【やっつけ映画評】アタリ ゲームオーバー

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     仕事終わりに「ジョーカー」を見たいのだが、なかなか時間が合わない。うまいこと見れんなあとぼやきながら、ついレンタル屋に入ってしまった。いやもちろん、ジョーカーすら見れない身なのに何も借りません。ほー、あの作品がレンタルされてるぞ、なんて眺めるだけ。「ネトフリ入らないんですか」などと人様から言われてしまう昨今だが、本屋と図書館とレンタル屋の棚をぼけーっと眺めるのが、スーパーの見切り品をあさるのと同じくらい好きなもんで。

     そしたらまんまと、本作を知ってしまった。
     1980年代初頭、社会現象を巻き起こしたTVゲーム機ATARI2600。その専用ソフトとして開発され、1982年のクリスマスシーズンの最重要ソフトとして開発されたゲーム『E.T.』。大ヒットしたスティーヴン・スピルバーグの映画とタイアップし、ゲームの歴史を変える作品となるはずだったが、現在では、ゲーマーたちから史上最悪のクソゲーとして語られ、ATARI社を倒産に導いたソフトという不名誉な烙印を押されている。そして、その『E.T.』の不良在庫が大量に、ニューメキシコのとある砂漠に埋められているという。
     とぼけたタイトルに加え、こんな内容紹介読んだら借りてしまうではないか!ヒット映画とタイアップして鳴り物入りで発売された商品が超駄作、それで会社が倒産、大量の在庫が砂漠に埋められてるらしい。かなり完璧なストーリーだ。そして作品の尺もコンパクト。借りるしかない。

     アタリ社はなぜか名前だけ知っている。なぜ知ってるのかはよくわからない。スティーブ・ジョブスの伝記映画の序盤で登場したとき、そういえばアタリって会社あったなと思った程度の認識でしかないが。
     あの映画では、尊大な若きジョブス(おっさんになってもそうだが)に対し、上司は辟易しながらも寛大な態度で接していて、ズルいやつだと思ったものだ。本作を見ると実際に結構いい会社だったとわかる(ジョブスはラストでチラっと写真が出る程度)。

     本作は、アタリの社史と「E.T.」発売の経緯をたどりながら、「売れずに余った大量の在庫を埋めた場所」の掘削を試みていく。果たして本当に「E.T.」は埋まっているのか、それともただの都市伝説に過ぎないのか。まるで探偵ナイトスクープもしくは森友学園のような話である。

     掘削場所の特定は、長年この問題を研究してきた産廃業者のおっさんがある程度進めているし、掘削作業は依頼した専門業者が行うので、監督は割と外野にいる。ナイトスクープほどには積極的な役割を演じない。その点展開としては若干地味だ。
     もう少しどうにかならんかったのかと思ったのは、「E.T.」の内容がよくわからなかった点だ。軽くしか紹介していない。黎明期のテレビゲームがどのようなものだったのか、リアルタイムで触れてきた世代なので、どういう風に面白くないのか、何となくの想像はできるのであるが、それでも雰囲気程度にしか伝わらないのはいただけなかった。

     印象的だったのは、掘削作業を見物に来た面々だ。この調査自体がニュースとして取り上げられたことで、ゲームファンたちが世紀の発見の目撃者になろうと続々と現場にやってくる。その中には、「E.T.」の開発者もいる。当時アタリ社のエース級だったために鳴り物入りのプロジェクトを任され、そのせいで「史上最悪のクソゲーを作った男」の烙印を押されてしまう可哀想な人だ。掘削現場を目の当たりにして言葉を詰まらせる様子が、彼の背負ってきた十字架の重さを表していて切ない。

     その一方で、当時の経営者たちはインタビューには答えても都市伝説の真偽にはそれほど興味がないようで、最初から「あんな話ガセだよ」とにべもなく、掘削現場にも来ない。現場と上層部の温度差を実に端的に表しているような。
     無論、スピルバーグも来るはずはない。出来上がったゲームにゴーサインを出している分、彼も当事者の1人ではある。おそらく、当時スピルバーグはテレビゲームのことをよく知らなかったというのと、別分野の作り手を尊重したというのがゴーサインの理由ではないかと推察するが、自身の作品の派生商品がここまでの存在になってしまったことについてどう思うのか、感想くらいは聞きたいところだ。まあ巨大なヒット作だけに派生商品がありすぎて感想の持ちようなどないのかもしれないが。
     さて監督たちが明らかにしたのは、都市伝説、ひいては民間伝承ないしは通俗的犹房足瓩呂匹里茲Δ砲弔られていくのかということだと思う。
     砂漠の地下には間違いなく大量の「E.T.」が埋まっていたが、発売本数に比べるとわずかな量しかなく、他のアタリ製品も数多く埋められていた。つまり、行き場を失った「E.T.」を全部廃棄したわけではなく、会社倒産後に在庫を処分しただけのことらしい。そして「E.T.」がアタリ社倒産の直接の引き金ではないことは当時の経営者が証言しており、Wikipediaにもそれなりの詳細が掲載されている。また「E.T.」が「史上最悪のクソゲー」とされる根拠も乏しく、酷い内容のソフトは他にいくらでもある。要するに全くのウソではないが、かなりの誇張が混じっていたという結論である。
     こう書いてしまうと、予定調和的な結論にしか読めなさそうだが、そのウソと誇張の割合の実態が感じられる点、なかなか面白いドキュメンタリーだと思った。そしてこうした都市伝説が、当時を知らない若い世代にまで受け継がれていったその生命力のかなりは、やはり「E.T.」だからだろう。「バンゲリングベイ」だったらここまでにはならないんじゃないか。傑作というのは、受け手側にも犒羣遶瓩鮴犬濬个港巴呂鰺燭┐襪發里覆鵑世蹐Δ福

     リビジョニストたちが跳梁跋扈する時代であるが、自分たちが得意気に吹聴している「真実の歴史」は、「E.T.」同様、元の歴史の厚みに後押しされてようやく存在できているということを示している。あんたら謙虚になれよ。
    「Atari: Game Over」2014年アメリカ
    監督:ザック・ベン

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