【La 美麗島粗誌】(35)台北その10_博物館学習

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    太宰府風味の牛が迎える

     

     まずは国立台湾博物館へ。台湾総督だった児玉源太郎と民生長官後藤新平を顕彰するために作った台湾総督博物館(1915)が前身、という説明を読むと、それは博物館なのか?と思ってしまうが、別に児玉の髭や後藤の眼鏡を展示していたわけではなく、当時かられっきとした博物館だった模様。かつては入口ホールに鎮座していた2人の像は、現在は別室のガラスケースに収まっている。

     

     展示は自然史系が中心で、台湾の動植物や地質を研究した当時の学者の紹介含め、剥製とか標本とかが展示されている。その中で、ペットボトルくらいの巨大バッタの標本にのけぞった。隣にあった団扇くらいの蝶も相当な大きさだが、それも吹き飛ぶくらいの存在感、というかサイズにびびった。ある意味、中正紀念堂より「デカい」。台湾は南洋なんだよなあと忘れかけていた事実を再確認するような感じ。

     原住民もそうだけど、日本と違った見たこともない動植物が自国の版図に含まれたのだから、そりゃあ学者は嬉々として調査するわね。その熱意が伝わってくるからだろうか?この博物館、予想外にかなり面白い。もしかすると台湾で行った博物館の中で一番楽しんだかもしれない。惜しむらくは、ケツカッチンなので急ぎ足で巡らなければならなかったことだ。

     建物もかなり美しいが、ミュージアムショップは大陸並みの体たらく。展示と関係のない駄目な土産物屋状態だ。故宮を見習って商品開発に勤しんで欲しい。

     

    以前は展示されていなかったそうだが、常設なのかこの日たまたまだったのかは不明。


     この博物館は二二八和平公園にある。元は日本統治時代の台北公園(新公園)で、博物館に先立って整備された。陳水扁が総統になる前の台北市長だった1996年に、二・二八事件の紀念碑竣工とともに名称も改められた。
     その一角にあるのが、台北二二八和平紀念館で、もとは事件の中で重要な役割を演じたラジオ局「台北放送局(戦後:台湾広播電台)」だ。展示は結構見ごたえがあるが、これまたケツカッチンなのがもったいなかった。もっと早く来てじっくり見た方がよかった。

    この瓦屋根も帝冠様式になるのか?


     日本の敗戦で民国領となった後の「日本語の禁止は時期尚早」と日本語で書いた新聞の投書記事が展示してあった。半世紀近くの支配の結果、日本語がすっかり浸透していたから、中国に復帰したから禁止と言われても・・・、という困惑である。戦後の台湾の微妙な立場を象徴するような記事だ。

     風刺漫画を見ても、前の方がまだマシだったという実感が溢れていて、こういう地元の鬱憤と国民党側の警戒が緊張感を増大させている中に、マッチで火をくべれば一気に燃え広がる。それこそ浦沢直樹のマンガにも出てきたようなたとえだが、騒動は台湾全土に広がり、大陸から軍を上陸させて鎮圧した。政府発表では死者2万8千人、もっと多いという見積りもあるが、どっちにしてもジェノサイドだ。

     「悲情城市」では間接的にしか描かれず、それだけに余計現実味があって怖いのだが、実態はその印象以上に悲惨だったようで、拘束者の扱い一つとっても無茶苦茶だし、戒厳令がその後38年続いたのもそれだけ国民党側も恐怖だったということだろう。今年で戒厳令解除から31年だから、それより長い期間だったことになる。日本からすれば、戦争に負けることの罪深さでもある。


     この公園には明石元二郎の墓の鳥居もあると予習した本には書いてあったが見当たらない。どうやら移設されたようだった。正確には移設されていたのが元の墓所に戻ったということらしい。日露戦争中の諜報活動で有名な人だが、その後韓国併合時の憲兵司令官を務めていて、俺の先祖の上司だった人でもある。上司といっても、警視総監と交番の巡査くらいの関係だが、その後明石は台湾総督に就任し、俺の先祖は憲兵を辞めて女衒になった。天は人の上に人を造らず、といえり。

     

     総督時代に八田與一の嘉南大圳を承認する等、内政に力を入れていて、死後は台湾に埋葬するよう遺言したから余程思い入れがあったのだろう。台湾に埋葬された唯一の総督となったが、戦後この日本人共同墓地は不法建築のバラックに埋め尽くされた。墓の上に住むという感覚がよくわからんのだが、陳水扁市長時代に撤去された。その際出てきた鳥居が一時この公園に移設され、その後元の墓地に帰ったようだ。
     山田風太郎「ラスプーチンが来た」では、飾り気がない、というかごっそり欠如した表裏のなさ過ぎる魅力的変人として描かれている。ある程度はその通りの変人であったようだが、諜報でも内政でも成果を出すという多面性が不思議な御仁だ。亀井静香みたいなもんか?

    世界の平和博物館の紹介パネルにはピース大阪も紹介されていて、維新の罪深さを知るなど。


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