決着トントン対決2019;トランプとターナーに見るワールド情勢

0

     無事(?)第7戦までもつれ込んだヒューストンとワシントンのトントン対決ワールドシリーズは、双方とも本拠地で敗北し敵地で勝利する展開で、いわゆるホームフィールドアドバンテージ(レギュラーシーズンの勝率が高い方がホームゲームの開催が1つ多い)のあったヒューストン・アストロズがホームディスアドバンテージになってしまって敗北。ワシントン・ナショナルズが見事初優勝を成し遂げた。

     互いがホームぜ全敗するのは史上初とのことで、完全なる外弁慶シリーズであったが、しかし外弁慶って、要するに「弁慶」ってことよね。弁慶も帰宅すれば泣き言の1つくらい言うだろう。だとするとホームで弱い=内平維盛ってことだろうか。ナショナルズのソトはアストロズ自慢の先発陣を軒並み攻略したので弁慶ばりの活躍を見せた。

     

     実のところ、ホームゲームだからといってそれほど勝ちやすいというわけではない。2009-2018の10年間でいうと、32勝27敗。ホームがやはり上回るとはいえ、6割もいかないし、ホーム全勝のカードもない。そしてホームゲームで負けるのは、ミック・ジャガーかバスケの選手が見に来たときと相場が決まっている。今年のドレクスラー&オラジュワン(ヒューストン)、2016年のレブロン(クリーブランド)。そして共同オーナーの1人として毎度マジック・ジョンソンが観戦に来て敗北するドジャース。ワシントン暮らしを始めた八村塁も、さっそくワールドシリーズを見に行ったら負けてしまい、驚異の新人もこの例に漏れず。

     

     ついでに同じくワシントンの住人ドナルド・トランプも第5戦に観戦に来ていた。常日頃の言動に趣味を感じさせるものがちっともない御仁だけに、あからさまに選挙対策の香りしか漂わない。まあ相撲よりは楽しめたのかもしれないが、観客からはブーイングとともに「投獄しろ!」の大合唱で、珍しい方向に盛り上がっていた。首相の応援団が国技館でトランプと嬉々として握手する様子を「一般の方と握手」などと伝えたわが国と異なり、宗主国の国民は自由だな。

     

     MLBは中南米の選手の活躍が目立つので、そもそもトランプとは相性が悪い。ナショナルズだとソト、ゴームズ、ロブレス、サンチェス、パーラなど。アストロズはもっと目立って、アルトゥーベを筆頭に、コレア、グリエル、チリーノス、アルバレス、オスーナなど。試合も負けたしナショナルズには疫病神でしかなかったな。

     

     第1戦では、地区シリーズでナショナルズに敗れ引退を表明したブレーブスのマッキャンが、早速アストロズのユニホームを着て始球式に登場。元アストロズとはいえあまりの変わり身の早さ。まるでジャニーズをやめた翌日に新譜の発売とツアー日程を発表した錦戸亮みたい。その始球式を見た上原浩治の「不思議な感じがします」のコメントが秀逸だった。

     

     さて、昨年と違い、7戦目までもつれたのはありがたいのだが、接戦になったのは第1戦のみで、あとは負けた方が1、2点しか取れず、勝った方は6、7点という試合が目立った。2戦目なんかナショナルズが12点も取っているのだが、負けた試合は1点くらいしか取れていないので、結局合計点はほぼトントン。アストロズが1点だけ上回ったのにナショナルズが勝ったのはまるで大統領選挙であり、その点やはりワシントンのチームといえよう。こういうわけなので「手に汗握る」とまではいかず。贅沢な話だが、観客としてはやはり、リーグ優勝決定戦のアストロズ×ヤンキース第7戦のような試合を見たいものです。

     

     まあナショナルズは、ここ何年も地区シリーズ敗退が続いていたから、ようやくの頂点に輝き、ドジャースに代わって「物事には順番がある」の義務を果たしてくれたといえよう。ただしここで誰しもが思い浮かべるのが今季から他チームに移ってしまったカルロス1世・ブライス・ハーパーだろう。間が悪い。フィリーズへの移籍会見で「ワシントンを優勝させる!」と思い切り間違えたのが、「予言になった!」と話題になっているとかで、寂しい貢献の仕方である。しかし落ち込むことはない。もっと間の悪い選手がいる。ミスター「俺が去ったチームは優勝する」青木宣親だ。彼に比べればどうってことない。


     MVPは、1、2戦でワンバウンドのくそボールを1つも後逸しなかった「カート・スズキだ」と上原は断言し、当人も「体中痛いが頑張るよ!」と意気込んでいたが、やはり相当痛かったのか、3戦以降は股関節のケガでマスクをゴームズに譲った。残念ではあるが、ハーパー、青木と異なり、移籍したら栄冠が待っていたのだからまだラッキーだな。

     

     スズキは股関節のケガとのことだが、ターナーは、股間の急所に自打球を当てて、結構な時間硬直するシーンがあった。グラウンド上でもスタンドでも、彼を見つめる男性の顔つきが一様にやさしーくなっているのが印象的だった。ただのデッドボールだと、痛そうというのは想像つくが、実際当たったことのある人間は極々限られているのでああはならない。「相手の痛みがわかる」というのはなるほどこの顔なんだなと思った。世界平和にどうやったら役立てることができるのだろう。

     

     最終戦は、アストロズの継投失敗が響いた。好投しつつも降板したグレインキーは何より全米一の目つきが鋭すぎる投手なので、打たれたハリスの心中を察してしまう。ブルペンに右投手しかいない(&左打者も少ない)極端に右寄りの極右チームの弱点が出てしまった。とりあえず菊池雄星をマリナーズから強奪してきたらどうか。

     

     それにしても、4タテくらった原監督が敗因をDH制の有無にしていたらしいが、あんま関係ないということが証明されたのは何より。何度もいうように、今季最弱チームとホークスが交代したらよろしい。来季は、デトロイト・ホークスと、福岡ソフトバンク・タイガースになります。神虎と福虎で区別。どっちもめでたい文字面でええやないすか。


