台湾映画あれこれ

0
     台湾映画をいくつか立て続けに見た。これまで「KANO」くらいしか見たことがなかったのは、興味云々というよりは、そもそも視界に入ってきた作品が限られているからで、要するによく知らないせいだ。なので「おすすめ10本!」のようなヤワなサイトから作品名を調べるこことなった。

     そうして次にわかったのは、日本で見れる台湾映画にはかなりの制限があるという事実で、同じアジアでも韓国映画に比べるとレンタル屋に置いている確率がぐっと落ちる。確認したサイトは、洋画に例えれば1位に「タイタニック」が来ているような超初心者向けだと思うのだが、その10本すらままならない。レンタル屋の閉店が目立って進められている昨今、これはいよいよネット配信サービスの登録かと思ったのだが、そこでも見られないのがあれやこれやの様子。一応日本版DVDの販売はあるのだが、レンタルだの配信だのの市場には乗っかっていないというのは、これはノンフィクションの導入になりそうな一つの発見である。
     そうこうしていくつかは見れた、そのうちの感想をいくつか。
    「海角七号/君想う、国境の南」
     これはちょっと前に見た作品。これといった感想が持ちにくかったのでここに何も書かないでいた。ドタバタのバンドものといえばいいのか。ただし町おこしイベント用にその日限りのバンドを組むので、老若男女バラバラのメンバー構成なところは珍しい。
     主人公が夢破れて帰郷したギター弾きで、夢破れたせいか元々そうやつなのか、とにかく態度が悪くて感情移入しにくい。ヒロインは始終イライラしていて、これは一応イラつく合理的理由があるからなのだが、態度の悪い男とツンケンし倒している女の恋愛を見せられても、犬も食わぬという気分がどうしても先行してしまう。
     サイドストーリーとして日本統治時代の悲恋が絡むのだが、現代の物語との関連性が薄く、付け足しっぽく思えてしまった。アイデア倒れの感もあるが、現代側との薄〜いつながりしかないこの歴史の分断は、現実を象徴しているともいえる。穿った見方だが、その辺りは興味深い。
     実際には、日本と台湾は良くも悪くも濃いつながりはたしかにあったのであり、それを背負っている人も少なくないはずなのだが、表立って目につくことは少ない。戦前の悲恋の親族が、実は画面の端っこにたまに登場していた脇役の人というご都合主義にも見える展開も、現実に照らすと妙に説得力があるように映る。そして色々判明したところで、主人公たちの人生には特段大きな影響はないというのもまた象徴的だ。
     主人公が演奏する曲がなかなかよくできたロックだった。バンドものがヒットする秘訣は結局は曲の出来に因るような気がする。ライブのメインのゲストとして呼ばれる日本のミュージシャン役に、実在の人が当人役で出ているのだが、ミュージシャンは演技が上手いの法則をハズしている人を初めて見た。貴重な体験だった。
    「海角七號」2008年台湾
    監督:魏徳聖
    出演:范逸臣、田中千絵、中孝介

     
    「台北に舞う雪」
     観光地の特色ある街並みを舞台にしたイケメンと美女のPVのような映画だった。女性歌手がストレスその他で失踪し、たどり着いた田舎町で男前君と出会う貴種流離譚的な物語で、貴種流離譚なので終わり方も当初から予想がつき、何の裏切りもなくその通りだった。人間は土地と立場に縛られる存在なのだと再確認させられた。
     この男前君が孤児で町のみんなが親代わり、とにかく素直で明るくイイやつ、という設定が実写版パズーのようであった。概ねそんな顔つきだし。
     失踪をかぎつけた芸能記者(?)が行方を探ってこの町にやってくるのだが、当初はいかにもゴシップ記者らしき嫌なヤツだったのが、途中から妙にいいヤツになって、見つかる/見つからないのドタバタに話が流れなかったのはよかった。ただしこの記者、いわばただの通りすがりのはずだが、いいヤツ度合に脚本家が乗っかり過ぎたのか、最後には主役男女の恋愛をすべてわかっているように分析して語るのはどうかと思った。
     この作品もクライマックスで歌が出てくる。ヒロインが歌手という設定だからだが、歌うのが伴奏といい唄い方といい、テレサ・テン風だった。制作年代からいって妙に古臭く感じてしまったのだが、台湾の観客はどうだったのだろう。
    「台北飄雪」2009年台湾
    監督:フォ・ジェンチイ
    出演:陳柏霖、トン・ヤオ、トニー・ヤン

     

