兼業主夫の専業作家の人

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     特に行く気もないのに「今度一杯行きましょね」などとは言わないようにしている(相手がそういう外交辞令を言うてきたときは「是非」などと応じはするけど)。とはいえ、諸々の都合で結果的にそうなっているケースはある。

     

     友人が給与所得者を辞め、専業作家になったと年賀状で報告してきたのが2年前。それはぜひ祝杯をあげねば、などと応じながら、ズルズルとここに至り、はや今年も年末。いい加減、言いっぱなし状態が気持ち悪く、ちょうど氏の自宅近くに仕事で行く用事も重なり、この好機しかなかろう!と連絡を取った。

     

     久々の相手と連絡を取るときにはショートメールというのが昨今の定番だが、さっそく送ると「間違えてますよ」の返信。それでメールに「このアドレス生きてますか」と間抜けな内容を疑心暗鬼送信すると無事連絡がついたわけだが、多くの知人にとっては「お前が生きてるかどうかを問うな」というのが率直なところだろうと思う。ついでに「電話番号変わってないけど」と呆れられてしまった。だとすると、登録間違いでどこかの知らない人に届いた可能性は無論のこと、届いた相手は「すっかり音信不通になったうっすら知ってる間柄の人」の可能性もあるのかも。余計気まずい。


     さてすでに述べたように、出版不況どころか、ビジネスモデル自体が崩壊してきており、大手すら差別的な駄文を掲載して売れるどころか廃刊、みたいな目も当てられぬ状況にある昨今、専業作家というのは「おもちゃ屋で生計立ててます」くらいレアなケースに思えてしまう。

     当然、恐ろしい勢いで新作を書き続けないといけないから、売れる売れないもさることながら、書き上げる実作業もユーチューバーばりのハイペースが求められる。聞けば今年だけで10冊というから、これだけでトマス・ハリスの全著作の倍近い。まあ全部がオリジナルというわけではなく、既存作品のノベライズ等、下請け的な仕事も含まれるそうだが、それにしても相当だ。


     実際、この日会う前に近況を予習しておこうと本屋に寄ったら、彼の新刊が棚に正面向きで詰め込んであった。「多分、今日発売」との由。出版社側から「こういうアイデアで」と頼まれて書いた作品なので「いやあキツかった」と、すっかり言うことがプロのそれである。

     

     俺はというと、何も書きあげられないまま4年くらいたってしまい、大御所洋楽ミュージシャン並みの空白である。フィクション以外の文章、つまり新聞記事とか学術論文とか社内報とかを書いている知人ならそれなりの数いるけど、フィクション書きは趣味レベルの人を含めても彼以外あんまり見当たらない。舞台の台本書きの知人は、今は書いてないか、付き合いが途絶えているかの心当たりしかないが、そもそもなぜだか舞台の人間と脚本についてあまり話したことがない。

     彼とは、舞台で脚本を書いていたころも、ざざっと目を通してもらって感想を聞いたりしていたこともあり、付き合いも長いし、気安い関係ではある。というわけで、自身の停滞している作品について、あれこれ助言を聞いた。ひとつだけ書いておくと、「そこまで詰まってるんなら、捨てるか思い切り変えてしまえ。その方が結果的に早い」とのことで、まあそうなるよね。


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