映画の感想:ブラックパンサー

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     テレビでやっているのを見た。マーベルコミックのヒーローものだが、主人公がいったんは悪役に敗れて地位を失い、その後復活してやり返す展開。まさかロッキーを見せられるとは思わなかった。ついでに、負けるときに育ての親みたいな人が死ぬので「ロッキー3」である。

     ところでフォレスト・ウィティカー演じるこの宰相みたいな人が、序盤の昔のシーンにちらっと出てくる間抜けな雰囲気の二重スパイ若人と同一人物設定だったというのが中盤でのどんでん返しだった。この頼りない雰囲気の若造が、その後こんなに貫禄出るのか。逆にフォレスト・ウィティカー当人の若いころがどんなんだったのかが気になってしまった。

     

     ロッキー要素はこれだけでなく、主人公が一旦敗れる悪役を演じているのが、「クリード」シリーズの主人公役の人だった。モチーフかぶりなくせに主役が悪役につき、ややこんがらがる。短髪のクリードと違って、ツーブロックのくせっけ長髪で、ワルを演じているせいか動きがくねくねしており、まるで中邑真輔だった。


     タイトルから当然想像するのは黒人解放の急進左派であるが、前半はそれとは正反対の王族の話だ。主人公ティ・チャラはアフリカのワカンダ国(という架空の国)の王子で、父の死によって国王に即位する。ワカンダは農業くらいしか産業がない貧しい国、というのが世を忍ぶ仮の姿で、実際には特殊な鉱物に恵まれ、そのヴィブラニウムというよくわからんがとにかくスゴい鉱物でもって最先端のテクノロジーを有したプレスター・ジョン伝説を地で行く超文明国である。

     そのような物凄い国力を持つ国の元首に主人公は就任するわけだが、話としては王族内のあれやこれやのファミリーストーリーで展開しており、為政者にとっての最大の問題が「一族」である点、王政を理解するのにうってつけの教材となっている。


     そういう中で、王族でありながら孤児としてアメリカで育ったキルモンガーが、天一坊よろしく王位継承権を主張してワカンダに現れる。ここから割と面白くなった。


     

     アメリカの貧しい黒人として差別の中で育ってきたからだろう、キルモンガーは白人への憎悪をたぎらせながら(そういえば中邑真輔は何かと「たぎってきたぜ」とか「たぎらせてくれ」とか口にする)、ワカンダの国力を用いた暴力革命のようなものを画策している。国王に就任して国力を使おうとするから「革命」ではないかもしれないが。

     話は逸れるが、キルモンガーは王に就任した途端、超人的なパワーの源たるハーブを焼き払うよう命じる。自分以外の人間がそれを手に入れるのを恐れたからだが、当然ハーブの管理者はしきたりに反すると抵抗する。というのも、焼き払えば次の国王の分がなくなるからで、王政とはつまり「個人」ではなく「家」の支配である。キルモンガーはパワーを独占しようとするから王ではなく独裁者なのだな。そしてワカンダ国のことは大して関心がなく、武力による白人層への復讐を画策しているから、イスラム国あたりに近いのではないか。とにかく思想性においては彼の方がブラックパンサー的といえよう。


     一方のティ・チャラは、戦争ふっかけてどうするんだと否定するから、こちらはキング牧師的な位置づけ、あるいはティ・チャラ役の俳優が「42」で演じたジャッキー・ロビンソンの方が近いのか、と思わせておいて、豊かな国力を秘して最貧国のふりして国際問題からは距離を取って一国平和主義を取っているからキング牧師やロビンソンとはずいぶん異なる。モンロー主義時代のアメリカそのものともいえる。なので、どこかずっこい印象もあり、キルモンガーの主張の方が正しそう、で言い過ぎなら、まだ理解できる分、ねじれ現象が起きている。この辺がなかなか面白かった。


     ティ・チャラはキルモンガーとの死闘を経て、一国平和主義を捨てて国際社会で中心的役割を果たそうと動き出すところで物語は終わる。ワカンダのテクノロジーを武力ではなく平和利用する格好だ。キルモンガーの影響を受けての宗旨替えであるのは疑いない。ではキルモンガーに勝利したティ・チャラは彼をどう処遇したかというと、処刑。暴力を否定し平和を説き、何ならそれを気づかせてくれた相手ではあっても、処刑。だってそれが王政だからさ。


    蛇足:アメリカのアクション映画にはおなじみの「アジアの雑踏」が香港でも日本でもなく韓国というのが時代だな。ワトソン役でおなじみのマーティ・フリーマンは、本作でもワトソンみたいな役だった。

     

    「BLACK PANTHER」2018年アメリカ
    監督:ライアン・クーグラー
    出演:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ


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