    「あの頃、君を追いかけた」
     パズー君同様、好きな女子に捨て身のアタックを仕掛けられずにみすみす逃していくチェリーボーイのラブストーリーである。恋を逃した後、野郎同士で殴り合うのもパズー君と同じ。殴って解決するのは自己愛だけなんだが。こういう青臭いもどかしさという手垢のついた題材をうまく料理し直してヒットを連発させたのが韓国映画だと思うが、そこまでのパワーは本作にはなかったと思った。
     色々な点が日本とえらく共通している。冒頭、高校生男子である主人公の友人たちが紹介されていくが、戯画化されたチョケた演出が妙に鼻につくあたり、マンガ原作の日本映画やドラマがよく使う、マンガのデフォルメをそのままやるような演出とよく似ている(好きな演出ではないので、この時点で見る気が削がれてしまったのだが)。
     高校生活の様子、つまり教室の雰囲気とか制服があるところとか、教師の生徒に対する接し方とか、とにかくよく似ていた。設定が90年代前半なので、大雑把にいって俺と同世代くらいになるから余計に。せいぜい、学年歴が秋入学夏卒業な点が異なる点か。あと授業の中で乾隆帝がどうのこうのという話がちらっと出ているが、台湾の場合、「国語」や「国史」の授業内容は、大陸に基軸を置くのか台湾島にあるのか気になった。
     高校生のラブストーリーかと思ったが、中盤あたりで卒業し、大学〜社会人へとステージが変わっていく。大まか俺と同世代設定ということもあり、「半分、青い」を思い出しながら見た。大学卒業後の展開はやたらと早く、どんどん年月が進んでいくが、たしかに人生そんなところはある。30過ぎたくらいからか、気づいたら3年や4年はとっくに過ぎ去っている。こういったあたりは、切ない気分を感じることが出来たが、全体的にはあまり楽しめなかった。「ちょっと悪いけど実はイイやつ的な男子がクラス1の美女を射止める」という設定に鼻白んでしまう灰色の高校生活を送ったせいもあろうが、ラストで主人公がこの物語を小説に書くという作中作的に物語が一周する展開が好きではないのと、エンドロールのお遊び映像にサークル臭が漂ってしまったのが、ラストの「キスシーン」を筆頭に、途中に興味深く見たあれこれを打ち消してしまったように思う。
     高校時代の彼女と結婚した知人が何人かいるが、本作を見ると改めて、すごく尊敬のまなざしを送ってしまう。
    「那些年,我們一起追的女孩」2011年台湾
    監督:九把刀
    出演:柯震東、ミシェル・チェン、スティーヴン・ハオ

     
    「父の初七日」
     闘病していた父が死去して、子の兄妹が葬儀を開く台湾版「お葬式」といった内容。初七日というより、葬儀期間自体が七日ある。さすがは仲間が1人増えるたびに3日連続で飲み会を開く水滸伝的大陸文化を受け継ぐ国だと思ったが、この一週間の間、ずーっと式をやっているわけではなく、主には弔問客の受付を長々としているようだ。合間合間で遺族も仕事している。
     葬儀を仕切る男が「道士」と名乗っているので、これは道教式なのだろう。道教とは何だといわれても困る。中国の土着の宗教だが、日本の七福神同様、色んな存在が同列の神様として描かれている飾りつけのごった煮感は、よく知らないながらもすんなり受け入れられるところはご近所さんの国という印象だ。
     派手でにぎやかで、号泣も儀式のうちな点などいかにも中国的でありつつ、花輪とか線香とか列席者の焼香とか、日本と似ている箇所もありつつ、ついでに遺族が着る生成りの喪服が韓国映画で見たあちらの葬式とも似ていて、民俗学的な好奇心大いに刺激される。
     個人的には、水滸伝で読んだのだろうか、「紙銭を燃やす」という大陸の物語でさんざん読んだ作法を初めて映像で見たのと、その灰を川に捨てるところが印象に残った。
     子供のころ「紙銭」に千円札を想像して、お金を燃やすのかと思っていた。お札のような紙切れを、火が絶えないように少しずつくべて燃やし続けるのであるが、道士の指示でその灰を麻袋のようなものに入れて、近所の橋の上から祈りの言葉とともに丸ごと落とす。子供のころ、祖母が死んだときに、祖母の家の目の前にある橋の上から、母親と一緒に使っていた茶碗を落とした記憶がある。月夜に秋の冷たい風が吹く中、茶碗が眼下をすーっと落下し浅い川底でパリンとはじけた映像が、子供心にやたらと神妙に見えて今でも割と鮮明に覚えている。映画に出てくる川と橋の雰囲気がよく似ていたことも手伝って、あのときの夜風と母親の喪服を思い出した。今だったら役所から怒られそうだが、川に流すという行為はいかにも汎神論的世界観だ。
     というような興味深さは色々あったが、映画としての出来は物足りなさを感じた。他人にとっては何てことない家族の断片を綴っていくという趣旨だと思うが、その割には余計なドタバタもあり、一方で家族の描き方は薄めで、映像の雰囲気が自主映画っぽい場面もいくつか。主人公である長女がその後、父の死を大抵は忘れて生活しているものの、何でもないちょっとしたきっかけで悲しみがどっと押し寄せてくるラストは共感した。
    「父後七日」2009年台湾
    監督:ワン・ユーリン 、 エッセイ・リウ
    出演:ワン・リーウェン、ウー・ポンフォン、チェン・ジャーシャン

    コメント
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930    
    << April 2019 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    • お国自慢
      森下
    • お国自慢
      N.Matsuura
    • 「続く」の続き
      KJ
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      森下
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      名無し
    • W杯与太話4.精神力ということについて
      森下
    • W杯与太話4.精神力ということについて
    • 俺ら河内スタジオ入り
      森下
    • 俺ら河内スタジオ入り
      田中新垣悟
    • 本の宣伝

    recent trackback

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM