半分でやめた。

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     思い切り途中からなのだが、なんとなく「半分、青い。」を見たら面白くて録画して見続けていた。東京篇になって興味が薄れてしまい、その後はあまり見ていない。
     興味を持ったのは、主人公の年齢設定が俺の兄と同じで、つまり同世代の懐かしさというのがまずある。どうやら自分が生きていた時代は、現在との連続性の中で生きていた分、今とあまり大差ないように受け止めてしまう傾向があるようで、見始めた当初は「こんな古臭かったっけ」と思ったものだった。だが、よくよく振り返るとあんなものだったように思う。友人の「ブッチャー」の髪型なんかはなかなか絶妙で、ああいう出来損ないのLAST GIGSみたいな髪型をしていた男子は多かった。俺もおおむねあんな具合だった。

     というような、言われてみればあんなんだったという感覚に惹きつけられたのが入口だった。こういう現代史的な舞台設定は、なまじっか「時代を象徴するもの」を知っている分、あれこれ盛り込みたくなるのだが、しばしば鼻について制作者の狙いほど共感できなかったり逆効果になることもある。共感する/しないに大きく作用するのは、個々人の個人史だと思うので、作り手側にしてみればしったこっちゃあないのだが、たっぷり調べて控え目に使用するというのがコツなのだろうと思う。


     特に懐かしく感じたのは地域の豊かさといえばいいのか、その点だ。例えば主人公は就職先が決まった後、近所で知り合いのおばちゃんが営んでいるテーラーでスーツをしたてる。これはイタリア製だからいいものよ、などと言いながらおばちゃんは試着を見てウエストをもう少し搾った方がいいなどと調整するのであるが、モノを買うときに、近所に個人経営の専門店があって、品ぞろえは大したことがないのだが、扱っているものはまあまあ上質で融通も利く、という世界は、少なくとも地方都市ではもはや失われた景色だ。都会のごく一部だけで残っているくらいではないだろうか。

     俺はこのドラマと同じく地方都市の産で、このドラマと違って商店街がある歴史的な町ではない昭和の新興住宅地の育ちであるが、それでも個人商店の類は当時たくさんあった。飲食と美容室の残存率は高いが、それ以外の業種はほとんど消えた。彼らがもっていたささやかな市場を、大手のチェーンが全部さらっていった格好だ。それを望んだのは商店主以外の地域住民で、住宅地だとその傾向はより強くなるよね。そうしてこのドラマの主人公たちが大人になって、新自由主義的な価値観を強く支持していくから、律くんたちはこの商店街がつぶれていくことにやがて賛同していくことになるのだろうと想像すると見ていてツラいものがある。

     

     この律くんという男子は、東大がDやE判定で、それで京大にすると言いだすので、おいおい受からんぞと冷や冷やしたが、結局東京の私立に行くことになった。実家は地方のプチブルで、洋館風の内装をした家に上品なナリをした父母がいる。「地方にこんなやついるか」というネット上の感想を見、ちょっと前にはこんな記事が話題になっていた。この記事の筆者も、「地方にこんな金持ちいるかよ」と、同じような感想を抱きそうだが、俺の感覚では当時こういう家は地方にもいくらもいたと思う。

     実家の近所にも、目立って豪邸というわけではないが、自家用車はドイツ車、くらいの家はあった。所得と学力には特段相関関係はうかがえず、大して勉強できないのもいたし、妙に出来たのもいた。「マクドナルド」と言われても何のことかさっぱりわからないくらい「(当時の)都会的なもの」とはとんと縁のないまちだったが、豊かな社会を生きていたのだろうと思う。

     

     さきほどの記事は大いに賛否を読んだようだが、文化格差の部分は俺も昔から感じていたことである。このドラマでいうと、律くんのような若者が、進学で東京にいくか京都にいくかと考えるのは、俺自身にも身に覚えのある選択で、こうしてふるさとを離れた人も実際大量にいたわけだが、一方で主人公のように「漫画家を志して東京に行く」という地方在住の18歳は、ちっともピンとこない。そういう人もすくなからずいたろうし、大学進学者よりは少ないだろうから当たり前ともいえるのだけど、都市部の在住者に比べ「そういう発想自体を持てるかどうか」はかなり差があるとは思う。

     主人公も、たまたま憧れの漫画家に会う機会があったから、その道に進むという選択肢が見えたわけで、つまりそのような機会や可能性との距離が、リアリティを持てるかどうかに大きくかかわるのである。

     

     というわけで、東京篇にはさして興味が持てず、主人公があのまま農協に就職して、傍ら家でマンガを描き続け・・・、という展開だと今も怠りなく録画していたと思う。
     


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