    リーグ優勝決定戦終了トントン対決

    0

       ナ・リーグはナショナルズが4連勝でカージナルスをスウィープし、見逃せない試合が重なるはずのこの時期を一気に暇にした。カージナルスは勢いづくワイルドカードに弱い。2015年の対カブス、2004年の対レッドソックス。どちらも気づいたら敗退していた。小技ベースボールの限界だと見切って、ラルーサ色を排除してはどうか。小技の本場・日本野球が大変勉強になったと言わされまくったマイコラスにも、次のステージが必要であろう。

       

       ア・リーグは田中の先発試合で好発進したが、2戦目は、虚弱のコレアが覚醒し、アストロズがサヨナラ勝ち。打った瞬間本塁打を確信してちんたら塁を回ってもやっぱりホームランなのがブレーブスのアクーニャとは違うところ。歓声を寄越せとばかりに耳に手を添え観客にアピールし、三塁を回ったところでヘルメットを脱いでホームに向かってバスケのシュートを放つ趣旨不明のパフォーマンス(1点しか入ってないのに2点の仕草とはこれいかに)が、妙にサマになる伊達男である。

       

       第3戦は、アストロズ先発のコールがピンチを作りながら要所を締め、全くヒットの出ていないグリエルがワイルドピッチと犠打で2点に絡むカージナルスぶりを発揮して勝利。第4戦、ヤンキースは田中に託すも、スプリンガーに被弾。2017年のダルビッシュに続き、パ・リーグ投手が彼の餌食となった。

       

       アストロズが一気に4連勝するかと思いきや、5戦目でバーランダーが、これがやはりスポーツ・イラストレイテッドの呪いなのか、立ち上がりの不安定さを見せ、打線も何ひとついいところなく敗戦。やはり寒さに弱いのか。しかしヤンキースも、期待できるのはルメイヒューだけで、ジャッジは沈黙。スタントンはまったくの大鑑巨砲状態でそもそも出番がない。嫌なところで打つ男・ガードナーもさっぱり元気がなく、見どころといえばエンカルナシオンの格好悪い走り方くらい。

       

       6戦目は、打率1割台なのに打点は稼いでいるグリエルに一発が出てアストロズが先制。しかし唯一頼れるルメイヒューが9回の土壇場で同点弾を叩きこみ、意地を見せる。の、はずだったが、9回裏にアルトウーベがチャップマンから特大の一発を放ちサヨナラ、千両役者ぶりを発揮した。ホームランを打たれると決まって外野を振り返りながら半笑いになるチャップマンを久々に拝めた。ご馳走さんっす。普段は感情を表に出すアルトウーベなのに、このMVP確定の場面では落合博満のように無表情で淡々と塁を回っており、コレアとの格の違いを見せた。

       

       というわけで、1文字2文字対決は1文字が強かったということで、ワールドシリーズは、ヒューストン・アストロズ×ワシントン・ナショナルズ。日本人対決にも日系人対決にもベネズエラ対決にもならず(訂正:たまに出てくるナショナルズのパーラがベネズエラだった)、リーグ最高の先発陣を要するチーム同士の対決という妥当な野球ファンのような惹句しか見当たらない組合せとなった。

       

       ナショナルズは、初のワールドシリーズ進出。今季チームの顔であるカルロス1世・ハーパーを放出して派手さは消えた、と思わせてポストシーズンの強打ぶりは侮れない。散髪(散髭)した関羽のようなレンドーンと、名は体を表す外に打つのが上手いソト。青の正統ドジャースの赤髭ターナーと対局に赤チームで青臭い雰囲気を残すターナー。そしてWSに出場できないまま引退した天才・鈴木の代わりに頂上決戦に進んだスズキ、は専業キャッチャー的な人で打撃は期待できない。投手陣は、2012年のWSにともにタイガースの一員として出場しているシャーザーとバーランダーが、それぞれナショナルズ、アストロズに所属して対決する格好になるが、おそらく第1戦にアストロズはコールを使うだろうから、この2人の投げ合いにはならんだろう。

       

       アストロズはここまで何ひとついいところがないルーキー・アルバレスが注目。期待できない打者をレギュラーで使い続ける点、ヒンチ監督はロバーツと同じなのだが、ロバーツと違って投手の起用もある程度レギュラーシーズン通りであるので、どっしりした印象はある。俺と年一緒なんだけど風格あるなあ。
       まあ優勝経験のないナショナルズを若干贔屓しつつ、ドジャースが無様に散り、正直どちらでもいい気分ではある。とにかく第7戦までもつれて楽しませてほしいね。ヒューストンにワシントンだからトントン拍子にいかないように…。
       


      横はげと消えてない天才とカゾク系

      0

         今年も右手左手会議を録画してまで見てしまった。佐々木、奥川といった注目株がどこに行くのかというのは興味がないわけではないが、もっぱらの関心は、確率論がいかに人間に容認されないのかの光景なのだった。この辺のことは一昨年書いており、特に付け加えることはないが、巷間騒がれている通りに3〜4球団の競合となった両投手が、いずれも指名確定後もずーっとアストロズのブレグマンくらい無表情だったのが印象的だった。つい、先ごろ亡くなった金田正一が引き当てたときの小池秀郎を思い出す不穏な想像をしてしまうが、10代の少年の進路決定に、いい年のおっさんが血眼になって食いつき、かつくじ引きで決まるんだから、まあどういう顔をしていいかわからんよなあ。


         無理矢理を承知で想像してみる。俺の就職活動で複数社から指名が来たとして、で俺自身にも最低1社は1位で指名来るんじゃないかくらいの腹積もりはあったとしてもだ、複数社指名してきたら確信と驚きが同時に襲って来るだろうし、「おーっと引き当てたのは北海道新聞だ!」などとなったら、何をどういう順序で消化してよいやら。とりあえず何かわからんけど就職決まってよかったねとしかいいようがない。被指名側の精神衛生上においても、完全ウェーバー制にしたら?


