ウィーンのモダン

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    どういう事情かこの絵だけ撮影可。

     

     もらったタダ券を使い切るために美術館通いが続いている。本末転倒臭がやや漂う辺り、自分が桐谷サンに思えてもくる。
     「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」。クリムトが呼び物なのは確かだが、何の展覧会かよくわからない。まあルーブル美術館展よりは楽しめるだろうと予想はするが、さて。


     会場の国立国際美術館は、兵庫県美と違って物理的にアクセスはよろしくない(京阪沿線の人は悪くないが)。俺の場合は大抵福島から歩いている。何だか久々だ。のもやんが住んでいたころはこの辺りの飲食店はかなり行ったもので、せいぜい顔と綽名くらいしか知らない文字通りの顔見知りたちと夜中まで酒飲んだり、全く無駄な時間を過ごしていた。こういうエリアの常で、当時行った店の多くはもうとっくにないだろう。同じく彼ら彼女らの多くも、俺みたいに、久々来たなあと勝手に懐かしむ立場になっているに違いない。


     駅からまっすぐ下ると朝日放送のデカい社屋と出くわす。こういうところに行きたいという学生を相手にしなくなって久しいからか、会社がロクな番組を制作していないからか、番組宣伝のでっかい掲示がどれも寒々しく見えてしまう。

     

     さてようやく着いた。今年の台風で川崎の美術館だの東京の大学図書館だのが水没したことを鑑みれば、川べりに立つ全地下の構造は狂気の沙汰に思えてくる。そのうち海外の美術館はどこも貸してくれなくなるんじゃないか。

     

     などと独り言ちながら地下三階の展示会場に入ると、さっそくマリア・テレジアの肖像画が出迎えた。オーストリアの実質的な皇帝を一時務めた女性にして、マリー・アントワネットの母親として「ベルサイユのばら」でもおなじみ。教科書で見る肖像画はそれだけで「おー」となるもので、シューベルトの肖像画に隣の同世代夫婦がきゃっきゃとなっている。ウィーン会議の絵とともに、メッテルニヒの鞄なるものも展示されていたのだが、傍らの若い衆が「メッテルニヒって会議で踊ってた人やったっけ?」と、当たらずとも遠からずな記憶をたどっており、この辺の歴史はまあまあ有名なんだな。

     個人的にはフランツ・ヨーゼフ1世の絵が気になった。オーストリア皇帝在位が70年近いムガベ大統領みたいな元気な爺さんで、イタリア統一戦争から第一次世界大戦まで近代帝国主義全部盛りの人生だった人である。のだが、山川の教科書に出てこないのでそんなに有名ではない。登場と同時にサラエボで死んでいる甥のフランツ・フェルディナンドは頻出度Aで、名前を拝借したロックバンドもそれなり人気なのだが。

     

     展示趣旨としては、マリア・テレジア以降、つまり神聖ローマ帝国が事実上消え去り、オーストリア帝国へと歩み出す時期から20世紀初頭にかけてのウィーンのあれやこれやを知る企画となっている。このため絵画のみならず、建築、衣服、食器、椅子など、展示の幅も広い。その1つとして、ウィーン画壇の新たな潮流としてクリムトやシーレが位置付けられているという格好。


     このため、先日のバウハウス展と似た雑多さがあるのだが、バウハウスと違ってこちらは帝室が中心なのでどれもこれも装飾が多く煌びやかである。なるほどこういう豪華さへのカウンターとしてあのシンプルさがあるわけだな。クリムトらが結成した分離派という不穏な名前からもうかがえるアウトロー的な団体のポスターも、バウハウスのポスターに通じる雰囲気を感じる。ただ、現代人はモダン側の美的感覚が標準になってしまっている分、帝国の豪華さの方が気になってしまった。

     B2に上がると館内所蔵品の展示。現代美術だらけで、19世紀の絢爛豪華さと、そこからの分離という運動を見た後では、実に自由に映ると同時に、迷走も感じてしまう。

     

     そのまま肥後橋から地下鉄で四ツ橋に行き、映画館に寄った後また戻ってジュンク堂大阪店を覗くと、反日種族なんちゃらいう本がどんだけ並べんねんというくらい、あちこちの棚に大量に置いてあった。ジュンク堂じゃなくてジャンク堂じゃん。ウィーンとの落差が酷い。荒涼としてんなあ。


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