デザインのコツ
ターナーが逆走したという話のまま更新が止まっていた。時節柄、死んだと思われるのは全く科学合理性のある推論だ。実際、死ぬ可能性を思いながら生きている。やたらと手間のかかる仕事を請け負ってしまい、うへー締切に間に合わんと睡眠を削りながら作業を進めていたんだけど、ふと、今ぶっ倒れても救急搬送すらされないんだっけかと思い当たって諦めて寝た。だってここは大阪。フェイクが溢れて目隠しされて狂った価値観生まれててウイルスにおかされ耳をふさがれ悪魔に微笑み返している、という石橋凌の20何年前の歌詞の舞台は東京だったが、四半世紀たって大阪も追いついたんだなあ。
講義で使うテキストの原稿を頼まれていた。原稿自体も当然手間取るが、完パケの状態で寄越せと言われ、組版までやった。遊び半分でしか使ったことのないInDesignの基本操作を覚え、また俺様成長してしまったよ。
ずいぶん前に、クックパッドが流行らなくなってきて運営会社が苦境に立たされているというような記事を見たことがあった。なんでも料理は動画視聴に移行しているので写真と文章でしか記載のないサイトは人気がなくなったという分析だった。動画なんてかえって手間だろ、なんて思ったものだったが、どうやらそうでもなかった。
手元にはかなり前に購入した「InDesignの使い方」的な実用書があって、それを見るのだけどどうも要領がわからない。それで動画を検索したら、世の奇特な方々が色々とアップしている。そして、動画だとなんてわかりやすいんだ。おかげで3000円ほどしたマニュアル本をほとんど見ることなく作業を終えた。そしてまた「本が売れない現実」を間の当たりにしてしまった。まあ、「その程度」の使い方しかしていないというのもあるんだろうけど。すべてのアドビ製品にいえるが、全体の1割にも満たない程度の機能しか知らない使わないまま人生は進んでいくのだろう。
そうやって要領を覚えて、用意した原稿と図表を紙面に配置していった。Wordと比べて、どれくらい市販の本ぽい仕上がりになるのだろうと、多少心躍る面もあったのだけど、いざやってみると、ビジュアルが実に素人くさい。反面どこか予想していた。やっぱりそうなりますか。
こういうのは、直線を1本添えるとか、文字に囲みをつけるとか、その程度のことで一気にデザイン性が出てきて、売り物の本らしさが出るものである。相内氏や黒瀬に公演チラシのデザインを頼んできた中でしばしば感じていたことだった。しまいに黒瀬は「俺デザインの才能ないんすよ」と、デザイン会社を辞めてしまった。そんなんだから、習ったこともないわが身からすると全くよくわからない世界なのである。
そんなあたしでも解決方法は1つだけある。「パクる」。五輪関連の仕事発注が来るようなプロでもやっていることだから、いうなればデザインの基本である。
本棚から横組み&単色刷りの書籍を探して、なるほどここに直線を引くと画面が締まるのか、とかなんとか「学ぶは真似ぶだ」を実践していった。一番参考になったのは山川出版社の教科書で、ここでもやはり信頼と安定の、何だかんだで馬鹿に出来ない山川なのであった。
こうして売り物っぽい雰囲気をどうにか整えることができた。慣れない方面の仕事だった分、動画作成よりはるかに面倒くさかった。講義教材のようなこういう書籍は、「見開き2頁に収める」のような文字数制限が厳しいので、その点では一般の書籍よりもはるかに悩ましかった。
依頼元に送信すると、想像よりかなり出来がよかったようで、組版代を奮発してくれることになった。作業中はしばしば「俺は何をやっているのだろう」と、危うい崖に足を滑らせそうになる局面が何度かあったが、報われた気分になった。やっぱ金は大事だ。
- 2021.06.21 Monday
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- by 森下淳士