映画の感想:search/サーチ

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     映画館で見るよりもパソコン画面で見た方がより楽しいという珍しい作品だった。全編パソコン画面上だけで構成されている異色サスペンス、という売り文句がどういう意味なのかよく理解できなかったのは、自分のPCの使い方がいかにアンシャンレジームなのかという証。20代の監督による作品だそうで、なるほどこれがデジタル世代の感性か!と思ってしまいそうになるが、スマホの普及で今時の学生はPCに不慣れなのも珍しくないから時代はすでに次のステージに移っているのだった。


     伏線をしっかり貼って見事に回収している非常に出来のいいサスペンスで、「パソコン画面」の枠内で収めている割にはプロット自体にことさらデジタル感があるわけではない(モデルに気づくシーンはいかにもインターネット的で面白いが)。宣伝用の惹句は「手がかりは24億8千万人のSNSの中にある」で、いかにもSNS社会の病理!みたいな印象を抱いてしまうが、全然そんな内容ではなかった。これもまた時代の流れ、デジタルの浸透度合いといったところか。


     高校生の娘が行方知れずとなり、手がかりを求めて父親が娘のSNS等々を調べていくと、父の知らない娘の姿が明らかになってきて…、といったストーリーだ。いざいなくなってみると、娘について知っていることがほとんどないことを痛感させられていく様子が、同世代のおっさんからするとなかなかにツラいものがある。

     この父親は愛妻家で、割とマイホームパパでもあると察せられるから、世間基準では全然ましな父親だと思うが、それだけに余計。父親が娘の期待を思い切りハズすことを言うシーンなんか、ぎゃーって言いそうになった。この辺りの家族の描き方がしっかりとしている点が作品に厚みを持たせている。そしてそれが真相部分にもしっかりと関連しているため、本作は傑作たりえている。以下ネタバレ。

     

     

     真相の中で対比されてるのは、2組の親子だ。かたや、娘について何も知らず、色々と隠し事もされていた父親。かたや犯行を打ち明けられ、異様な掛け値なしの愛情を見せて暴走する母親。「過保護が子供を駄目にする」というわかりやすい訓辞を見つけるのは簡単なのだが、この母親は「息子について何も知らなかった!」と、本作主人公のように苦悩することはないのだろう。そう考えると、この父親の自己嫌悪も割に合わない。ポンコツ親父だと思いながら見たが、じゃあどうあるべきだったのか、この母親のいびつな全力愛情と比べるとわからなくなりそうだ。

     

     ただ本作の場合は、いつまでも娘を子供扱いしていた父親の態度が問題だったという種明かしとして反省点が示されている。家族モノとしてしっかりした着地をしており、その点でも見事だった。


    「SEARCHING」2018年アメリカ
    監督:アニーシュ・チャガンティ
    出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー


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