         今年はくじで外した球団が、さっさと1本釣りに切り替えたので、現地のテレビカメラはもとより試合の映像素材も追いついていないケースがちらほらだった。まあそれがプロの仕事だろうね。2度も3度もくじで競合するのは、そうなる一定の確率はあるにせよ、担当部門の責任だ。

         

         あとどうでもいい話だが、新監督就任で久々に見た佐々岡が太っていて、うっすらとN国の立花に似ていたような。与田は横方向に額が広がっており、細川たかしみたいになっていた。細川たかしだけのレアなはげ方かと思ったがそうでもないんだな。あとオリックスの福良と西村監督は似ていると知った。途中でくじを引く役が入れ替わったのに、俺もアナウンサーも気づいてなかった。

         

         ドラフトを録画までして見た理由はもう一つあって、メジャーのポストシーズンに関係している。例年このレベルの短期決戦を見ていると、もはやくじ引きではないのかという気がしてきているからだ。


         レギュラーシーズンで打ちまくっていた打者が打率1割台になったり、頼れるエースが炎上したり、こういうのはもはや、何か具体的な原因があることではなく、ただの運/不運ではないのかという疑念が脳裏をよぎり、否定しきれないでいる。そういえば解説者の解説も、あまり説明になっていなかったり合理性がなかったり、予測が見事外れたりするもので、ドラフト実況の「右手で取りました!」同様に意味のないものに聞こえるときもしばしば。ポストシーズンというのは、ただの壮大な右手左手会議を見せられているだけではないのか。そんな思いにとりつかれ、本物の右手左手会議を確認したくなったのである。すると、奥川を当てた高津とアナウンサーのやり取りである。

         

         「いきなり大仕事でしたね」
         「どうしてもピッチャーを強くしたいと言った手前、絶対引いてやろうと思いました」
         「3球団が競合して一番最初にくじを引きました。何か作戦はありましたか」
         「いやまあ直感で、あたった封筒を取ろうと思いました」

         

         これ、サヨナラ打を打った選手のヒーローインタビューと同じやん。「絶対打ってやろう」「来た球を打とう」。やっぱり試合もくじ引きと同じなんじゃん、と確信してしまったのだった。ま、真相は順序が逆で、単にくじ引きのインタビューをヒーローインタビューに寄せているだけなんだが。でもまあ、くじに作戦なんかあるかよ、と同様、野球も場面によっては周りが期待するほど作戦はないものだ。


         まだ続く。
         毎年ドラフトを中継しているTBSは、そのあとの時間帯で「お母さんありがとう」という特番を例年やっている。ドラフトの陰に母の愛のドラマあり、といった趣旨の内容だ。フィクションじゃない題材に毎年同じフォーマットを用意するような無理をしているから、やらせで2番組も打ち切りに追い込まれるんだろうに。

         

         母親が死んだとき、地元紙が「お悔み」に掲載するというので電話をかけてきて、告別式の日程とともに故人をしのぶ喪主のひと言を載せるのだという。「やさしい方でしたか」と誘導尋問するので父親が「厳しかったけどなあ」と回答したが、紙面には「やさしい母でした」と喪主だった兄の言葉として載っていた。父が「厳しかった」と答えたのは、わが一族が「山内上杉」「扇谷上杉」ならぬ「斜構森下」だからというのがまずあり、その点で地元紙掲載のコメントは家名に泥を塗られた格好なのだが、母親は厳しかったのは事実である。

         

         ドラフトは中継のある一位指名の後も、各球団、育成も含めれば10人前後採用しているので、ヤワなファンである俺にはよく知らない名前がほとんどを占めるのだが、一応ネットニュースで確認している。それで知っている名前があったので検索したら、西武が8位指名した岸潤一郎って、まさにやらせで消えた番組「消えた天才」に出てたと知った。消えてねーじゃんというのが小気味よい。「名もなき夜空の星に」「いや肉眼で見える星には全部名前ついてますよ」っていう話のように小気味がいい。

         

         アマチュア野球に詳しい先輩氏から教えられた話では、大学進学後に紆余曲折相当苦労したというが、その岸ほどではなくても、いろんな経歴の人間が指名されているようで、よほどこっちの方がおもしろい話がわんさかある。
         それでも「お母さんありがとう」か。ノーベル賞受賞がニュースになると「妻の支え」が決まってニュースになるが、あれは受賞内容を誰も理解できないのが理由として大きいが、同じくドラフト=母になるのも、よく理解できない人間が担当しているのだろう。だから「日本のいちばん長い日」の制作陣も、「日本のいちばん長い日」がどういう映画なのかよくわからんかったんだろうな。しかし流れる先が何で「家族」なんだ。仕事・家族でしか世界像を認識できてない、セカイ系ならぬカゾク系だからかね。


        甘利に無様な敗退

        0

           地区シリーズが終了。ほとんどのカードが第5戦までもつれ込んだ。
           そういう中で、あっさりスウィープに終わったのがツインズ×ヤンキースの、「勝った試しがない」対決。30本塁打クインテットを擁する重量打線はしめし合わせたかのように沈黙し、何ひとついいところなく敗れ去った。いっそユニホームを縦縞に変えてしまってはどうか。

           

           アストロズ×レイズは、いつの間にか常勝軍団に加入していたグレインキーが打たれてレイズが盛り返し、前日弱気なコメントをしていたバーランダーも打たれて5戦目に突入。やはり弱気は死神を呼ぶのかと思ったが、バーランダーは「載ると呪われる」でおなじみのスポーツ・イラストレイテッドの表紙を飾っていたから、このせいだったに違いない。しかし、同じくバーランダーの隣で控え目に写っていたコールがまったく動じた様子なくレギュラーシーズン通りの快投でレイズを寄せ付けなかった。呪いも寄せ付けない男、の風格は確かにある無表情男である。サイ・ヤング賞を争っている2人だが、コールで決まりでいいんじゃないか。レイズのチェ・ジマンはやはり朝青龍がごとく俊敏な太っちょぶりで、気になる選手だ。細男の時代を変える選手にまでなれることを期待。

           

           以上、ア・リーグの優勝決定戦は、ヤンキース×アストロズ。予想オッズ1.02くらいの順当な組み合わせとなった。さっさとツインズを下し、あまり疲れていないヤンキースに分がありそうだが、さて。
           アストロズは「ダルビッシュにとどめを刺した強打者」スプリンガーが不調だと苦戦する。ただし、2017年にもリーグ優勝決定戦を戦ったこの2チームは、どちらもホームで勝つという内弁慶ぶりを発揮したので、ホームの試合が1つ多いアストロズが有利。ただし寒暖差があまりない場合はこの限りではない。

           

           ナ・リーグはいずれも5戦目までもつれた。
           カージナルス×ブレーブスは、老獪なジジイ×活きのいい若手の構図だったが、ジジイが勝利した。ジジイの象徴その1のゴールドシュミットはとかく人格者らしいが、見るからに人の好さそうなおっさん風外見をしている(薄毛にシンパシー)。この人が主砲につき全体に地味なイメージをもたらしている。そしてジジイの象徴その2のモリーナは、カージナルス一筋のチームの顔。顔つきはいまだやんちゃくれの若者風味だが、凡打で打点を稼ぐ渋いプレーがまさにジジイの狡知だ。

           

           対するブレーブスの象徴的存在アクーニャは、若い才能の塊でかつ絵にかいたようなわきの甘さ。フェンス直撃の大飛球を、本塁打と思ってチンタラ走っていたので1塁打に終わる、という甘ったれた怠慢をやらかし、チームメイトから「ぶん殴ってやろうか」と怒られているそんな選手である。「アメリカ野球は雑」のステレオタイプにエビデンスを与えている点、張本好みといえよう。

           短期決戦においては、こういうムラっ気のある天才は危ういわけだが、代わりに8番打者のスワンソンが好守にわたって活躍した。「ダイハード」の犯人グループの下っ端にこんなやついなかったっけ?という悪役三下風味の外見をしているが、カージナルスのジジイも顔負けのしぶとさを発揮し、監督からも「優勝するチームにはこういうラッキーボーイが現れるものさ」と絶賛されたが、結局最終戦は、ジジイが本気を出して猛打爆発の大量得点で全然面白くない幕切れとなった。カージナルスが勝利。

           ブレーブスもツインズ同様、「優勝するけどそれ以上進めない」のチームカラーをまるきり踏襲してしまった。ちなみにツインズ×ブレーブスのワールドシリーズ(1991)ではツインズが勝っている……。

           

           さて、問題のドジャース×ナショナルズ。終わったことを後になってああすればよかったとかこの選手を使うべきだったとかいうのはくだらないことであんなもんロバーツ一人のせいで負けたんだから!だ。
           中継ぎがリーグ最弱のナショナルズは、先発を中継ぎでも起用するという江夏豊状態でブルペンをやりくりしていたのだけど、ロバーツはそれに感化されたのだろうか。カーショウを中継ぎで登板させ、ピンチを見事切り抜けたのだけど、回をまたいでそのまま続投→2連続被弾で同点→慌てて前田にスイッチ。まずこの時点でめちゃダサい。100勝したチームが地区シリーズで浮足だって中継ぎ陣を信用しなくてワールドシリーズまでどうやってたどり着くというんだ。

           

           前田は地区シリーズ無失点の抜群の安定感を見せていたのだけど、次の回でなまじ四球の走者が出たもんだから前田に打順が回り代打降板。前回炎上したケリーを登板させ、今度はケリーが踏ん張るものの、「お、あいつ調子いいな」と回をまたいで投げさせて満塁被弾。回をまたがせている時点でマジかよなのに、塁が埋まるまでの間、監督は寝てたのか?超絶にダサい継投で負けるべくして負けたロバーツであるが、来季の続投が早々に決定。甘利明に似ているのは顔だけじゃなかったようだ。日本の有権者はちょろいからいくらでも誤魔化せるが、アメリカではどうだかな。

           

           以上、ナ・リーグはカージナルス×ナショナルズ。ナショナルズは地区シリーズを勝ち抜いたのが初めてとのことで、長らく「俺はまだ本気出してないだけ」状態だったストラスバーグが本気を出している今季、リーグ優勝を決めるか。


          ブルー・オクトーバーになるべき1文字2文字対決

          0

             MLBポストシーズンの顔ぶれが出そろった。今季の傾向はこの櫓を見れば一目瞭然であろう。そう、今季は1文字マーク×2文字マーク対決である。


             アメリカン・リーグはNY×TCの2文字同士対戦と、Hとワイルドカード(TB×A's)の勝者との対戦。ワイルドカードはどちらも2文字だが、2文字目が添え物のアポストロフィSにとどまり1文字感のあるアスレチックスが有利である。なぜなら片方の山が2文字同士対決である以上、1文字同士対決にならねばならないから。


             NYことニューヨーク・ヤンキースとTCことミネソタ・ツインズの対戦については、世界一よく出来た2文字ロゴデザインのヤンキースに軍配。手書きでもパソコンでもいいが、NとYを重ねると、案外バランスが悪いことに気づく。そんな食い合わせに統一感を持たせたデザインは秀逸である。一方でTCはデザイン以前にどうあがいても格好よくなりそうにない組合せ(大体TはともかくCって何だ、というと「Twin City」の略)。そもそもツインズがポストシーズンでヤンキースに勝った試しがないのでNYの勝利が既定路線であろう。

             ところで日本を代表する2文字ロゴYGはヤンキースのパクリではなく、当時はニューヨークにいたジャイアンツからの拝借(当初はYGではなく「東京ジャイアンツ」でTGだったが)。ジャイアンツのNYは、今のメッツのNYと同じようなデザインで、文字の端の部分の処理の仕方が巨人と共通である。ヤンキースのNYは、常葉菊川のユニホームを見て思いついたといわれている。


             Hのヒューストン・アストロズとA'sのオークランド・アスレチックスは、正当に1文字であるアストロズの勝ち。同じ西地区同士で10ゲーム差つけてるから順当といえば順当なんだけど。


             一方のナショナル・リーグは、1文字×2文字の対戦となる。アトランタ・ブレーブスとセントルイス・カージナルスの対戦は、セントルイスが「SL」と見せかけて「STL」の3文字あるので、この時点で正々堂々Aの1文字のブレーブスの勝利といえよう。こうなると、もう一つの山では2文字チームが勝利しなければならない。


             2文字のLA(ロサンゼルス・ドジャース)と対戦することになるワイルドカードは、ミルウォーキー・ブリュワーズ(M)と、ワシントン・ナショナルズ(W)の1文字対決。ちょうど上下線対称のアルファベット同士の対決でもあるのだが、ブリュワーズは「MB」の「重ならんだろそれ」という2文字バージョンの帽子や、アルファベットですらないグラブのイラストの帽子の別バージョンもあるため、堂々1文字のナショナルズの勝利であろう。そして、ドジャース×ナショナルズの2文字×1文字対決は、ドジャースの勝ち。根拠? 根拠ではなくドジャースは勝利が義務付けられているんである。


