連客の知った顔から「人間三脚やなあ」と感心されて、下ネタ(俺の脚は三本云々)で返答してしまうほど疲れた。だけど撮ったけどこれ、どうすんだ?

                   いつもの顔ぶれのほかに知った顔といえば、芝居仲間の阿形ゆうべ君と、先日良元優作ライブで知り合ったクワハラさんがいた。
                   なぜクワハラさんがいたかというと、優作君も出演していたからで、この日の優作君は、さかむけでも出来てんのか、という具合に微妙にケンケンしていた。「いや〜、今日はブラックな良元優作を見れて嬉しいですね〜」と、クワハラさんは何でも褒める。大ファンだなおい。

                   ちなみに俺は、優作君と会えるってんで、一個わがままを聞いてもらった。「死んだ母親に一曲歌ってくれ」。喪にかこつけて他人に甘える。今の俺は喪中貴族だぜ。ん?喪中貴族って、公演のタイトルにどうやろ?

                   「ええすよ、何なら同じ曲何べんも唄いましょか?」。男前っ。そんなことがあって一曲演目に加えてもらった。当人もMCとかで何も言ってなかったので、どれがそうかはあえて言うまい。ライブではあまり聞かない曲が一曲あったと思う。それなんだが、実はもう一曲の方とどっちを頼むか悩んでいた。そっちの頼まなかった方も奇しくも彼は歌っていたので、実はそっちの偶然に泣きそうになっていた。

                   8人の中では、田渕徹氏がゴキゲンなノリでよかった。彼とは優作君と酒飲んだときに一度会ったことがあるんだが、そのときは酔いつぶれてたか何かで、店の端でチンマリと元気なく沈んでて、失礼ながらこんなに通る声を出す人には見えんかった。でもって客アオるのが上手い。これくらいできりゃなあ、と羨む。

                   客席では阿形君とクワハラさんが、同じボブ・ディラン好きということで、限定版の入手方法とかあれこれ情報交換していた。オフ会か。

                  新奇の呪縛

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                     ミカミッヒ君からのライブの誘い。最近さんざん不義理こいていたので顔を出す。「新曲書けよ」と会うたびせっついておいて、いざ新曲出来たらライブ行ってないというのもあり、また会場のレインドッグスが今年一杯で閉めることになったというのもあり。最後と聞くと急に行きたくなるのがクダラン人情というやつだ。

                     電車で大阪駅で降りてホールへ向かう途中、路上で演奏している若い女性がいた。勝手な形容詞だが、オーガニックな服装をしてオーガニックな曲をアコギの弾き語りで歌っている。今風な優しい歌といえばいいか。んで会場着いてから見た女性シンガー二人も、大雑把に言って同じようなカテゴリの曲を演奏していた。

                     みんなよく声が出ているし、結構な演奏技量があると思う。だが、あまり残らないこの感じは何なんだろうと考え込んでしまった。

                     オーディション番組の審査員だったら「新味がない」とか「小さくまとまってる」とか、それこそ新味がない評を下して終わりの話なんだが、新味やインパクトを当たり前のように要求するのもどうなんかなと個人的には疑わしく思うところもある。そういうのの呪縛に囚われて行き詰ってしまった代表例はレッドカーペット芸人じゃないかと思う。気鋭の若手写真家とされる人々の作品なんかにも似たような新奇なるものへの強迫観念を感じさせられることが多い。地味なものをきっちり評価する人間も必要なんじゃないかと思うのだ。

                     とはいえ、とある枠組みの中に収まっちゃってる印象の音楽を立て続けに二人聞かされると、彼女たちの自己顕示欲はどこで満たされているのだろうという疑問も湧いてきてしまう。個人的に苦手なジャンルの曲だからだろうか。だけど「っぽい」というのは音楽にしろ何にしろ、創作意欲の大いなる牽引材料でもあるしなあ。難しい。

                     とかいいつつ、終演後、若く可愛らしい彼女らとキャッキャと酒を飲めて楽しかったのでゴチャゴチャ考えてたことが全部チャラになってしまったんであるが。

                     この見事なホールがなくなるという詳しい事情は全く知らないんだけど、皆口を揃えてもったいないという。「一緒に金出し合って買いませんか」と呼びかけたけど、「そりゃええなあ」と笑われただけで終わった。

                    12弦ギター

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                       先日マツイさんから貰ったギター群のうち、最も手に負えなさそうな12弦のアコースティックギターは良元優作君が使えばいいんじゃないか?と思いつく。尋ねてみると「是非欲しい!!」と、ブラックバスばりにガッブーっと食いついてきた。

                       このギターだけ妙に薄汚れていたので、ぼろきれとエアダスターと掃除機を駆使して垢を落とした。中で何の部品が転がってるのか、カラカラと音がする。

                       で、彼の自宅まで持って行く。ご機嫌な犬がクがンクンと出迎える。「ほれ」と渡すと「おー、予想したより全然いい感じじゃないっすか〜」と優作君は早速手に取る。カラカラ…。「何の音すか?」と、彼がボディの穴をのぞきながらギターを振ると、転がってたのは部品でも何でもなく、ミイラ化したゴキブリの死骸だった。頼むよマツイさん。「このまま持って返って下さい」と返品されそうになった。

                       外でギターを振って無事中身を空にして、早速弾いてもらうことにする。優作君の手作り感溢れる防音ルームでチューニングを合わせるんだが、12弦もあると調律だけでひと苦労だ。ちなみに12弦ギターというのは、通常6本ある弦のそれぞれに、もう一本添えられている構造をしている。マンドリンと似たようなものだ。セットになってる弦同士は1オクターブ違い、弾くときは基本、2本同時に鳴らす。なので高音の方の弦はやたら細い。案の定チューニング中に一本プチンと切れた。

                       「昔、『ポニーテールはふり向かない』で…」と優作君はお約束のように言い出す。俺、そのドラマ見たことないんやけど、弦切れるたびに誰かが言うので覚えちゃったよ。

                       11本のままではあったが、優作君がポロロンと鳴らすと、ほ〜なるほどなあ。想像したより凄くいい音が鳴るなあ。アリアのだったから見くびってた。エレキギターで「コーラス」のエフェクターかけてるのと似たような音なんだけど、生音はやはり広がるねえ。レッドツェッペリンの、曲名知らんけど、あの曲みたいな感じよ。「あの曲」言われてもなあ。

                       何曲か試したけど、和音をジャーンとやる曲より、単音を弾く旋律の方が割りと向いてる気がする。彼が自分の曲を次々試す。これはいい、これはいまいち、そんなことを夜中までしてた。「これはいい」方はそのうちライブで演奏してもらうとしましょう。


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