映画の感想:クラッシャージョウ

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     リニューアルした京都みなみ会館の見物を兼ねて、昭和のSFアニメ黄金期に制作された本作を見た。当時よほど宣伝されたのだろう、タイトルだけは知っている。でも初見。概要すらも全く知らない。ある意味新鮮な気分で古い映画を劇場で見れるから、贅沢である。


     今年は「機動戦士ガンダム」の放送から40周年という年に当たる。ということは同時に作画担当だった安彦良和が頭角を現して40周年ということでもあろう。「ガンダム」の無理な制作進行がたたって肋膜炎で入院した彼が現場復帰し、初監督を務めている。

     このため絵はさすがの仕上がりだ。「ガンダム」で培われた技術と、劇場版の成功で儲かったせいもあるのか、これぞ80年代SFアニメという見事な出来栄え。なんでも、テレビ版の「ガンダム」制作時は、使える絵具の色数が劇場版「宇宙戦艦ヤマト」の1/4程度しかなかったそうだが、本作はそれに比べれば絵具の種類も増えている。

     今のアニメが好きな人からすれば、かなり泥臭く時代を感じる雰囲気なのだろうが、個人的にはこういう質感のアニメを子供時代に見ていたので、とても落ち着いて見ることができた。

     しかし内容は……。2時間超えの長尺でもあり、かなり苦痛に感じてしまった。

     

     クサすことをくどくどと書きたくはないからなるべく簡潔に。後出しジャンケン的に展開していく物語展開の苦しさがまず退屈なのだけど、そのせいで必然、主人公ジョウが突撃敢行しか能のない無策な男になっている。話が雑なので、それを転がす主人公も雑にならざるを得ないわけだ。こうなるとジョウの「昭和マンガの主人公男子」の見事すぎる類型たる顔つき髪型、「〜しちまったぜ」に代表される類型主人公語が目に余ってきてしまう。

     

     こうなった最大の原因は、この手のSF冒険ものには必須の、作品を貫く背骨といおうか外箱といおうか、舞台設定の希薄さがあると思う。宇宙に植民した人と地球に残った人との対立、とか、永遠の生命たる機械の体、とか、地球を救うために遠くまで掃除機をもらいに行って帰る、とか。何かしら大枠がはっきりしていればまだどうにかなったところはあるかもしれん。

     

     本作の場合、タイトルにもなっている「クラッシャー」がそれに該当する候補で、ジョウも何かと自身のアイデンティティの拠り所としている風なのだが、結局のところこれが何なのか、便利屋のようなもの、くらいしかわからなかった。せいぜい「面倒ごとに巻き込まれる必然性」を担保する装置として(私立探偵と同じようなもの)使われているだけだった。結果、一介の便利屋が命がけで一国(一惑星)の統治のあり方の是非を問うという極めてバランスを欠いたはちゃめちゃな物語になっている。

     

     ガンダムを経てのこれ、というのは不思議な印象だ。ついでに「スターウォーズ」もとっくに2作目まで公開されている時期、ここまで内容のないものが作られたのはいったいどういうことなんだろう。面白い/面白くない、とか、傑作/駄作ということではない。頑張って作ったものが大して面白くないことなら、自分でも何度も経験済みだ。本作の場合、面白くないというより、不思議なくらい考えなしの空っぽに感じたのだ。絵を綺麗に仕上げることにすべての労力を使い果たしてしまったということ? それとも市場の活性化によって引き起こされるバックラッシュみたいなものなのだろうか。


     それはさておき、作品から何か派生して考えられることはないか、と思考を巡らし書いては消して書いては消してをしてみたが、このような作品を監督した御仁が、約10年後に「虹色のトロツキー」を上梓することを考えると人間変われば変わるものだ、この人個人に関心が湧いてくるなあ、くらいしか思い浮かばなかった。

     

    1983年日本
    監督:安彦良和
    出演:竹村拓、小林清志、小原乃梨子


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