             なのでリーグ優勝決定戦のLA×Aの対決もLAの勝ち。根拠云々ではなく義務の話だ。
             そして、LAとワールドシリーズで対戦するのは1文字チームだから、H×NYの対決はHの勝利。つまり、今季のワールドシリーズは、ドジャース×アストロズの2年前の対決再燃になる線が最も固い。とにかくドジャースは勝たなければならない。7年連続ポストシーズン出場、そして2年連続ワールドシリーズ出場。ものには順番というものがある。LAはいい加減優勝しなければならない。2〜3回までしか負けられない戦い(地区シリーズは3戦先勝、それ以降は4戦先勝)がそこにはあるのである。

             

             だが4月からぶっちぎりでシーズン200勝くらい(全162試合)しそうな勢いで首位を独走していたチームだけにポストシーズンであっさり負けるのはいかにもありそうでもある。それでなくてもドジャースである。あっさり足元をすくわれても何も驚かない。しかし朗報が! 毎度ポストシーズンになると扇風機になる主砲細男ベリンジャーが、ポストシーズンを待たずにすでに打棒が湿っている。このため期待外れになることがない。


             まあ日本のメディア的には前田ドジャース×田中ヤンキースのカードを期待しているだろうし、ヤンキースは松井がMVPを獲った2009年以来10ぶりの王座奪還というわかりやすいシナリオも待ち構えている。そして今季は30人も怪我人を出したヤンキースならぬインジャリーズだったくせに首位を爆走するほど層が厚い。長く欠場していたスタントンなどソフトバンクに売り飛ばしてもいいんじゃないか親会社が法人税払ってないし金あるだろ、というくらい。ワールドチャンピオンも射程圏内だが、ヤンキース、レッドソックス、カージナルス、ジャイアンツの優勝はとにかくしばらく要らんのである。


             ところで大番狂わせでドジャース×レイズになれば、リュ・ヒョンジンとチェ・ジマンの韓国対決である。ナ・リーグのワイルドカードは、スズキ×ヒウラの日系人対決(ヒウラは中華系でもあるが)。そして割とどの対戦カードでもベネズエラ対決にもなる。そういうわけだから、何人対決とかどうだっていいんじゃない。あとどうでもいい余談だが、チェ・ジマンはどことなく朝青龍に似ていて気になる存在である。休場中に今度は野球を始めたという話では決してない。古い話だ。

             

             さて今季も100勝するチームが複数ある一方で、もつれにもつれたのがナ・リーグ中地区。例年なんだかんだでカブスがしれっと勝ち抜いてきた。今季前半戦パッとしなかったダルビッシュが終盤は調子を上げて無四球ピッチングを続ける復活ぶりだったのに、それと反比例するように8連敗して脱落してしまった。間の悪いお方だ。

             一方、同じ地区のブリュワーズは、主砲イエリッチが骨折で脱落したのにその後勝ちまくって首位になりそうな勢いを見せた。こちらもこちらで何だか可哀想な…。ところでイエリッチは「ッチ」でおなじみのクロアチア系でありかつ日系人の家系でもあり、当人はアメリカ生まれのアメリカ育ち。で何人ですか、といえばアメリカ人ですよ。

             

             カブスのマドン監督は契約最終年がこんなんだったせいか、今季で退任。他にもワールドチャンピオン経験者のボウチー(ジャイアンツ)、ヨスト(ロイヤルズ)といった「名将」がユニホームを脱ぐことになった。広島はこの3人から新監督を選ぶといいんじゃないか。日本の夏は過ごしやすい気候ですよ特に来年は、という誘い文句で。


            MLB2019前半(3)

            0

               ナ・リーグ東地区。球界一のカルロス1世男、ブライス・ハーパーがナショナルズからフィリーズに。現首都から旧首都への文化庁的移籍であるが、同地区の赤チームから赤チームに移られると、本当に変わったのかどうか紛らわしい。ついでにナショナルズが2位でフィリーズが3位と、移籍効果があったののかどうかも中途半端な成績である。

               壊し屋ジーターが支配するマーリンズは、今度はユニホームをチェンジ。高校野球のような地味なデザインとなったが、うっすら愛工大名電と似ているのはイチローへの秋波か何か、将来への布石的なものだろうか。今年も昨年同様、負けるのが仕事とはいえ、バースの打率くらいの微妙に高い勝率をキープし、負け争いでオリオールズやタイガースに負けている。

               

               中地区。MLBで一番の激戦区は今年も3チームが混戦。北陸の天候のように不安定なダルビッシュの出来次第でカブスが1つ抜け出しそうな気がする。カージナルスも、昨年の活躍を「巨人での勉強が役立った」と言わされまくっていたマイコラスが苦戦気味。打棒爆発のイエリッチを擁するブリュワーズも三つ巴から抜け出せない。

               ここ数年来の混戦に唯一全く縁がないレッズはやはり安定の低迷ぶり。青の正統ドジャースから赤の正統レッズに移籍したプイーグは、激情家だけに真っ赤なユニホームによってずっと怒っているように見える。

               

               西地区。昨年の惨めなワールドシリーズによって低迷するのかしらと予想していたが、ドジャースが球界一の独走ぶり。低迷続きだったジャイアンツが2位に躍進しているのも、ダイヤモンドバックス平野の好投も全く無駄に映るほどの独走ぶりである。ルーキーが日替わりで3日連続サヨナラ本塁打を放つというラッキーにも恵まれているが、ラッキー男の登場はもっと後でいいのに。

               躍進を支える一人が、本塁打量産中のベリンジャーだが、この男もポストシーズンになると扇風機になるので、打ちすぎなんじゃないの?と貧乏くさい心配がちらちらしてしまう。

