【巻ギュー充棟】芸能人はなぜ干されるのか?

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     なんだか妙に気になって読んだ。なかなか本屋にも置いておらず、アマゾンではなるべく買わんようにしているので入手に若干の空振りを重ねたが。

     変な感想になるが、「いい本」だったと思う。

     芸能スキャンダルのドロドロした内幕を期待すると拍子抜けすると思う。ほどほどには触れているので、サイゾーあたりで読んだっきりになった話が頭の中でつながってくる面白さはあったが、この本の趣旨はそこではない。というか、そういう芸能スキャンダルがどうして表に出てくるのかという点も、本書が問題視している構造と密接なつながりがあるから、ドロドロ話を追及すると本末転倒にはなってしまう。

     王様はどうして裸なの?という、そんな本だと思う。

     筆者は芸能記者でも何でもないらしい。その部外者、門外漢の筆者が、どうして芸能人は、人気者でも急に消えるのだろうという素朴な疑問からスタートして、その構図を追っていく。端的にいえば、所属する会社と揉めると干される。そのこと自体は多くの人が聞き知っていると思う。では、何でそんな一種の隷属的な労使環境がまかり通っているのか、ということだ。

     そして、業界関係者や業界に近しい芸能記者ら「専門家」たちは、そういうものだと思い込んでいるか、どこか疑問に思っていても仕方がないと思っているか、あるいはそんなこと口にすれば危ないと怖れているかで、筆者は色んな「専門家」から呆れられたり忠告されたりする。まさに、どうして王様は裸なの、状態である。

     筆者は有効な人脈もないまま、雑誌記事等、表に出ている話を整理しながら、問題点や経緯を明らかにしていっている。なので、学術研究、もしくはサイモン・シンの歴史ノンフィクションに近い。

     サイモン・シンの場合、フェルマーの定理にしろ、ただ今公開中の映画でも話題の暗号解読の歴史にせよ、何人もの天才たちが、いくつかの発見をしつつ、自分の存命中は解明には至らず死んでいく。その一人一人の研究者の人生は読んでいて辛いものがあるが、その繰り返しによって、ある大きな成果に到達するというパターンだから、人類の偉大さに感動させられる。

     だがこちらは、待遇改善を求めて反旗を翻し敗れていく芸能人たちの、死屍累々があるのみ。状況は特に変わらないから救われない。何せマスコミ含め、誰も聞く耳もってくれないんだから、これはなかなかに辛い。政府の陰謀に巻き込まれる主人公、犯罪者の濡れ衣を着せられ世間から猛バッシングされ、信じてくれるのは家族のみ、みたいな、ありがちなサスペンス映画とあんまり変わらない孤立感が、読んでて重い気分にさせられる。何にしろ、権利とか身分保障とかを求めるのは、並大抵ではない苦労を強いられるということだ。

     ま、だからこそ、こういう本が出たこと自体に意味があるとは思うけど。少なくとも芸能ニュースを見る目は変わりそう。あいつは最近天狗になってる、みたいなバッシング記事が出たときは、そういう記事を出させた誰かの意図を考えてみるのも大事なのでは、というお話である。それは芸能ニュースに限らない。いわゆるメディアリテラシーという、ニュースを見る目を肥えさせる一助にもつながるかもしれん。

     うーん、しかし我が身を振り返ると、あまり他人事ではないのかもしれない。一昨年まで、閉鎖された講座の講師をしていたが、全く昇給はなかったし、業績不振で講師料カットに同意もとめら(後略)

    芸能人はなぜ干されるのか?
    星野陽平 鹿砦社 2014年


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