【La 美麗島粗誌】(32)台北その7_念願、虚構

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     圓山大飯店ともさようなら。土産物のせいで鞄が一つ増えてしまい、面倒なのでタクシーで台北駅に向かった。何度か利用しているが、地上から外観を見るのは初めてだ。武道館のような独特の格好をしている。

     とりあえず朝食を食べたいが、駅の飲食街で開いているのは、モスバーガーかパン屋かといった具合。結局、駅の外にあったセブンイレブンのイートインコーナーで、またも独特の具材のおにぎりに挑戦した。やはりよくわからない味だった。

     

    瑞芳駅に現れた太魯閣号。ソニック風味

     本日の目的は人気の平渓線だ。沿線に雰囲気のある駅が並ぶローカル線である。本数が少ないので事前にしっかり時刻表をチェックしておく必要がある。まずは荷物を預け、宜蘭方面の電車に乗って瑞芳駅へ。この時点で結構な田舎にたどり着くが、あまり待つことなく黄色い車両がやってきた。結構混雑しているが、運よく座れた。

     

     基隆河沿いの渓谷を電車がのんびり進んでいく。緑が溢れているが、台南や高雄と違って生えている木が日本と似ていて既視感のある山奥の景色といえる。3つめの十分駅で多くの人が下りていく。俺は終点まで行ってみるとしよう。

     菁桐駅に着いた。平渓線は、石炭の運搬目的で建設され、往時はすべての駅に炭鉱があったが現在はどこも閉山している。その夢の跡感が最も強いのがこの菁桐駅で、日本統治時代の木造駅舎が残っている。

     

     俺にとってはどちらかというと「台北に舞う雪」の舞台という位置づけ。さして面白くない映画だが、映像は綺麗だったので印象に残っている。映画の中でもさんざん出てくる竹の短冊が溢れていて、駅前には、これ出てきたっけ?(うろ覚え)と思わせるカフェがある。ただし、印象的な赤い橋等々は割と通そうで、折り返し電車が15分くらいで出発するのと天秤にかけると、後者が勝って駅前周辺だけぶらついた。土産物屋の店主たちも「どうせすぐ折り返すんだろ」という表情に見えるような・・・。


     せっかく来たので何か買い食いをと、饅頭を一つ購入したが、とても残念な味だった。酸化したピーナッツの味で要するに古くなったマズさ。それも後押しして短時間で菁桐とはお別れ。人気の十分で降りた。

     

     

     ここはランタンと、商店の軒先ギリギリを車両が走ることで有名な場所だ。観光ポスターでも見たことがあるし、映画やドラマでもよく出てくる。ランタンは色が様々あって、願い事に応じて選ぶらしい。まずは筆で願い事を書き入れ、店員の指示で上空へと飛ばす。熱気球構造になっているので、ふわーっと浮いていくわけだが、思いのほか一瞬だ。

     

     それらの喧騒を写真に収め、ギリギリを通過する車両も撮れた。あとは昼食といきたいところだが、予想に反して飲食店があまりなく、結局ソーセージとか、テイクアウトのおやつっぽいものをいくつか食べるにとどまった。これだったら菁桐駅で売っていた雞捲とかイモとか、未知の食べ物を買った方がよかった。何で饅頭にしてしまったのだろう。せめてマンゴースムージーでも飲むかと買ったら、飲みきれないくらい大量だった。

    なぜ座って撮るのだろう?この橋を渡った先に滝がある。

     

     人気の九份はアクセスがあまりよくない。十分で十分満足してしまったのと、「悲情城市」で街並みの魅力がよくわからなかったのと、千と千尋にそれほど思い入れがないこともあり、今回はパス。台北に戻るとしよう。


     台北駅からMRTに乗り、再び中正紀念堂駅で降りた。ちょうど時間的に、紀念堂の衛兵交代を見れそうだったからだ。
     一昨日の夜に来たときはわからなかったが、紀念堂は青瓦の映える建物だった。あのときも大きいとは思ったが、近づくと思った以上に非常識な巨大さだった。そういえばライブで出会った彼ら2人も「あのサイズ感、ヤバないっすか」と、ついていけないという顔をしていたが、中華の正統を自称するにはこれくらいデカいものが必要だったのだろう。

     

     そもそもこの公園自体がだだっぴろい。地図で確認すると長居公園くらいあり、日比谷公園よりちょっと広い。どちらとも違うのは、建物がドーンとある以外はせいぜい花壇があるくらい。まあ、こういう広場も大陸っぽい発想で、日本の場合はそもそもこういう場所を作ろうという発想自体があんまりない。

    階段を上る人間のサイズと比べると、呆れる大きさ

     「中正」は蒋介石の諱(いみな)で、字(あざな)が介石。台湾中に中山路と並んで中正路があるのもこれが由来である。要するに蒋介石没後に顕彰のため建てられた。1980年完成なので比較的新しい。「流」では冒頭、蒋介石が死亡したところから始まり、それが当時いかにショッキングな出来事だったかがつづられているが、そのショックがここまでデカくさせたのだろうか。高さ70mだから、総統府より高い。
     階段を上ってお堂にたどり着くまでに息が上がってしまった。中には大仏のような紹介石像があり、2人の衛兵が警備している。彼らが1時間ごとに交代する儀式が観光の定番となっている。こちらすっかり汗だくだが、制服を着こんで微動だにしない様子に息が詰まる。

     間もなくして交代の人員が現れた。勿体ぶったゆっくりとした一糸乱れぬ行進に、須藤元気のダンスグループを思い出す。中空を見るような目つきが怖い。元いた2人と合わせ、全員で右を向いたり向こうを向いたり、銃を上げる下げるグルグル回す、といった演武のような儀式が結構長々と続く。その技や緊張感は、いかにも「衛兵」というどこか古めしかく響く役割にぴったりなのだが、しかし何を守ってるの?という疑問はずっと点滅している。

     王宮のように、生身の人間がいる場を守護するならこれでよかろうと思うが、ここには像しかない。軍政時代ならそれなりの意味もあったろうが、民主化し、大陸からの攻撃もかつてのような現実味からは遠ざかったことを考えると、内にも外にもさして大きな意味を持つパフォーマンスとは思えない。せいぜい思い浮かぶのは「中華民国」という一種の虚構を維持するための装置という役割だが、仮にそうだとすると、台湾が中華の正統を名乗り続ける方が、民国を捨て台湾国でいいじゃんといわゆる独立を選ぶよりも遥かに大陸を刺激しないという点では、彼ら衛兵は台湾全体を守護しているとみなすことができる。

     それにしても、暑さと緊張感ですっかり疲れてしまった。ここには中正さんにまつわる展示もあるが、もういいやという気分になってしまい、早々に退散した。ちなみに制服が青かったので、彼らは空軍の所属なんだとか。


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