二十年弱目の真実

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     NHKのドキュメンタリー番組の書籍で、制作チームの一人が筆をとっている。今一つ興味が持てないでいた。大手新聞が連載記事をベースにまとめた書籍を過去にいくつか読んだことがあるが、テーマの魅力に比べて中身が低温というものばかりだったせいだ。

     会社の名前で出す分、個人の作家が書くノンフィクションと違って、個々の記者の熱量がかき消されるからだ。そもそも日本の新聞記者は熱量を持たない訓練をされている。結果、学者の書く新書、選書の類より無味乾燥な印象を受けるケースもある。しかし、世評が高かったので読んだ。


     かなり読ませる内容だった。特に中盤以降はよく出来た小説のように一気に読んだ。筆力もさることながら、金の力もものをいっている。世界地図版松本清張のように、関係者を訪ねて世界のあちこちへ足を延ばすのだが、個人事業主ライターにはなかなか真似できない。サラリーマンの強みは、旅費交通費の支給、だけではなくて、前払いもしくは遅くとも翌月払いの点だよね。さすが、過去の話については相当の企画制作取材能力を見せる特殊法人である(海外スポーツ以外で「今」の話を的確に取材・放送する部署はこの法人には存在しない)

     

     さて、日本が初めてのPKOで警察官に死者が出たことは、当時リアルタイムで知っていたが(当時のNHKにはニュース部門があった)、その事件発生の背景にあった事情についてはさっぱり知らなかった、という制作側が期待する反応を思い切りなぞる驚きを感じた。
     その警察官たちへの取材が本書のメインを占めるのだが、当時の隊長が主人公の一人である。政府の事なかれやお役所仕事、UNTACの権威主義に翻弄され、時に悔しく惨めな思いもさせられる様子が活写されていて、読んでいるこちらは自ずと感情移入してしまう。それでエピローグに出てくるその後の隊長の経歴を読んで、マジかよと目を見開いた。間接的に知っている人だった。それも「要らん改革ばかりする迷惑な上司」という悪口を聞かされていたから、感情移入がにわかにぐにゃぐにゃと変形してとらえどころが難しくなってしまい困ってしまった。


     この隊長は部下たちの激励と情報連絡手段として部内報をせっせと発行するのだが、そのタイトルが自らの名前を冠した「山崎軍団ニュース」。読みながら、そのネーミングはどうなんだと軽くつっこんでいたものだったが、確かに、部下が閉口するくらい熱心に口を出したがる上司という聞かされた悪評と重なる部分もありやなしや。


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