映画の感想:ドント・ウォーリー

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     脊髄損傷で重度の身障者となった男の実話に基づいた物語であるが、障碍よりもアルコール依存症の方がメインテーマといえるかもしれない。

     「障碍」というテーマからいくと、陳腐なポジティブさに見えるタイトルだが、原題は「心配するな、彼は歩いて遠くには行けない」。主人公が名を成す一コママンガの作品からの引用で、車椅子の人間が行方不明になっている様子の絵にこの言葉が添えられている。ブラックジョークであるが、本作はさらにそれを逆手にとったような題にしているということなのだろう。

     

     ちょうど外出を控える社会状況の中で、アルコールへの懸念が指摘されているところでもある。自宅に籠ってそこに酒があるとついつい。実際、スーパーでも酒類はよく売れている(あとなぜかスパゲッティも)。「Zoom飲み会」という言葉も生まれていて、俺も学生時代の友人から誘いが来た。
     無料だと1回で40分しか話せないから、主催者は2部制でセッティングしてくれた。子供が寝た後の22時開始、遠方の友人も参加可という従来の飲み会では困難な融通が新しい。しかし合計80分とは短いじゃないかと思って参加したが、終わったころにはかなり酔っぱらっていた。確かにこれは危険だ。

     

     連休は家族でオンライン飲み会であった。親父と兄家族と俺の3か所接続。兄が用意したのはZoomとは違って時間無制限のサービスなのだが、それだけにZoomより多少使い勝手が悪いし、ちょいちょい昔の国際中継のように画面が止まる。
     こちらは6時開始だったので、初めての宴席らしい宴席といえる。帰省して家族が集まると飯が豪勢になるから必然毎度のごとく飲み過ぎるのだが、自前で用意した大したことのない食い物でもやはり結果は同じだった。まあそんだけ自分で酒を買ってるんだから当たり前だわな。あまり記憶がない。今思い返したら、ぐでんぐでんになっているところに3年半のインド勤務を終える知人から「今から日本に出発する。着いたら2週間隔離(かくり)」と電話があり、郭李(かくり)建夫ですかとか何とかくだらないことを言っていたなそういえば。

     

     完全に話が逸れた。
     俺が父親から受けた最大の教えは、もしかして酒の飲み方かもしれない、と本作を見て思った、という話だった書こうとしたのは。
     父親は晩酌を欠かさない酒好きで、昔は量もかなりのものだったが、オンオフはハッキリしていた。元旦だけ朝酒をやるとか、職場の飲み会で午前様になっても翌朝はいつも通りのルーティンとしているとか。あと酒を無駄にするのも嫌いで、酒をこぼすとか、グラスや猪口に酒がちょびっと残ったまま下げる、といった行為をとにかく嫌う。先日のオンライン宴席でも、父親が過って鍋の汁をこぼしたときに「ビールでなくてよかった」と言っていた。
     これらすべて、酒に対していい加減な態度を取らない、ということなのだろう。
     父の背中ならぬ手つきからそういったことを見て学んでいたからだろう、酒を飲む年齢になったとき、味わわない飲み方がハナから嫌いだった。学生だと悪ふざけで色々と酒を混ぜこぜにして飲ませようするのがいたものだが、そういう汚い飲み方だけでなく、残業中に缶ビールというのも嫌いだった。会社員時代は、ある程度の時間になるとビールを飲みながら仕事をする上司や同僚もいたが、試しにやってみると全く旨く感じず酔いだけ回るのでやらなくなった。最低でもコンビニ弁当とビールとか、飯を食うのに合わせて酒は飲みたい性分である。

     

     というような飲み方のお陰で今のところ依存症にならずに済んでいるのだろうと本作を見て思ったが、主人公が際限なく酒を飲んでいる映像を見せられるとちょっと一杯ひっかけたくなったのであやしいものだ。少々怖くなったので意地でも飲まずに見終えたが。

     

     主人公のキャラハンは、飲酒運転の事故で車いす生活となるも相変わらず酒浸り。ところがふとしたきっかけで一念発起、酒を絶とうとする。断酒会のようなサークルに参加して思いを吐露する中で、酒におぼれた発端である不幸な生い立ちと向き合い、それらを克服していく中で絵の才能を開花させていく。
     演じるのがホアキン・フェニックスで、不幸な生い立ち、孤独、それを隠すための道化的な立ち振る舞い、とくれば嫌でも「ジョーカー」とダブって見えてくる。ケガの直後、素性のわからない北欧美人が現れ、なぜか懇ろになっていく都合のよすぎる展開に、これは完全にこいつの妄想だろうと思ったのもジョーカーのせいだ。どうも妄想ではないようなのだが、だとするとこの都合のよすぎる女性はいったい何者なのか、さっぱりわからないまま映画は終わった。


     彼が名を成していく一コママンガは、ブラックジョークにしてもいささかいかがなものかと思わされるものもあり、劇中でこの謎の彼女からも「あなたの感覚は古い」とたしなめられる一幕もあるのだが、そちらはあまり触れられず、本業の描き方については肩透かしだった。もしかすると作品にはそれこそ「古い」感覚のものが多く、そこを描きすぎると主人公に全く共感できなくなってしまうからだろうか。断酒会の主催者はゲイで、参加者には強烈なミソジニーがいたりと、色々勉強になりそうな人々がいたのであるが。

     

    「DON'T WORRY, HE WON'T GET FAR ON FOOT」2018年アメリカ
    監督:ガス・ヴァン・サント
    出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ


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