展覧会続き

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     何度か見たことがあるのでまあいいかと思っていたのが、諸事情でネットの関連記事を見ているうち興味が湧いたのでエッシャー展を訪れた。

     金のにおい(広告屋のにおい)がキツめの展覧会ばかりやる会場につき、偏見がつきまとってしまうというのも、あまり食指が動かなかった理由。展示スペースからグッズ売り場の間の通路に、エッシャー好きを自認する各界著名人からのメッセージが掲示してあって、まさに広告屋のノリといった具合だ。

     写実的な画風かつトリッキーなモチーフが多くて見ていて楽しいため、割と万人受けする人ではないかと思う。なのでこんな脚色いるのかねと思う&「エッシャーが好き」と語る著名人たちに、かつての「ピーター・アーツのファンを公言する内田有紀」が重なってしまいました。

     

     「だまし絵」などとよく言われるが、そう見える作品も中にはあるというだけで、別にだまし絵の作家ではない。展示の大半は風景画が占めている。過去に見たときは、相似形の鳥や魚やトカゲがタイル状に配置されている作品に目を奪われたものだが、改めて風景画の力強さを再確認した。中にはカラーで描いたスケッチと、それを基にした版画の両方が並べられているのもあったけど、明らかに版画の方が草木のの活き活きした雰囲気がふんだんで、木版だから余計、工程を想像できるからぞっとする。

     隣の小学生男子がずっと驚愕の表情で見入っていたのも、小学生だから余計に木版の経験が生々しいのだろう。この前自分が作ったのと全然違うやん、という。これが水彩画だと筆のタッチが違い過ぎるからあんまりピンとこないのではと想像する。

     思いのほか楽しんでしまった。

     

     後日は、縁あってタダ券をもらえたこともあり、京都で藤田嗣治展を鑑賞。まとまった形で見るのは初めてだ。年配の客でエッシャーより遥かにごった返していたのは、京都という土地柄か、それともシニア層には油絵の方が人気があるのか。

     

     乳白色の裸婦が有名な人だが、そのタッチを確立してから後にも色々画風を変えているのは知らなかった。むしろフランスで裸婦をしこたま描いていた後の方が魅力的に映った。この人、女より男の方がうまく描くんでない?メキシコのおっさんとか、帰国してからの魚河岸や力士の絵なんかかなり見入った。習俗を丁寧にトレースしている感じが、アカデミックというかジャーナリスティックというか、とにかくおもしろかった。

     

     アッツ島やサイパンを描いて戦後に戦争協力者と非難されたことは聞きかじっていたけど、こちらも実物を見るのは初めて。どちらも戦局が悪化してからの玉砕を描いた絵で、写実主義のような暗いタッチによる地獄絵図である。これを喜んで陸軍が受け取ったというのも考えてみればおかしな話だ。

     

     帰りに、近くの京都写真美術館でやっていた展示を覗いた。中西建太郎さんいう方が知床で昆布漁師を撮った一連の作品だった。全く知らない世界なので、ドキュメンタリーを見て「へえ〜」となるのと同じ感覚で見た。やっぱ北海道のことって、何にも知らねえんだなと痛感した。藤田が描いたパリの方がまだ近い世界のように錯覚してしまうほどだった。

     

     要するにパリはテレビや映画で見たことがある一方で、知床の漁師(それも昆布)の営みは少しも触れたことがないからに他ならない。解説によれば、担い手がいなくて操業の歴史を閉じたというから、さもありなん。なんだか神妙な気分になった。


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