本の感想:通史(と痛飲)

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     ストレートなタイトルと700ページ近い大部にびびっと反応してしまい、結構値が張るが買ってしまった。いつかは読まないといけないのだろうかと思っていた佐藤賢一氏の「カペー朝」「ヴァロア朝」「ブルボン朝」の新書シリーズが、この一冊で済むのだからお買い得。

     各国通史は、新書の類でいくつかは読んだことはあるが、やはり現地の人間が書いたものにはなかなか勝てんはね、と読みながら思った。といっても記述はあっさりしたもので、機械的にサクサク話は進んでいく。扱うテーマの長大さとページ数の関係からいえば簡素な記述にならざるを得ないわけだけど、それでも無性に面白い。

     高校世界史では大して習わない合間の国王(例えば頻出度Aクラスのルイ14世、16世に対して影の薄い15世など)含め、連続的に王朝をずーっと記述しているので、点で知っている歴史が線としてつながっていくのが快感なのだな。これもひとえに概略を知っているからで、高校の授業と、たまに手に取るピンポイントの歴史の新書類に感謝せんといかん。こういう連続性の中で、ジャンヌ・ダルクのような超有名人が出てくると、その特異さが際立って伝わってきて結構感動する。

     

     日本史とは異なり、よその国と地続きで、かつ中国のような圧倒的強者がいない点も面白い。そもそも始まりが、今のフランスの地にフランスとして始まるわけではない。塵が集まり、やがて太陽系の各惑星になりましたみたいな話に近い。フランス国王なる存在が生まれた後も、王家の親戚がイギリスあたりと結託して反旗を翻したり、そうかと思えば金を払って土地を譲り受けたり、犢餠線瓩諒兪がカオスで「今ヨーロッパのどこまでがフランス?」というのはさっぱりわからない。土地勘があればもう少しマシなはずだが、島国の人間には感覚的についていけない点は間違いなくあるよね。

     

     という話のつながりで、父親の喜寿祝を名目にして実質自分も飲む高級洋酒のお買い物。
     以前に紹介したブランデー「カルロス1世」のXOを店で見かけ、予算ともうまくマッチしたので購入した。たまたま立ち寄った新地のディスカウントチェーンで見つけた。さすが場所柄か、扱っている酒の種類がかなり多い。というか、新地のクラブより遥かに美味い高級酒が、同額ないしはずっと安い価格で(相場知らん)買えるやんとつい思ってしまうのは、ここのクラブに全く縁のない人生を送っている人間の発想。

     

     カルロス1世は「フランス史」ではフラソンワ1世のライバルとして登場する。男前で社交的でただし短絡的なフラソンワに対し、美男子でもなく明るくもなく、ただし政治家としてはこっちが上手だろうなというカルロス。さあてそのお味は、というと、まずこの箱の開け方がなかなかわからずまごついてしまった。まさかの磁石でくっついて閉じております。高級ブランデーはしばしばやり過ぎなくらい瓶のデザインに凝るものだが、箱からして凝り過ぎだ。

     


     仕切り直し。実家の棚の奥にしまっているブランデーグラスをわざわざ出して、トットットットという音を聞いて、さて舐める。おフランスと違ってハードな味わい(XOだから当然まろやかな口当たりだが)。色も暗いし、確かにこれはカルロス1世だ。

     

     本の話に戻る。通史ついでにこちらは二国間通史。「袁世凱」が面白かったので、同じく岡本教授の本をと手に取った。「袁世凱」とは異なり、学術色の薄い版元のカラーに合わせた講談調(?)の文章で、器用な人だと感心した。大学の先生で文章のスタイルを使い分けられる人はそんなにいないはず。

     

     日本の歴史において、中国について詳しく知っていた時代なんかまずない、という事実を、時代を追って詳らかにしていく内容なのだけど、元、明あたりの、商業を視点とした歴史の説明が面白かった。特に明は、長い割にはよく知らない王朝だしで、キーワードしか知らないことが多少はつながった印象。

     

     新書ついでに、通史でも何でもないピンポイントの歴史についての話題の新書も読了。ひたすら日本軍兵士の死のパターンとその背景が綴られていく強烈な内容。新書にしても短めの分量のはずだが、なんどかキツくなって間を空けざるを得なかった。
     兵士の置かれた劣悪な環境もキツいが、最もしんどかったのは自殺に追い込むほどいじめをするアホの上官と、それを解決する気もない上層部の残念な実態の部分。兵士の過酷な現場に比べて、やすやすと想像がつくから余計にキツいんだろう。今の社会状況が後押しする部分もあるしで。


     著者があとがきでも触れているように、リアリストを気取って簡単に戦争を口にする真正「お花畑」に対する強烈なアンチテーゼとなっているわけだけど、こんだけしんどい話だと、そりゃあ当人たちが鬼籍入りするにつれ、なかったことにするマインドは働くわなあとも思った。
     

     

    『フランス史』講談社選書メチエ2019
    ギヨーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー
    監修:鹿島茂、訳:楠瀬正浩


    『日中関係史 「政冷経熱」の千五百年』 PHP新書2015
    岡本隆司

     

    『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』中公新書2017
    吉田裕


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