外国の料理が好きだ
4月だったか、K氏と共通の知人Y氏が大阪に異動してきたので、おっさん3人でピクニックに行きましょうやと提案した。「久々だから一席設ける」だと芸がないというか、違うことをしてもいいんじゃないかコロナだし、くらいの発想である。「おっさん3人でピクニック」というフレーズが我ながら笑える。
却下された。しばらく出張続きだったY氏が一段落して、夜に梅田辺りでと、芸のないことをいう。それで、駅から少々離れるがモロッコ料理の店を予約した。
梅田に出るなら、用事を抱き合わせようと携帯屋で壊れかけのスマホを新調することにした。近所にも携帯屋はあるが、たまにはこういうのもいいだろう。車に興味のない人が代理店でテキトーに値段と用途だけで選ぶがごとく、スマホに興味がないので家電屋で吟味するという発想がない。
さすが近所の店と違って、広々としたしゃれた店内で、あか抜けた感じの店員が対応してくれた。1時間が1.5時間くらいで終わると予想し、それだとモロッコ料理屋の予約時間までまあまあ時間が空くから、ほかに何か用事なかったっけなどと考えていたのだけど、2.5時間もかかって遅刻確定になってしまった。椅子を立ったとき、2.5時間の映画を見た後と同じ腰の疲れを感じて、その疲労感の類似性に少し感動した。
「スマンちょっと遅れる!」と慌てた様子で電話してきたY氏の方が先に店に着いてしまっていた。平謝りで到着。Y氏によると、携帯の機種変更はなんだかんだでかなり時間を要するものだということらしいが、5年前なので忘れていた。
ただし時間がかかった大きな原因は、IDとパスワードを入力する作業に何度も間違えたせい。今までのやつと、入力方式が微妙に違っていたことに加え、老眼のせいでどこが間違っているのかもよくわからず、若い店員に「私が変わりに入力しましょうか」と言われてしまった(それでもパスワードはこちらで入力しないといけないのであまり意味はなかった)。
悲しい話だ。ただしその悲しさや恥辱を誤魔化すために、若者相手に「いやあ、てへへ」と言い訳自虐を語ってはいけない。お待たせしましてすみません、くらいにとどめ、あとは悲しみ恥辱を一人で抱え込むのみである。
Y氏は、なぜわざわざ駅から遠い店なんだお前はそんなにモロッコ料理が好きなのかと不思議そうな顔をする。「テキトーな居酒屋は嫌なので」と答えると、「一生のうちの食事回数には上限があるからとかそういうやつ?」と食道楽スノッブが言いそうな理屈を持ち出してくるから頑強に否定した。理由は2つあって、1つは自炊ばかりしているので自分でも作れるような料理は嫌だからで、もう1つは人と酒を飲む機会が大変少ないのでこういう機会は貴重だからということで、何でこんなことをムキになって説明しているんだ俺は。「ベルベル人シェフの店」という謳い文句が大変魅力的じゃないか。
「で、最近は、演劇は」
「やってません」
「映画はもう撮らんの」
「あんな手間のかかる面倒なこと、やれたことの方が奇蹟です」
「それで今は染め物職人かいな」
とY氏は、さっそく着ていった佐伯のTシャツ@一点ものの辛子色バージョンを見て苦笑している。
送れてK氏が到着した。職場から出ようとするタイミングで仕事の問い合わせが来たとかで、その間の悪さに大変ご立腹だった。本をあげたら喜んでもらえたのでよかった。とうとう「同じ本を2冊買う」をやってしまっていたのだった。自分が読書家の部類だとは思っていたが、買ったことを忘れてうっかりもう1冊買うという「読書家あるある」を今までやったことがなかったので、ようやく一人前になったような気はした。さらに上級者になると「持っていることは確実なのだが、探す手間が惜しいので買う」をやるらしい。この場合はPDFにしてしまえば解決する。
ジンバブエのソムリエの映画を見たせいで、ワインが飲みたくて仕方がない。いうても地中海料理だし、勝手なイメージで、モロッコの白ワインは甘口でジュースみたいなガブ呑みできそうなやつじゃないか。店員に尋ねたら「置いてるモロッコの白は全部辛口です」。はい偏見解消。
- 2023.06.23 Friday
- 日常
- 01:14
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- by 森下淳士