【やっつけ映画評】スターウォーズ/フォースの覚醒、クリード

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     帰省するとBSでスターウォーズの5をやっていた。姪がテレビをつけたらちょうど始まったところで、彼女は何となく興味を惹かれた様子で見出したのだが、父、つまり俺の兄が見とがめて「4を見てないのに見るな!」とエラい剣幕だった。「親父の雷」って、こんな場面で炸裂するものだったっけ?と、おかしくてしょうがなかったのだが、「知ってしまったことは取り戻せない」と兄はもっともなことを言う。
    ​ 当時、製作サイドのほとんどの人間にも伏せられていたという5のラストのアレのことだが、兄いわくは、今作のエピソード7も、予告編を見ていなければ、ハン・ソロが登場したくだりで度肝を抜かれたはずだと、今度は怒りの矛先が配給元に向かっていた。それはまあ確かに。
    ​ ちなみに俺の親父は、公開当時リアルタイムで「猿の惑星」を見ていて、今となってはすっかり有名なラストの女神像に、「ああ、そうだったのか!」と度肝を抜かれたそうである。巷間、映画のネタバレは結構な禁忌とされているが、古典的作品ともなると「みんなもう見ているだろう」という前提があるのか、割と色んな機会に出くわすことは多いだろうし、その古典的謎解きをベースにした新しいものも後に続いて生まれるから(例えば「幻の女」のようなプロットは今ではもはやサスペンスの定石となってしまっている)、我が親父のような新鮮な驚きを抱くのは、今となってはなかなか難しい。

     そういう兄をよそに、早速ネタバレ的なことを言ってしまえば、この人気シリーズはいわば宇宙を舞台にした親子喧嘩である。そして今作は、親子喧嘩第2章。壮大なのか身の丈なのかよくわからないが、宇宙戦争をやりながら、同時にソロとレイアの老夫婦が「俺たち色々あったよなあ」などと語らい息子の行く末を心配するホームドラマが展開するのがこの作品の魅力である。二人ともすっかりお歳を召されて味と貫禄がふんだんだから、仮面をつけてグレるドラ息子の行く末を心配するのにもやけに説得力があって染みる。

     一方で、相変わらずの佇まいなのがチューバッカや、クライマックスの総攻撃シーンで「6」と同じくレーダーの前に座っている提督である。ちっとも歳を取らずご健在の様子だ。地球人とは見かけが全く違うので、もしかするとすごい年寄りになっているのかもしれないが、そもそも我々とは寿命や年の取り方が違うのかもしれない。ソロやレイア、そしてスカイウォーカーもすっかり老けたが、提督はもしかすると「6」で40歳だったのが、まだ42歳になったくらいなのかもしれない。地球人に換算すると10万42歳みたいな。
     そう考えると、役者の加齢を逆手に取った本作の物語もなんだか急に脳内で迷走し出してしまうのである。

     ところで、なぜ「ファースト・オーダー」というダンスグループみたいな名前の帝国の焼き直し的組織が生まれたのかよくわからなかった。「3」で描かれたより強固な安定を求めて共和国から変貌するという帝国の登場には説得力があったものだし、その帝国が崩壊しても次なる不穏な組織が生まれること自体に不思議はないのだが、ではこのファースト・オーダーは何なの?というのは以後、明らかにされるんだろうか。今のところ、その必然性の希薄さには若干安っぽいものを感じてしまう。

     立て続けに見た「クリード」は、エディプスの物語である点と、シリーズ第1作の見事な焼き直しという点、スター・ウォーズと全く同じだった。本来なら爽やかな物語のはずだが、個人的事情のせいでスタローンのシーンでは不覚にも潤んでしまった。ガンものは余計なことを思い出すのでいけませんわ。

     本作は、恋人役の女優が妙に魅力的で、それだけでもういいやという気分にもなるが、なぜクリードは歌手である恋人の曲を入場用に使わなかったのだろう。日本と違ってボクサー当人が選べないのだろうか。黒人なので当たり前のようにヒップホップで入場していたが、だったらこれを使えばよかったのにと思う。

     さて、同じエディプスの物語と評したが、細かく見るとクリードと、スター・ウォーズのドラ息子とは立場がちょっと違う。クリードは、父がボクサーで、チャンピオンだった父と比べられることに苦悩する。一方の長髪ドラ息子は、父に彼と同等の才は特にない。フォースは父でなく母親譲りである。俺自身に例えれば、母親が名のある物書きで、俺はその母親の才覚を引き継ぎそこそこ文章が上手くかけるが、いまいちパっとしない、一方で父親は文章を書くことには特段縁がない、というようなものだ。この場合、複雑な感情を抱く相手は母親のような気がするのだが、それでも父親に対抗意識やコンプレックスを抱くとすれば何なのだろう。

     まあハン・ソロの場合、フォースは使えないし、レイアが評するようにシリーズ中「4」のクライマックス以外では特に活躍もしていないくせにやたらと魅力的というのが大きい。加えて家庭を顧みそうにはないから、グレるのは必然だろう。そこに器の大きさみたいなものが加わるからあの長髪男はフォースがあるのに(というか、特殊能力があるからこそ凡夫であるはずの父親の大きさに)苦しむことになる。当人は事が上手くいかないと物をばんばんぶっ壊す癇癪持ちの、器の大きさとはまだほど遠い未熟者だから余計だ。
    ​ だとすると、クリードもこの先チャンプになっても、ボクシングの実力とは無関係にアポロの影に悩まされる勘定になるが、アポロはソロと違ってもう死んでいるから、影はもっと昇華しやすいのかもしれない。こんなことをクダクダ考えるのも、自分の場合「父子の相克」とは割と無縁に生きてきたからで、恵まれているというべきか、だから突破力がないというべきか。

    「STAR WARS: THE FORCE AWAKENS」2015年アメリカ
    監督:J・J・エイブラムス 
    出演:デイジー・リドリー、ジョン・ボヤーガ、オスカー・アイザック 

    「CREED」2015年アメリカ
    監督:ライアン・クーグラー
    出演:シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン 

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