鼻息荒く、余話
編集ついでにカメラについて、蛇足の余談。
カメラの技術進歩は素晴らしく、自主映画を作っていたころ使っていたVX2000を思うとやりきれなさすら感じてしまう。
今回撮影に使ったのは、ルミックスのG7。ミラーレス一眼レフだ。中国に行くときに、調子に乗ってカメラを新調しようと購入した。家電については、我が兄が家電芸人よろしく常に市場動向の把握に怠りないので、「カメラを買うとしたら何がええの?」と聞くと、「これはいいぞ」と即答してきたのがこのG7だった。聞いておいて、言いなりになるのもシャクなので、量販店で他の機種もあらかた見たのだが、結局これに落ち着いた。値段と形の好き好き以外の決め手は、スイッチ類の使い勝手と、シャッターの反応、電源を入れてからの起動時間といったところか。一瞬で起動してすぐ撮れるところは素晴らしい。
俺自身は、父親がカメラ親父で、自分も仕事でフィルムの一眼を使っていた時期もあり、撮影するときはファインダーを覗かないと気が済まない。今時は皆さん、携帯電話での撮影同様、画面を見て撮るのが主流だが、ファインダーが覗けない特殊な撮影状況(高い位置から撮りたいときや、地面スレスレで撮りたいときなど)以外で、画面越しに撮影するのはまったく好きになれない。これは刷り込みだから仕方がない。ファインダーを覗く方が、カメラを構えたときにしっかり固定できるから合理的だとは思うのだが。
なので、今時のコンパクトカメラは、性能はすごいのだろうと思うが、ファインダーがないのが首のない人形を見ているような印象で落ち着かないのである。
それで動画を撮影するにあたり、気になったのは音声である。何度も書いている話だが、自主映画のときに一番大変で、かつテクノロジーではどうにもならない強固なアナログ性を感じたのは音声だった。このミラーレス機も、映像は綺麗にしても音声はショボいのではないかと危惧して、せめてVX用の備品で持っていた簡素なズームマイクでも装着しようと思ったが、対応していなかった。ついでにこのマイク、すっかり経年劣化していてマイクを覆うスポンジ部分が触っただけでボロボロと崩れた。モノが壊れると、当時の思い出も消えていくような気がして、にわかに寂寥感が漂いだすから困る。
それでネットで確認してみると、G7は標準装備のマイクでもかなり音を拾うとある。専用マイクをわざわざ買うほどの撮影でもないので、そのまま撮影に臨んだわけだが、マイクがいったいどこに装備されているのかもわからないのに確かにかなりちゃんと音を拾う。VXのときなんか、標準装備のマイクが、これみよがしの存在感を発しているのに、全然だった。テレビでいうと音量を「40」くらいに上げないと聞こえないんじゃないかというくらいショボかったのに。マイクもすっかりテクノロジーである。
ただ、ファインダーを覗いて撮影していると、マイクが近いせいで、自分の鼻息を相当に拾っていた。しょっちゅう「スピー」という音がする。動画撮影のときは、今時スタイルで画面を見ながら体から離して撮るべきだったのだ。色々と負けた気がした四十路の年末だった。
- 2016.12.29 Thursday
- 自主映画制作
- 15:42
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- by 森下淳士