秋晴れの日

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    こう見ると的までまあまあ遠いでしょ。

     

     地元で国体をやっていた。
     実家は、前回国体のときに、競技場建設と合わせて造成されたかつての新興住宅地である。同世代の親たちがそこに暮らし出し、同世代の子供であふれかえった。なので幼馴染含め我々は国体の子といっていい。それからおおよそ半世紀たち、単純計算でも自ずと持ち回りの順番が来る。

     

     すぐそこにスポーツパークがあるため、国体に合わせて施設のリニューアルが進められているのは勝手に目に入る。何年も前からあちこちが閉鎖されて重機が入り・・・、というのを見てきて、いよいよ今年かあというような感覚は嫌でも醸成されるのであるが、いざ開幕となると全国的な注目のなさを痛感することになる。確かに毎年どこかで必ず開かれているのだろうけど、気に留めることがないからそりゃそうだ。皆既日食みたいなものか。地球上のどこかではかならず見られる勘定になるが、日本で見れるときだけ大騒ぎになる。

     

     帰省すると、駅周辺はあちこちに結果が張り出されていたり、土産物屋が増設されていたり、会場行きのシャトルバスが発着していたりでまあまあそれなりの雰囲気だった。終了間際だったので、競技の大半は終了していたし、県内全域に会場を設けているので、競技によっては行く気が起きないくらい遠い。地元の英雄たる五輪選手が出場するバドミントンは、彼女の地元での開催だったので、距離的にいって着いたころには終わっている時間帯だった。

     

     とりあえずはアーチェリー決勝を見物するとしよう。実家から自転車を10分ほどこいだところにどういうわけかもうひとつスポーツパークがあって、そこでやっていた。五輪選手の古川が出ていたので得した気分だ。

     

     俺も国体に出たことがある。高校時代アーチェリー部にいて、マイナーな貴族スポーツにつき田舎には4校しかなくうち1つは女子だけ。必ず3位以内に入る状況だった。そんな中で他の2校が男子部員不足で団体戦をろくに戦えない状況とぶつかり、棚ぼた的に優勝した。特に俺に関しては団体戦のメンバーにも入っていなかったので棚ぼたもいいところなのだが、とにかく「インターハイ出場」ということになった。

     

     それでいざ会場についたら、あらゆる表示に「国体」と書いてある。聞けばインターハイは全く別の県でやっていて、アーチェリーは当時含まれていなかった。ただの高校の全国大会が国体会場で行われていたということらしい。結果はわざわざ書くまでもなく、「出れるから出た」以外の何者でもない。

     

     さて時を戻して、大阪対愛知の男子決勝だ。古川が10点(的の真ん中)を連発するのを、へえ〜と眺めて終了後に周辺をぶらぶらすると、各県選手の控え場所のテント群があった。よくある白いテントが林立する下にテーブルがずらーっと並んでいて、試合を終えた選手たちが弁当を食ったり茶を飲んだりしながら談笑している。そういえば自分のときも、こんなテントの下で飯食ったなあと思い出した。急に過去の記憶が生々しく甦ってノスタルジックになるあの感覚ね。ただし惨憺たる結果に「はよ帰りてー」としか思ってなかったから思い出しても全然楽しくない。

     

     再び自転車をえっちらおっちらこいでメイン会場へ。普段はフリーパスで自転車ですいーっと通れる田舎のおおらかさを体現したような公園だが、さすがに多くの門が閉じられていて、臨時の駐輪場に移動させられる。外周の柵には、特産品や景勝地などをモチーフにした47都道府県ののぼりがはためいている。地元の児童生徒が動員されたのだろうか、手書きの絵なのだが、我らの地元ののぼりは超雑なカニの絵で済まされていた。わかるぞ、その気持ち。行ったことのない県のシンボルを調べて描く作業でキャッキャ言ってる傍らで、なんで自分だけ地元やねんという不貞腐れだろう。愛郷心より未知の世界に触れることの方が圧倒的に優先される。こうして俺のようなワールドクラスの人材を輩出する土地柄なのである。

     

     桐生のお陰で9.98スタジアムとデカデカと掲げる競技場で陸上(少年の部)を見た。高校生たちか。結構親も来てる様子である。外には売店のテントも並んでいて、今時っぽく凝ったメニューのあれやこれやを売っていて、まあまあ繁盛している。その向こうには、クラスメイトの実家が営んでいるレストランの看板が見えるのだが、少しは特需に預かったのだろうか。というか、チェーンが席巻する時代にあって、特にこれといった特色もない「レストラン」がしぶとく生き残っているのだから敬服する。

     その向こうには、かつて県教委だか市教委だかの建物があったのだが、潰されて巨大駐車場になっていた。築地市場ミニ版。小さいころは子供向けの事業に参加するため何度も足を運んだ場所だから、これまでの人生で場外で一度だけ寿司を食っただけの築地よりは遥かに縁がある分、寂寥感も勝る。

     

     まあまあ大がかりなくせに特段メディアから注目もされず、それでも続いている大会というのもすごいもんだと改めて考えさせられたのだが、あえていえば「この程度」の大会でもこんだけ手間暇かかるんだから、オリンピックを考えるとなかなかの恐怖をリアルに体感できる。貴重な体験であった。


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