映画の感想:アウトレイジ三部作

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     新作の公開が迫っているからだろう。テレビでやっていた「アウトレイジ」の1と2を見た。1は以前に見たことがあったが、あえて続きを見たいとも思わず、2は今回初めて見た。簡単な感想を先に書いておくと、1はストーリーのためにわざわざ話をややこしくしている印象を受けてしまい、そのせいか、簡単に殺し過ぎやろと白けてしまったと記憶している。

     

     2作目(正確には「ビヨンド」)は、1より娯楽性の面でうまく作られているのだろう、俺自身はヤクザ映画が好きではないのだが、ついつい引き込まれてしまった。大物俳優だろうと誰だろうと、さっさと不細工に死んでしまうところは、これは権威を獲得した監督だけが許される作り方だ。え?この人もう死ぬの?という意外性はなかなか出せるものではない。高橋克典なんか台詞が一つもなかった(のに映えるから、やはり主役をやる俳優というのは大したものだ)。どんどん死ぬ=続編のたびに俳優が入れ替わるため、全体を通じて強面俳優見本市なところがある。個人的に、出てほしい強面は誰だろうと想像してみたが、真っ先に思い浮かんだのが春風亭昇太だったのは完全に「おんな城主直虎」の影響だ。

     

     普通だったら感想はこれで終わってしまうところだが、時節柄、妙にタイムリーに感じてしまったので続きを書いておこうと思う。ここから先は遠慮なくネタバレだ。

     

     本作の根幹にあるのは、どいつもこいつも二枚舌で信頼できない点だ。昔気質の馬鹿正直なヤクザがその陰謀の前に敗れ去るというヤクザ映画の王道(あんまり見たことがないから知らないけど多分)を北野流になぞった作品といえよう。この「話が違うじゃないか」⇒「信じたやつがバカ」という狡知というか不実というかに、希望の党&民進党周辺の出来事をついつい重ねてしまった。

     ま、本作の場合はあくまで弱小勢力がやられるのに対し、腐っても国政政党、つまり大きい側の民進党が解体するのは映画の上を行っているが、ことは政局だけではない。「希望」が安倍政権の対抗勢力だと思っている有権者、映画に当てはめれば観客の側も、「話が違うじゃないか」に巻き込まれる可能性大につき、注意が必要だ。自民のうち、首相周辺の日本会議組と、希望、維新は似た者同士だからくっついて、残りの自民は立憲政友会でも結成してくれれば話はすっきりわかりやすくなるのだが。

     

     2つを続けて鑑賞すると、印象に残ったのは木村だった。この古典的なヤクザは、煽られるとすぐムキになる。1でも2でも、「だったらお前がこの場で指を詰めろ」と状況からいって完全に無理筋のむちゃくちゃなことを要求され、最初は「なんでそんなことやんなきゃいけねえんだ!」と当然の反発を見せつつ、しまいには「やってやるよこの野郎」と相手の挑発に乗っかる。三国志では真っ先に死ぬタイプだが、しぶとく生き残るところが魅力的だ。この単細胞木村は、2の最後、上部団体から世話になった大友を「破門しろ」と迫られ、「できるわけがない」「だったらお前がここで腹を切れ」といういつものパターンに接し、切腹ではなく破門を選択する。木村も大人になったと妙に印象的だったのだが、結局殺されてしまう。まあ本当に切腹したら死ぬから、どっちを選んでも死ぬのかもしれないが、「現実的選択」のために膝を屈すると死ぬのか、というのがこれまた政局絡みにダブって見えて仕方がなかった。


     一方1で下請けの悲哀のように、上の無茶な要求にこたえ続けた大友は、自分の組が壊滅して当人も刑務所行きになる。このため2では完全に達観しており、1と違って道を誤ることがない。自分を見失わずに生き残る様は、枝野あたりとカブってみえなくもないが、別のことを考えた。
     大友と木村との違いは、自分の組が壊滅した上、復活させたいとも思っていないというしがらみのなさから来る。「脱しがらみ」が合理的に響くときにイメージするのは、この大友のような合理的で誤らない振舞いである。だがこの大友のスマートさは、彼が一人だから可能だといえる。彼が1作目では逆に窮地に陥るのは、子分を率いる責任者だからだ。「しがらみがない」が可能なのは世捨て人だけで、自分の生き残りにしか機能しないのではないかと大友を見ていると思うのである。

     

     この2作を通じた、ある意味最大の悪役は刑事の片岡だが、彼が一匹狼のごとく独断で動いている風なのはちょっと残念な点だ。警察のえげつなさが、彼個人のスタンスに収まってしまうからだ。2で何度か登場する彼の上司たちは、片岡に比べればずっと常識人に見える。もちろん上司の無言のプレッシャーや、当人の出世欲が彼を陰謀家たらしめているのだろうが、現実の警察は、組織だってえげつないことをやってくるものだ。片岡が死んだところで元凶が消えたわけではない、というくらいに持っていく方がより深みも出たような。そうするとヤクザの怖さが霞んでしまうのかもしれないが。

     

     それでまんまと乗せられて、公開中の「最終章」を(割とそんな場合でもない身辺状況なのに)見に行ってしまった。

     まあ蛇足だったなあ。続編を作るのは難しいと相場が決まっているが、「2」がうまくいっても「3」の壁はやっぱり高いものだ。何より病み上がりの塩見三省を心配すればいいのか応援すればいいのか、そればかり目についてしまった。相当な麻痺からのリハビリだったそうだが、「演技の下手な人」くらいまで回復していたから物凄い人だとは思う。

     その他、ビートたけしも西田敏行(この人も病み上がり組か)も加齢が目立ち、「老人」をテーマにした「龍三と七人の子分たち」と勝手に重なってしまっていた。「ヤクザと憲法」を見ても、暴力団界隈も高齢化しているようだから、図らずもリアルな演出になっているともいえる。

     

    「アウトレイジ」2010年日本
    監督:北野武
    出演:ビートたけし、三浦友和、椎名桔平

     

    「アウトレイジ ビヨンド」2012年日本
    監督:北野武
    出演:ビートたけし、西田敏行、三浦友和

     

    「アウトレイジ 最終章」2017年日本
    監督:北野武
    出演:ビートたけし、大森南朋、ピエール瀧


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