映画の感想:ロケットマン

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     哀切の唄を見事に歌い上げる同性愛の歌手の苦しみ・その2。「ボヘミアン・ラプソディ」と同じ監督(後から担当した方)による二匹目のどじょう、と書くと悪しざまだが、それなりには面白かった。「ボヘミアン〜」と異なり、主役の俳優が唄っているらしく、これが上手い。監督がミュージカルにしたくなる気分もわかる。


     共通点は、同性愛者の孤独に付け入って当人を食い物にする悪役と、結ばれたくても結ばれない心の友が出てくるところ。ただし、家族には愛されていたと思しきフレディに対し、本作の主人公エルトン・ジョンは父母からも疎んじられているから本当に孤独で見ていてツラい。ついでに「ボヘミアン〜」におけるフレディのダメな恋愛相手は、精神的な理由で彼を独占しようとしていたのに対し、本作の場合は完全に金目的でまとわりついてくる。こいつは単にビジネスでゲイをやっている似非ゲイなんじゃないかと怒りすら湧いてきたのだった。


     そして、親に見放される辛さや同性愛の苦悩は自分自身には縁がない分、共感してもそれがどこまでのものかは怪しいものだが、それに対して本作における薄毛の進行のリアルさは映画史に残る完成度であり、個人的にはこちらが遥かに真に迫った。救いはエルトン自身が薄毛を嘆く台詞がないことで、鏡をじーっと見て髪を立てるのか寝かせるのか迷う短い場面が1度あるきり(わかるわかる)。エルトン自身の悩みまで克明に描かれたら最後まで見られなかったかもしれない。それを思うと、ツライ現実をリアルなドラマにする罪深さを思う。

     

     そしてまた地味にリアルだったのが、若いころはいかにもロックスターになりそうなロン毛イケメンの盟友バーニーが、加齢による外見(髪)の変化があんまりないくせに年を経るごとに服装がジジむさくなって全体にダサくなっていくところ。最後は十三駅前で見かけたら「こいつ絶対七芸に行くやろやっぱりな」風の長髪オヤジになっていた。これら2人の加齢を見ながら、今の俺に必要なのは、派手なシャツや上着ではないかと思い始めていたのだった。


     曲の力で傑作になっているけど、物語は伝記ダイジェストみたいでさして出来はよくなかった「ボヘミアン〜」に対し、本作はドラマ主体になっている。曲が生まれる過程を描いているのは「僕の歌は君の歌」くらい。本作における音楽は、要所要所で現れるミュージカルのシーンに活用する格好になっている、のかと思いきや、「ライブ―酒―ライブ」の駄目な日々、というシークエンスでさらっと使われるだけだったりで、割と雑な扱いな印象も受けた。


     彼の曲の場合、歌詞が叙景詩というのか、事実をそのまんま連ねているだけというのが多いらしい。あまりまとめてちゃんと聞いたことがないので知らないのだけど、作中に出てくる訳詞を見てもまあそんな感じではある。なのでこちらの作品こそ、歌詞にしっかり従ってドラマを組み立てていった方がよかったんじゃないかしら、と思った。


     音楽ものの映画は、クライマックスに演奏シーンを持ってくると相場が決まっているのだが、本作はそこを少々裏切ってくる。新しい手法に挑む点、好感は持てるが、やはり演奏シーンで盛り上がって終わらないとどうにも不発感は生じるなあ。その点では新機軸の難しいジャンルなのかも。


    「ROCKETMAN」2019年イギリス=アメリカ
    監督:デクスター・フレッチャー
    出演:タロン・エガ−トン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード


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