【映画評】キューブ、キューブ2

0

      「2」は当たるが面白くない。
     映画の場合ほぼ必ず当てはまる。「1」が成功すれば映画会社は二匹目のどじょうを狙う。客も1の面白さを期待して映画館を訪れる。だから興行的には成功するが内容は大抵の場合、トホホである。

     結論からいえばカルト的なヒット作となった「キューブ」の続編「キューブ2」もこの法則に漏れなかった。内容はトホホである。トホホの原因というか教訓は、「どこまで説明するか」ということである。

     物語の世界でどこまで説明するかは結構難しい。説明が不足すれば不満が残る。謎めいた仕掛けについて、ハナから説明する気もなさそうな作品は、消化不良どころか強烈な不快さえもたらしかねない。とはいえ説明過多なのも興ざめだ。無粋というやつである。

     「キューブ」はそういう点では絶妙の説明し具合である。

     立方体の部屋が延々と連続した謎の施設に閉じ込められた男女数人。餓死の危険もさることながら、部屋によっては刃物や毒薬が飛んできて危険極まりない。どこが危険な部屋でどこがそうでないかなどに実は法則性があって、これが程よい謎となってストーリーを盛り上げるが、結局のところこの施設が何なのか、これは最後までよくわからない。

     登場人物の推測によれば、どうやらこの巨大施設が公共事業だということ、そして人が使わないと無駄になるから彼らは連れてこられたということらしく、TVタックルもビックリの恐るべき無駄公共工事である。カナダの公共工事も日本と同じかと、これはこれでかなり興味深い話なのだがそれはさておき、とはいえこの巨大施設について、あくまでこの程度の推測しか説明はされない。

     というのも、この施設が何かということはあまり物語にとって意味がないからである。

     登場人物の一人が言う。「俺もさ、誰も彼もがシステムの一部なんだ。俺は設計し、君は見回る。君が言った通り、目の前を見るしかない。全体は誰にも見えない。人生は複雑だ。俺たちがここにいるのは人生を制御できないからだ」。

     つまり陳腐を恐れながら言えばキューブは社会の暗喩である。
     この台詞を言う人物は、勤務先から言われるまま、それが何かわからずキューブの一部分の設計に加わっていた。自分の行為が、風が吹けば桶屋が儲かる式に実はどこかで誰かに深刻な影響を与えているかもしれない。そんなことは誰にもわからない。この映画は巨大システムと化した現代社会をキューブに象徴させながら、そこでもがく人間を巧みに描く。

     なんだか説教臭そうな内容に思えてくるかもしれないが、例えば足手まといな知恵遅れの青年を連れて行くかどうかという議論は、単純だが面白い。ヒューマニズムか、マキャベリズムかという問いだ。そしてその青年が説得力を持った方法で活躍する場面は単なるトリックにとどまらない(展開としては結構バレバレだが)。

     話が逸れたが、キューブが社会の暗喩であるということは、この施設が何なのかを安易に説明すれば、社会全体を説明していることにもつながってしまい、「世の中はそんなに単純じゃないやろ」と安っぽく思われてしまいかねないといえる。

     とはいえ世の中には本作を見て消化不良だったもいるのだろう。キューブの盛り上げ要素となったトリックの部分に注視した人は、一体これが何なのかはやっぱり気になるというものである。

     だから2ではその説明を試みた。これが結局大失敗となったわけである。
     2も基本的な構造は同じ。立方体の謎の施設に連れてこられた複数の男女。わけのわからない事態に混乱しながら脱出方法を探る。同じように危険な部屋もあり、登場人物同士の内ゲバが起こるのも同じ。ただし今回は四次元立方体ということで、時間軸の概念が加わる。なので別の時間軸を生きるもう一人の自分が現れたり、目の前でそのもう一人の自分が死んだりミイラになっていたりする。時間の流れが早い部屋やスローな部屋もあり、アイデアとしてはなかなか面白い。登場人物にもそれぞれ謎めいた背景があり、ストーリーはかなり入り組んでいる。

     しかし逆にこのためトリックストーリーが先行して、登場人物の行動の必然性がトリック以上にはあまりない。代表的なのが人喰いに走る人物で、この人何でそうなっちゃったのか唐突でよくわからない。単に空腹だったから?

     2の場合は、こうやってトリックストーリーに終始しているだけに、これが何なのかを説明する必要に迫られたとも言える。

     さてそこまで謎が謎を読んだこの施設は一体何やねん。これを説明しないと収拾がつかない。デビッド・リンチじゃあるまいし、ってわけで説明を求められ、脚本家の思惑はどうであれ、実に苦し紛れに陰謀説で片付いてしまった。

     陰謀論、二文字でいうと「組織」というこの便利な存在は、ほぼ間違いなく物語を陳腐にする。どんなに強大な組織がいようと、それで全て支配できるほど世の中は狭く、単純ではないからだ。
     物語における謎、トリックストーリーは、果たして主役になれるのだろうか。なかなか難しい命題であるが、とにかく2は作らぬに越したことはないらしい。

    「CUBE」1997年 カナダ
    監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ 出演者:モーリス・ディーン・ウィント 、ニコール デボアー 、D ヒューレット

    「CUBE2 HYPERCUBE」2002年 アメリカ
    監督:アンドレイ・セクラ 出演者:ケリー・マチェット 、ジェラント・ウェイ・デイビス


    コメント
    先ほどCUBEを観終えまして、
    言い知れない消化不良感を抱えていました
    「公共事業」「全体像」「システム」
    ある種の単語が頭の中をぐるぐるとしていました
    しかしそのひっかかりをはっきりとさせるヒントとなるような感想文は中々見つかりませんでした

    あなたの文は数多のCUBEテキストの中で一番核に近いクールなものです
    • 名無し
    • 2014/07/23 12:50 PM
    ありがとうございます。
    • 森下
    • 2014/07/23 11:56 PM
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    2627282930  
    << November 2017 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    • お国自慢
      森下
    • お国自慢
      N.Matsuura
    • 「続く」の続き
      KJ
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      森下
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      名無し
    • W杯与太話4.精神力ということについて
      森下
    • W杯与太話4.精神力ということについて
    • 俺ら河内スタジオ入り
      森下
    • 俺ら河内スタジオ入り
      田中新垣悟
    • 本の宣伝

    recent trackback

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM