映画の感想:シン・ゴジラ

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     テレビでやっていた話題作をようやく見た。なかなか面白く見たけど、ネットの書き込みを見ると酷評してる意見もかなりあって、へえ〜とこちらも興味を持った。怪獣映画の定石をなぞってないことから来る不満だろうか。ランボーみたいなものかね。2,3を見て派手な爆発を期待して1を見たら全然違う妙に重いドラマだった、みたいな。あんまり詳しいジャンルではないのでよくわからん。

     1作目をある程度トレースしている内容だと思う。天災と人災が混じったような形でわけのわからん巨大生物が首都をぶっ壊して、政府が右往左往する中で一般庶民が割を食う。そして、見てるこっちはろくに理解できない化学(薬学)によって解決に導く。大枠は大体一緒で、何やら社会的なメッセージが込められてそうなところも同様。災害をドキュメンタリー的に描くあたりも共通で、人間ドラマ的な部分はちっともない。日本映画でよくやらかしがちな「今そんなことしてる場合ちゃうやろ」という登場人物同士のじゃれ合いや、メロドラマがなかったのは個人的には大変によかった。
     
     問題は「ほんとっぽさ」という説得力になる。「君の名は。」でも書いたが、東日本大震災のせいで、こういう巨大な災厄はいくらでもあり得るという感覚が身についてしまったため、巨大生物が暴れまわるという事態も、そんなに夢物語には感じなくなっている。制作者自体もああいうにわかに信じがたい事態が推移していく様子をリアルタイムで見ているから、本当っぽく作る方法論は2011年以前の業界よりは断然出来上がってしまっているとはいえそうだ。

     だとすると、テレビニュースの雰囲気なんかはかなりほんとっぽさがあったが、一庶民の「もうだめだ」という絶望的な恐怖(震度5以上の地震になると「あ、これ死ぬかも」という諦めと恐怖みたいなの感じますやん。ああいうの)は希薄だった。震災という現実があっただけに、デリケートで描きにくいようには思うが、思い切り政府側からの視点で描いている分、国民の描き方が薄いとなまじ社会的メッセージを漂わせている分、どうしても気持ち悪いことにはなるよね。といっても一般庶民A男とB子のサイドストーリーは要らないので、なかなか難しいところではあるだろうが。

     首相以下、政府の対応が話の中心なので、こういうのはテキトーに誤魔化すと途端に安っぽく嘘っぽくなるので大変だ。本作の場合はかなりホントっぽく作っていると思うが、今の政権のお陰で、こういうのはホントっぽく作ると嘘くさくなるジレンマに陥っている。

     「上陸することはあり得ない」と記者会見で断言してすぐ上陸して歩き出す場面なんか、実際だったら「あり得ない」には「あり得る」の意味も含まれるとかなんとか国語閣議決定がなされるのだろうかとか、「私がいつそんなこと言いましたか」とメメント記憶喪失状態になるのだろうかとか、余計なことを妄想してしまう。本作に限らず「半島を出よ」なんかも今から見るととても牧歌的に見えてしまうくらい、シミュレーション型のフィクションは現在、作るのが大変に難しくなっている。由々しき事態だ。政治はせめてホントっぽくやってくれよと切に願う。

     解決策の科学的な部分も、意味はようわからんが、なんやらホントっぽい具合に進行していく点よかったと思うが、そういう中にあって嫌でも悪目立ちするのが石原さとみが演じる米国高官の役だった。他がある程度ちゃんと作られているので、これはいったいどういうことなのだろうと著しく困惑させられた。なんだこの小劇場でよく見る風の安いキャラは?ってことです。

     あれこれとリアリティを担保するための材料をそろえ、吟味するセンスを持っていても、日系外国人、あるいはある種の女性に対してだけ突出した現状認識のゆがみがあるということなんすかね。ないしはバイリンガルへの強烈な怨念。あるいは俺が他の要素を買い被りすぎ? それとも、何かの意図を持ったあえての演出なんだろうか。

     だとすると何だろう。「こんな日米間を取り持ってくれる米政府の人間なんて実際はいませんよ」ということを、あえてのチープなキャラ設定に込めたのだろうか。それだと何となく腑に落ちる。そう考えると、主人公も、主人公というだけでなんとなく受容してしまっていたが、冷静に考えるとあんなやついねえだろ、という気はしてくる。官僚かと思って見てたら政治家だったし。ああいう風味のペテン師ならいるだろうけど(進次郎とか)。だとすれば、これもまた「こんな都合のいいリーダーいませんよ」というメッセージなのかもしれない。なるほど、スパイスがきいていていい映画じゃないか。

    2016年日本
    監督:樋口真嗣
    出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ

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