【La 美麗島粗誌】(29)台北その4_豚薔薇、「人類史上最高」との再会

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     展示物は、商や周の青銅器から始まり、陶磁器、書画、宝飾、象牙、家具、仏像など。書画以外は誰が作ったのかよくわからない工芸品になるが、一番人気で一番理解に苦しむのが、白菜と豚角煮だ。

     いずれも翡翠とか碧玉とかの宝石で作った置物だが、花とか竜とかならわかるが、なぜ白菜に豚肉なんだろう。いや白菜はまだわかる。たしか大陸のどこかで巨大白菜のオブジェを置いたと話題になってたはず。検索したらいくつかの町にあるようで、発音が百財と同じだから縁起がいいとの由。じゃあ角煮は? ああ、そういうこと、つまりこれはあれだ、「愛」を表しているんだな。バラだけに。

     

     説明書きを見ると、肉汁が溢れそうだの香りがしそうだの評価は書いてあるがそもそも何モノなのかがわからない。帰国後、「ごめん仕事が」と湿気た回答で同行を断ってきた学芸員に聞いたが「勉強不足で」とパッとした答えは得られず、「勉強しろ」と言った。
     彼の推論を俺風にまとめると、皇帝の道楽が行き着くところまで行きついて、普通の意匠では満足できなくなり、アバンギャルドさが面白がられた逸品である。まあ確かに、現にこうやって来館者がかじりついているのもスマした皿や壺に比べて面白いからだろう。

     

     個人的には商や周の青銅器にまず歴史ロマンを感じ、審美眼的な部分を刺激してくるのは陶磁器だ。宋時代の緑や青や黒の単色の器はビギナー的には綺麗でシックな欲しくなるデザインである。中でも汝窯という窯元の製品は現存点数が少なく、出来もいいので人気がある。


     俺がこの故宮博物院に興味を持ったのは、以前に大阪市立東洋陶磁美実館で故宮所蔵のこの汝窯の焼物を見たからだった。「人類史上最高のやきもの」という大袈裟なキャッチコピーで紹介されたのは、水仙盆というグラタン皿のような深さの四角い器で、故宮や東洋陶磁所蔵の同形状のもの5つとともに展示してあった。そうして同じようなものが並べられると、素人目にも「史上最高」とされたものが群を抜いて出来がいいことがわかる。発色の見事さが段違いで、こりゃ確かにすげえと感動したものだった。こんな大層なものを所蔵しているのなら是非行ってみたいものだと当時思ったものだったが、再びそれが俺の目の前にある。それも大量の展示の中に紛れて。

    青瓷無紋水仙盆

     

     こうして見るとありがたみがよくわからない。以前にああいう形で見ていなかったら素通りしていたような気もする(一応ミュージアムショップでは推している)。というかこれがあの6つのうちの1つなのかどうかも自信がないが、多分この滑らかさはそうだと弱弱しく確信するのだが、後で確かめたらやはりそうだった。学芸員の仕事って大事だよなあ。ちなみにこの器の用途は不明。おそらく花でも活けたのだろうという推測で水仙盆と呼ばれている由。

     

     この分野はやはり明清時代にきらびやかなものが揃っている。重要産業の製品として国が後押ししているから栄えもするのだろう。明初期の永楽帝のころ本格的に国策として乗り出したと説明書きにはあるが、このころはまだしかし、青の発色がくすんでいる。その後の洗練は良質のコバルト鉱山でも見つかったためか。焼物というのは化学工業の世界だよね。とすると、しげしげ眺めてみて、どうしてこんな高度な技術力を持った国がその後欧米に好き放題いいようにやられたのだろうと疑問が膨れ上がって仕方がない。科学技術は持っていても科学がなかったから?

    左・明永楽時代、右・清雍正時代。青が黒っぽかったのが、時代が下ると明るくなる。

     展示の中には、デジタル技術で遊べるものもあった。郎世寧という画家の細密な絵を拡大して観察したり、塗り絵をしたりできる。というかこの画家物凄いな。中国の円山応挙か若冲かという細かさで、こんな画家がいたのかと不明を恥じた。そしてよくよく聞けばイタリア人だった。ルネッサーンス。


     ところで撮影は可で、フラッシュだけ禁止である。荷物を預けてざっと見た後、再入場できたのでカメラをロッカーから取り出し気になったものを撮って回った。これは結構正しい見方ではないかとやってみて思った。

     

     まあ確かに、ここはまごうことなき中華民国であり、中国については勉強になるが台湾についてはさして知れることはない。その点逆説的に台湾を象徴した博物館ともいえる。


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