               このベリンジャーと本塁打王争いをしているのがブリュワーズのイエリッチであるが、大谷同様、いずれも細男。薬物パワーで筋骨隆々になった男たちがホームランをかっ飛ばしていたあの時代は何だったのだろうと思うくらい今は細男の時代である。なんだったら今年のワールドシリーズは、ヤンキース対ドジャースの、巨躯男ジャッジ対細男ベリンジャーの対決を期待する。まあそれだと日本のメディア的には田中×前田の「日本人といっても結構デカいよ対決」になってしまうのであるが。


              MLB2019前半(2)

              0

                神戸駅は台湾の駅っぽい

                 

                 中地区。ツインズが若手と補強のおっさんが噛み合い快調。中地区といえば、デトロイトやクリーブランドなどトランプ保護貿易でお馴染みのラストベルト球団ひしめくブロックなのだが、躍進しているのが流通と金融の町ミネアポリスの球団と、大して恩恵がない。考えてみればMLBは実力あれば誰でもオーライの自由貿易市場なのであった。かつて白人社交クラブだった時代もあったが、それを脱したことも併せ自国第一主義とも「嫌なら出ていけ」紋切型で売出し中のサファテとも相容れないのである。


                 ツインズが地区優勝した場合、この球団はポストシーズン常連ながら「ポストシーズンに出てヤンキースにあっさり負ける」常連でもあるので、帝国の優勝確率にさらに貢献することになる。ただし、近年の常勝チームであるインディアンズも保護貿易パワーいよいよ到来なのか追い上げている。しかしラストベルトの中核を成すデトロイトの虎軍団はオリオールズ以上に負け続けていて、やはり米中貿易戦争の効果は見られない。
                 ところでくだらない&無理筋の話、ロイヤルズにはゴア、ケネディ、マッカーシー、フリンといった政界関係者のような名前の選手が多い。

                 

                 西地区。イチローが去って余計なことを考えなくてよくなったのか、マリナーズがスタートダッシュを決めたはずが、いつの間にか最下位という弱小あるある息切れ状態になり、「結局はアストロズ」の予定調和に落ち着いている。球界最高の野手トラウトと、球界最高の一刀流大谷を抱えながらも投手陣がぱっとしないエンジェルスは勝率5割を行ったり来たりで、野球は投打という真理を正確になぞっている。「怪我さえなければ球界最高峰」と監督が期待するエースは怪我どころか突然の訃報。彼の分まで!と浪花節パワーに期待したいところだが、喪中球団は低迷するというのが残酷な過去の実績。


                MLB2019前半(1)

                0

                   MLBのことを書こうとしているうちに前半戦が終わってしまった。
                   ア・リーグ東地区。ヤンキースは、菅原道真を左遷でもしたのか、主力が軒並みDL改めIL入りの呪われっぷり。秋山、清原、デストラーデ、伊東、渡辺Qのいない西武状態に陥ったはずなのに、なぜか独走。主力が戻ってきた途端歯車が狂って失速、という幼稚なあるあるにも陥らず。主力の1人ジャッジは、復帰した日の試合でグラウンドに手を突いて祈りをささげたのだが、こうして比較すると桑田がとんでもなく体が柔らかいように錯覚する。

                   この間、マリナーズに移籍したばかりのエンカルナシオンを獲得し、「4番打者を6,7番辺りに置く」往年の巨人ぶりをかすかに復活させている。松井秀喜の大爆発で優勝してからちょうど10年。いよいよ遠ざかっていた王座に手が届く予感を漂わせているが、松井にとっては一転、翌年以降、赤や緑の似合わないユニホームを着る羽目になった恥辱の呪いはまだ濃厚に存在し続けている、と、その後ヤンキースで働いているからまったくもって苦しい仮説なのを承知で呪いに期待。


                   一方、昨季優勝のレッドソックスは低迷し、期待を裏切らない「期待を裏切る」ぶりを発揮。それでもワイルドカードの可能性は現時点で上位だから、東地区だ中地区だというこのシステムもいい加減どうなのかね。
                   好調なのはレイズ。野球未経験の大卒インテリを、フロントではなくコーチに入れて若手が躍進している。野球界にもいよいよキャリア組が現れた。
                   ブルージェイズは、ブラディミール・ゲレーロの息子、ブラディミール・ゲレーロJr.とクレイグ・ビジオの息子、ケイバン・ビジオに注目が集まっているのだが、ルルデス・グリエルJr.というもう一人のジュニアは父より兄が有名人。弟がジュニアという点、まるで千原であるが、こちらは3人兄弟との由。しかし3兄弟の末っ子に父が同じ名前を与えるというのは、末っ子なのに後継者に指名されたケンシロウみたいなものだろうか、それともついに名前が思いつかなかったのだろうか。
                   オリオールズは今年も堅調に、打率並みの勝率をキープ。セ・リーグ爆走中の巨人と交代した方がいいんじゃないか。ユニホームもちょっと似てるし。マウントキャッスルという、それって山城じゃんという選手がいるのだが、巨人には山上信吾という投手がいる。惜しい。


                  思い出横丁51番地4367号

                  0

                     テレビをつけたら、間もなくイチローが引退記者会見するぞするぞと言っていて、結局ZEROが冒頭のちょびっとを流しただけでタイムアップ。ネットで見ることになった。

                     

                     こういう機会なので思い出話を書いておこう。まだ「鈴木」だったころにギリギリ彼を知れたのは、今となってはささやかな自慢になるだろうか。「今年注目の若手」といった主旨の雑誌の紹介を読んだだけの話だが、山田太郎ばりの冗談みたいな名前だから嫌でも覚える。

                     そうしたら、間もなく登録名がカタカナになり、「注目の若手」どころかどえらいブレイクになった。「200本に到達するかも」というあのときの熱気は、今となっては想像するのは難しい。打率4割を記録するようなものだろうか。「200」という数字は当時、それほど途方もなかった。

                     

                     熱気に押され、シーズン終盤のある日。授業終わりにそのまま一人で電車に乗って、神戸市営地下鉄・総合運動公園駅で降りた。「もしかすると本日200到達かも」という日だった。正確な本数を覚えていないが、その日時点で196とか197とか、少なくとも1本ではまだ200にとどかなかったはずだった。結果は達成ならずで、残り1本ではなかったから、まあそりゃそうだよなあとどこか納得しながら満員電車に揺られて帰ったものだったが、確か翌日だったか、4安打の固め打ちでさっさと200をクリアしていて、己の相性の悪さを呪ったのだった。


                     その後、何度か見に行ったはずだが、唯一明確に覚えているのは、95年である。本拠地優勝がかかった対ロッテ、ホーム3連戦の3日目だった。日曜なので、野球好きの友人2人と、サッカー派だが祭りに乗っかったのが1人の計4人で再び総合運動公園駅に降り立った。

                     ごった返す球場は、前年1人で200本安打を拝みに行ったときの比ではない熱狂に溢れかえっていて、ついでにベテラン岡田彰布の横っ飛び好捕なんかがあって、球場全体が「優勝」を疑わないムードに突き進む。ところがこの年ブレイクしたセーブ王の平井が、おもしろフォームで人気だったフランコの四球で怪しくなり、結局打ち込まれて敗退した。

                     

                     人生で初めて、プロ野球の胴上げを見れるものだと信じ切っていただけに、大いに落胆して球場を後にした。同行の野球ファン2人が「平井を降板させるべきだったか否か」で喧嘩になっていて、サッカー派の友人は隣でアホくさと首を掻いていた。後年平井は、あそこで代えなかった監督の采配で抑えの何たるかを知った的なことを語っていたから、まああれでよかったのだろう。

                     そんなことだけ覚えているのだが、なぜかあの日のイチローのプレーについては一つも覚えていない。とにかく俺はまたもや、己の相性の悪さを呪うことになった。そして、震災からの優勝というドラマに冷や水をこれでもかとぶっかける野村ヤクルトの徹底マークの結果、日本シリーズでイチローのバットは空を切ってばかりになるわけだが、今季のイチローはあれとカブって見えた。

                     

                     さて、これまで彼が見せてきた数々のミラクルを思えば、もしかしたら覆るかもという期待はかすかにありつつ、東京ドームで引退の筋書きはほぼ既定路線だろうというのが大リーグ好きの大方の見方であったろうと思う。なのでニュースの街頭インタビューで「え?引退?!」などと驚いていた人は、イチローについて実はよく知らない人か、もしくは「驚かないといけない場面」という忖度が働いて演技をしてしまうバラエティ番組化が染みついてしまった人なのだろう。

                     シーズン200本の連続が途切れた後、彼に残された記録はワールドチャンピオンだけだとここでも以前に書いたが、結局それが果たされずに終幕したのは惜しむべきことだ。まあ、彼自身がチーム選択には結構古典的な態度を示すのと、ヒットを量産する割には出塁率がそれほど高いわけではない分、昨今のデータ野球にあっては期待するほど欲しがられてはいなかったというのが事情としてはあると思うが。

                     

                     それでも母国で引退の花道がしつらえられたのは、最大限の敬意と見ていいと思うが、引退記者会見が日本で開かれる流れになったのは果たしてよかったのやら、とは思った。

                     

                     ここで話は一旦脱線するのだが、ちょっと前に、レポート採点中の大学教授が「学生がこういう文章を書くのはテレビのせいでは」と嘆くツイートをしているのを見かけた。文体や話の運び方が、テレビニュースの言葉遣いのモノマネのようになっているという趣旨だ。
                     これは俺がここで以前に書いた話と重なる意見だと思う。ほとんどの大学生は、レポートなり小論文なり、何かしら世の中の物事について主張を組み立てる作業をする段になると共通した作法をなぞる。その1つが「自分が消える」といえばいいのか、模範解答をなぞろうとして、自分では微塵も思っていないことを書く。稚拙な例だと、「最近の子供は外で遊ばなくなった」で、先月も学生が書くそんな文章を読んだ。今時の若者でも相変わらずこんな古臭いロジックを書くというのは一つの発見ではあったが、読まされる方はたまらない。ここまで稚拙でなくても、自分の頭で考えていない点では有名大学でも似たり寄ったり。何より俺自身そうだった。学生なんてそんなものだろ、と思うかもしれないが、ではなぜ学生はそうなのかと問われると、確かに、ある型をなぞろうとする言葉遣いをするテレビの影響はあるかもね、とは思う。

                     

                     話をイチローに戻すと、居並ぶ報道陣が切り出す質問の多く、特にテレビは、この手の記者会見で尋ねる定型をなぞっているだけで、当人に確かめたいことがあって尋ねているわけではないと聞こえるものばかりだった。テレビなんてそんなものだろと、以前なら流しているところだが、以上のような経緯により、とんでもない害悪を垂れ流しているように思えて、大変にイライラとし、なんで日本で記者会見するんだ、アメリカでやった方がよほど面白かったんじゃないのかとも思った。

                     

                     ところが悲しいことに、俺も知りたい具体的な質問(朝日の2名が聞いていた「MLB以外でやる選択肢はなかったか」「引退を決めた自身の衰えは何か」など)は、さらっとはぐらかしちゃって、定型句質問の方にばかりイチローは饒舌だった。やっぱり相性悪いな。

                     

                     おそらくふわっとした質問の方が、彼にとっては自分の考えを逐一選び抜いた表現で言語化していく行為をやりやすいからだと推測する。若いころは相当に意味不明のことを語っていたが、年のせいか随分わかりやすく説明するようになった(あれでも)。

                     その中で、自分が外国人になって考えが変わった等の印象的な話もあったが、一番引っかかったのは、試合後にファンが居残って声援を贈っていたことに対する驚きで、この人は、記録を達成するたび似たようなことを言っている。つまり、ファンやチームメイトが大いに祝福してくれることへの戸惑いで、毎度謙遜でもなんでもなく、本当に困惑した様子だった。

                     「△△と感じる一方で、〇〇な自分もいる」のような、自身を客体化する話法の好きな御仁だが、世の中における自分が何者なのか、ちっともわかってないんだよな。まるで超頭脳明晰なのに「ナゼ泣イテイルノデスカ」のように人間の感情を一つも理解できない昔のSFのアンドロイドのようだ。と書いたところで、外国人の話す日本語をカタカナで表現しているバラエティ番組のテロップを見たが、まだそんなことやってんのか。そのステレオタイプももうやめた方がいい。理由は差別につながるからだが、どうせわかんないだろうから、クリーンハイスクールのフォアマンか!と言っておく。余計わかりにくそうだが、野球ファンなら知っておくべきだ。イチローだって、殿馬に衝撃を受け、岩鬼の悪球打ちを見て己の道を見つけたと巷間伝わっているじゃないか。

                     

                     話がとっちらかった。今年のマリナーズはガラリと顔ぶれが入れ替わり、優勝争いに食い込めるか注目。


                    あっさり終わった十月とダルビッシュの戦場

                    0

                       今季のMLBが早くも終了してしまった。半ば予想していたことだったが、レッドソックスが強すぎてドジャースは完敗。予想なり予感なりがちっとも覆されないのはつまらないものだ。どっちに転ぶか全くわからなかったワールドシリーズが何年か続いていただけに、あれは幸せなことだったのだと振り返ることしきり。102年前と同じく4−1の結果で、第3戦のみレッドソックスが敗北したのも同じだそうで。ちなみにワールドシリーズは、北米だけで開催していて何が「ワールド」なんだというお決まりの批判があるが、MLBの選手は現在20何か国から来ているそうなので、十分にワールドになっている。

                       

                       1戦目でカーショウが打たれるのは想定内として(直前のリーグ優勝決定戦第7戦で、最後に抑えで投げさせるという星野仙一罪容疑のせいだと思う)、2戦目は柳賢振(リュ・ヒョンジン)が思いのほか好投した。だが、途中ピンチを迎えた際、何度もタイムを取り、マウンドにも集まり、慎重に慎重を期して投げた結果が暴投(パスボール?)。世の会議のほとんどが無駄、というのは野球界にも当てはまるんだな。後をつないだマシソンが1個もストライクが入らず、これでゲームが壊れた。

                       

                       第3戦は意外にも投手戦。1−0のリードを守るため前倒しで投入した抑えのジャンセンが打たれて延長に。最長記録の18回まで行ったから丸々2試合やった格好。カーショウも代打で出るほどの総力戦となり、どうにかドジャースが勝利。

                       

                       同じころ日本では、広島×ソフトバンクが延長12回で引き分けとなっていた。かたや延長18回だから、ヌルいことやってるなあとつい思うわけだが、そろばん勘定からいくと、1試合で2試合分よりかは引き分けの方が儲かるから、こっちの方が賢いのかもね(ま、結局8戦目をやる必要なくこちらもアッサリ片付いたが)。

                       

                       そして同じころダルビッシュは、安田純平氏の件で自己責任教のテンプレツイッタラーと戦っているというよくわからない戦場にいたのだった。今季はひとつもいいところのなかった七色の変化球男であるが、テンプレ非難にはフォーシームストレートをひたすら投げ続けていた。それが来季復活の鍵なんじゃねえか?

                       

                       このダルビッシュの奮闘ぶりを青木理氏あたりもテレビで讃えていたが、かつてイラクで若人3人が人質になったときに比べると報道の論調はかなり慎重にはなっている。ただあのときは、新聞社の編集委員クラスの人間もテレビで自己責任論的な批判をしていたと記憶しているから、その辺の反省からしっかり振り返るべきなんではないかね。一方、情報番組レベルになると、両論併記的な伝え方になっていて、安田氏の記者会見でも謝罪的な話を詰め寄っていたのもいたようだが、ああいうのは「威張る元請け/堪える下請け」の構図とまんまカブるので見ていられない。
                       ま1個だけ補足しておくと、日本が敗戦のとき、満洲なんかに残された残留日本人は、好きでいったのだから自業自得でしょ的な非難に苦しんできた。今でいう自己責任とピッタリ重なる。なので、この手の非難に淫する人にとっては切り捨てて安心できればいいだけなので、これは別に危険地帯の報道という特殊な立場に身を置く特殊な価値観の人の話ではなくて、仮に安田氏がどんだけツマラン人だったとしても、彼を責めるのは結局は自縛の紐でしょうよ。国民と国家の話なので。残留日本人と重なるのもそのせいなわけでしょ。

                       

                       閑話休題。延長18回をサヨナラで勝って意気上がるドジャースだが、4戦目で勝てる試合を落とした。これがデカかった。4−0から3ランで1点差に詰め寄られ、ジャンセン前倒し投入がまたもや裏目に出て同点弾を浴びて振り出しに戻る再放送状態。継投が悪い。前田を出せ前田を、と思ったら前田が前日とは別人のようにポコスカ打たれた。あれがなければ裏でヘルナンデスの本塁打で逆転サヨナラだったが、まあ監督の判断が敗因だね。

                       

                       第5戦は、その幻の?サヨナラ弾を放ったヘルナンデスを3番に置いたら好機でことごとくブレーキとなっていた。監督業はつらいよ。優勝の遠ざかる年月が着実に呪いの域に近付きつつあるが、負け方としてはまったく呪いは関係なさそう。
                       過去にはバスケのレブロン・ジェームズが応援にきたインディアンズが負けて、今季はノーラン・ライアンとビジオ&バグウェルの大物OBが見に来ていたアストロズが敗れていたので、来季のドジャースはコービー・ブライアントとマジック・ジョンソン、ラソーダ元監督を全員出入り禁止にしたらどうかしら。マジック・ジョンソンはオーナーだけど。

                       

                       優勝したレッドソックスの監督がインタビューで「Congratulations!」と言っていたので、監督が「おめでとうございまーす」というのはもうこれ当たり前のことなんすね。知りませなんだ。



                      calendar

                      S M T W T F S
                      1234567
                      891011121314
                      15161718192021
                      22232425262728
                      293031    
                      << December 2019 >>

                      selected entries

                      categories

                      archives

                      recent comment

                      • お国自慢
                        森下
                      • お国自慢
                        N.Matsuura
                      • 【巻ギュー充棟】反知性主義
                        KJ
                      • 【映画評】キューブ、キューブ2
                        森下
                      • 【映画評】キューブ、キューブ2
                        名無し
                      • W杯与太話4.精神力ということについて
                        森下
                      • W杯与太話4.精神力ということについて
                      • 俺ら河内スタジオ入り
                        森下
                      • 俺ら河内スタジオ入り
                        田中新垣悟
                      • 本の宣伝

                      recent trackback

                      recommend

                      links

                      profile

                      search this site.

                      others

                      mobile

                      qrcode

                      powered

                      無料ブログ作成サービス JUGEM