映画の感想:君の名は。

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     テレビでやっていた録画をようやく見た。備忘録がてらネタバレで感想をいくつか。

     

     手垢のついたモチーフを思い切り主軸に置くのは、昔から憧れている。見始めて間もなく、同世代の男女が入れ替わるのでなく、〇〇と□□が入れ替わるのはどうだろうとか、自分なりの別案をあれこれ考え出したから、そういう夢想をこちらに誘発してくる点、よい作品なのだろうと思った。見ながら、お!違う時間の人間と入れ替わるのはどうだろう、なんて考えていたら、そういう話だったのには苦笑したが。

     

     入れ替わりについては、藤子F不二雄「未来ドロボウ」のドラマを見たときに、ごちゃごちゃ書いたことがある。そこでも書いているが、巨匠Fには、この入れ替わりモノがいくつかある。親子が入れ替わる話とか、若い男女とオッサンの計3人が入れ替わる話とか、少年が、娘を亡くした父親に、少年が死んだ娘と入替させられるという本作と若干かぶる作品もある。例の牧歌的な絵で短編だが、泣かせる内容だ。本作と若干かぶると書いたが、本作の場合は涙腺は刺激されなかった。理由は後で書く。

     

     一番好きなのは、ドラえもんに出てくるのび太としずかちゃんが入れ替わる話だ。体のパーツを入れ替える道具で、のび太がしずかちゃんの優秀な学力を拝借しようと頭を交換したら、結果体が入れ替わるだけで、頭はのび太のまま。子供のときは読んで混乱したものだった。つまり、入れ替わりが起きたときの、本人を決定する主体はどこにあるのかという哲学的な問いである。本作でも、入れ替わりが起きたとき、元の人格の特技がそのまま継承されている(瀧君が裁縫上手になったり、三葉がバスケで活躍したり)が、特技の源泉は果たして、意識なのか身体なのか。

     

     そんなことをつい考えてしまうのがSF要素が持つ面白さだと思う。本作の場合、入れ替わり以外にも、あれこれボンヤリ想像した。高度に写実的な背景画で、田舎の女子高生と東京の男子高生の暮らしを並べられたことから来る、同質性にまつわる些細な発見とか、大災害という展開に驚きつつも受け入れていることとか。後者についてだけ説明すると、東日本の震災前だったら、トンデモ展開にしか映らなかったと思う。何より作り手も思いつかないか、思いついてもアリエネーと没にするかじゃなかろうか。時間差の中で一種の文通をしつつも会えない男女、かつ片方に悲劇が待つ、というのは「イルマーレ」と同じだが、あちらの悲劇が交通事故止まりなのは、まあそりゃそうなるわね。ちなみに韓国は中国やインド同様、大陸型のデンジャラスな運転なので、交通事故死は日本より身近だ(ネットで検索したら、人口が日本の半分以下なのに死者数は日本よりもちょっと多い)

     

     とまあ、作品に誘発されて脳が活性化したのは楽しい時間だったが、肝心の作中における「入れ替わり」の役割が希薄だった印象。話を展開させるための道具にとどまり、二人の主人公にとって何かの影響があったかどうかといえば、何度も牴颪Ν瓩Δ僧が芽生えた、というくらいでしかない。話を転がすためのただの手段になってしまっていると思った(一方で先に紹介した巨匠Fの場合は入れ替わり自体に大きな意味があるので泣かせる)。

     

     話に中身がないとか、監督の描く女子が完全に男のエロ目線だとかの巷の批判も、この辺りに原因があるのではなかろうか。いずれにせよ、根幹部分の意義が腑に落ちなかったので、恋愛モノに期待してしまうせつなさを感じられなかったのが残念。

     

    2016年日本
    監督:新海誠
    出演:神木隆之介、上白石萌音、成田凌


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