映画の感想:ギターを持った渡り鳥

0

     文博に行くとなれば、ついでに映画も見れるとなおよし。というわけで、たまたまやっていた有名作品を見た。
     父親が若いころ、長嶋茂雄も石原裕次郎も好きではなかったという。テレビではしばしば全国民が好きだったくらいの勢いで語られるものだが、父親が例外なのでその語られ方には違和感しかなかった。一方で父親は小林旭のファンだったが、裕次郎と違って俺が子供のころはあまりテレビに出ていなかったから、違和感どころか人物自体がよくわからない。


     レコードは自宅にたくさんあったからジャケットを見るのだが、薄い顔立ちをしているので子供心には格好いいのかどうなのかピンとこない。何かといえばドラムのシーンがアーカイブ的にテレビに出てくる裕次郎と違い、そもそも話題にすら上らないから確認のしようがない。
     そうこうしているうちに「熱き心に」がヒットして再びテレビに出るようになったが、50手前のマイトガイは、第三次成長を経てすっかり昔の自民の領袖みたいな見事な恰幅になっていた。裕次郎以上に若いころとのつながりが想像できず、スターとしての小林旭をついぞ確認したことがないまま今に至る。

     

     そういうわけで、映画の内容としてはどうせ当時の商業映画だろうと特に期待もしていなかったが、大きなスクリーンで若いころの動く彼を見ることに意味があろうと、だいぶ理屈っぽい興味を抱いて訪れた。

     

     席はかなり埋まっていた。さすがはかつてのスターである。見事に爺さん婆さんだけなのが清々しい。溝口健二や成瀬巳喜男といった著名な監督作品と違って、やはり若人には見向きもされないのだろう。時代のあだ花で終わるのが商業映画の宿命である。ギターを背負った流しの青年がヤクザと大立ち回りを演じるというトンデモ臭すらする内容だから余計である。

     

     冒頭、さっそくギターをかついで海辺を歩く小林旭演じる「滝」が登場する。昔の映画なので、最初に出演とスタッフが全部紹介されるのだが、バックに流れる主題歌を、そらで歌えてしまえる自分がいる。雀百まで踊り忘れず。英才教育の賜物だな。

     滝はギターを、ケースなしの裸で肩に担いでいる。百姓が鍬を持ち歩くときの担ぎ方。斬新。先日、ギターを持ち歩くのにケースがないからと楽器屋に飛び込んだ己は、所詮固定観念にとらわれた保守派だと反省しなければならない。

     

     このギター、ボディの円周に沿って中東風味の草花模様がぐるりと描かれていてなかなか洒落ている。さらにこれ、後から絵具で書いたように見えるから、だとすれば、酔って自分のギターにあみだくじ模様を白塗料で書きつけた布袋寅泰に先駆けること30年前である。ポスターでは模様のないスタンダードなベージュボディなのはなぜなんだろう。

     さらに注目すべきはストラップだ。演奏時にギターを肩から掛けるためのベルトのような用具であるが、旭モデルのストラップきたら、これが神輿の装飾に使いそうな紅白の細い縄なのである。縄みたいなストラップではなく、縄そのもの。斬新!

     この特別仕様のギターで悪党をとっちめるトンデモストーリーを想像したが、そこまでイカれた作品ではなかった。残念なことに、ギターは「流しをしていたら絡まれた」という序盤の小道具として使われるくらい。中盤以降は海保の臨検を誤魔化すときに一瞬出てくる程度であとはちっとも出てこなかった。ギターを持った渡り鳥といいつつ、全体的には「手持無沙汰のヤクザ」だ。

     

     その肝心の旭だが、このとき二十歳前後。年齢だけでも「暗い過去を背負った流れ者」という設定には苦しい上、年相応の甘っちょろさが残る面構えを随所に見せていたので、ちょっと見ていられないシーンもいくつかだった。顔つきといたたまれなさが若いころの吉川晃司とちょっと似ている。しかし、あのかつてのやんちゃ坊主も今や50を過ぎ、実に格好いい年の取り方をしているのに対し、自然の摂理通りに加齢した旭と比べると対照的だ。改めて吉川晃司は大した人だ。

     一方、若いくせに存在感がピカいちだったのが宍戸錠。出てきた途端に客席が沸いたので、多くの爺婆様たちがこの風変りなヒールを期待していたのだと知った。あてがわれた役の名前が「ジョージ」という手抜き具合(だったら「ジョー」でいいじゃん)に、制作サイドからのおざなりな扱いを案じてしまうが、なかなか大物っぽいワルぶりを演じていて素晴らしい。

     

     というわけで、宍戸錠ばかりに惹きつけられて、小林旭の魅力はやっぱりわからずじまいだった。顔立ちが綺麗なのは間違いないから、ヒーロー以外の役柄だとまた違ってのかもしれないが。昭和30年代の函館の景色を見れる点、現代史の資料としてはなかなか貴重だと思った。

     

    1959年日本
    監督:斎藤武市
    出演:小林旭、浅丘ルリ子、金子信雄


    コメント
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930    
    << June 2020 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    • お国自慢
      森下
    • お国自慢
      N.Matsuura
    • 【巻ギュー充棟】反知性主義
      KJ
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      森下
    • 【映画評】キューブ、キューブ2
      名無し
    • W杯与太話4.精神力ということについて
      森下
    • W杯与太話4.精神力ということについて
    • 俺ら河内スタジオ入り
      森下
    • 俺ら河内スタジオ入り
      田中新垣悟
    • 本の宣伝

    recent trackback

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM