映画の感想:ルパンVS複製人間

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     新作のマンガを買って読むということがとっくに縁遠くなっている中、今年の初めに1、2巻を読んだのが吉本浩二「ルーザーズ」だった。なかなか面白いのだけど、懐古趣味みたいな内容が面白いというのは、いかにも昔の貯金で生きている現代日本社会といったありさまで複雑な気分になり、かつ、自身が久々に読めたマンガが懐古趣味というのもどうなんだと疑問がむくむく。

     

     この作品の重要登場人物の1人がモンキー・パンチだったので、訃報に接し、作者の吉本氏は作品に必要な証言は全部聞けてるのだろうかと余計な心配をしつつ、物語の序盤で登場する無名の若者が「天寿を全う」的な年齢にとっくになっていた時代を我が身は生きているのだなどと思ったりもしつつだった。


     2巻では、人気マンガ家への地歩を徐々に固めていっているモンキー・パンチに対し、雑誌編集者である主人公が、新雑誌の発刊構想を打ち明けるシーンがある。「(新雑誌では)お前の好きなモン描け!/何が描きたいか言ってみろよ」と迫る主人公に、モンキー・パンチはあれやこれやと脳内でアイデアを探りながら、はたと閃き、興奮と緊張の入り混じった表情で「・・・ルパン」と漏らす。「アルセーヌ・ルパンか・・・・・・?/ちょっと古くねえか・・・・・・?」とピンと来ない主人公に「ジェームズ・ボンドみたいなルパン」だと鼻息荒く言う。聞かされた主人公は「なるほどねえ」と言いつつ、わかったようなわからないような顔をしているのが印象的だ。作中のこの時代、「ルパン三世」はまだ存在しないのだという当たり前の事実に、妙に胸を熱くさせられる。

     

     ルパン三世がまだ存在しない世の中において、「ボンドみたいなルパン」と言われても「島耕作のような渋沢栄一」とでも聞かされているようなものになるのだろうか。完成形を想像するのは難しい。ところで、「まんぷく」で即席めんの構想を萬平が打ち明けても周囲が全く理解できないシーンともカブってくるが、あちらは偽史である。このマンガもどれほど事実に即しているのかは無論のこと不明ながら、息の長い傑作キャラクターですら既存のヒーローを下敷きにしているのだから、発明品はなおさらだ。話が逸れている。

     

     さて追悼企画で急きょ放送された本作を、何度目だと思いつつ見た。改めて思ったのは、映画版第一作からして、敵が巨大過ぎないか?ということだった。最後に出てくる巨大ブロッコリーのサイズのことではなく、核ミサイルすら持っている財力と組織力が、007のスペクターばりだということだ。ヒーローものの敵がインフレする宿命を踏まえると、最初から飛ばし過ぎの感がある。このままいくと、5作目くらいで宇宙にいく勘定になるぞと思ったが、そういえばこの巨大レタスはラストで宇宙に行くのだった。

     

     その非現実的な巨大な敵に説得力を与えているのはマモーの造形であろうが、「永遠の若さをやろう」と言っている人物が結構な異形の相という点ではまったく説得力がない。唯一羨ましいのは頭髪がふさふさな点だけである。だのにまんまと乗っかっている不二子。よほど人を外見で判断しない徳の持ち主か、それとも自分はこうならないという自信家ぶりの現れか。

     

     ところでマモーがことあるごとに、永遠の命だの何だの言っているものの正体はクローン技術を指しているのだが、一方で作品冒頭で絞首刑に遭うルパンは、クローンなのか「本物」なのかといった「火の鳥生命篇」のようなアイデンティティを揺さぶる問いかけもなされている。この時点で、コピーの劣化を持ち出すまでもなく、「永遠」の理屈は破綻している気もする。今の「私」が、クローンとして「私」の死後も生き続けたとして、それは「私」なのか。本作では、大もとのマモー(溶液に浸った巨大ブロッコリー)が登場するので、クローン云々より、結局この保存技術の方が「永遠の生」を担保している。

     

     一方ルパンは、本作以降も映画化され、テレビアニメのシリーズも制作され続け、それらはいずれも監督によって造形がそれぞれ異なっている。本作のルパンと映画第2作の宮崎駿ルパンとは、外見、服装、キャラクター、まあまあ異なるけれども、同じ「ルパン」であり、こちらの方こそクローンに近い存在である(という理屈でいうと、本作で「永遠」に最も執着している不二子の造形が最もバラバラなのは皮肉である)。作者死後も作ろうと思えばいくらでも作れるわけで、永遠のクローンではあるよね。

     

     ところでマモーは、魔術か超能力のような芸当もやってのける存在でもある。そのマモーが見せつける不思議な力に、ルパンはいちいち食って掛かっている。ルパンがこうも科学合理性にこだわるのは、彼自身がしばしばトリックを使うからだろうか。ナポレオンズが割と熱心に超能力否定の論陣を張っているのを思い出した。

     

    1978年日本
    監督:吉川惣司
    出演:山田康雄、増山江威子、小林清志


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