行ったのはちょうど半分7つほど

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     知った猝襪療広瓩僚性から電話があって呼び出された。俺の故郷のミニシアターで広報を担当している若人が来るという。「あんた同郷やろ、おいでおいで」。巷間いう「飲んで応援」を一切やっていなかったし、よい機会だろう。

     

     十三駅の横丁を通り抜けていくと、概ねどの店も開いていて、概ねどこの店も狭苦しい店内に酔客が溢れている。中にはカラオケに興じている店もあり、第2波の既定路線ぶりを確認させられた。マスクして歩いているのが実にばかばかしくなる。

     くだんの店も、狭い店内、俺と店員入れて全部で6人。ドアを開け、多少距離を取っているとはいえ、酒を飲みながらデカい声でそれなりの時間話すのだから、まあナンセンスだ。


     その故郷のミニシアターについては、館長を主人公としたドキュメンタリーを見たことがある。名物館長が急逝して、俺と同世代の息子が後を継ぐことになるのだが、自身は東京で会社員をしている上、映画館経営専業では全く食えないので二足の草鞋になる。会社はある程度理解を示してくれているのだけど、有給を使い切ってさらに欠勤をするから給料も減るし、行ったり来たりも大変だし、何よりこの中途半端な具合は自己嫌悪にもなるというものだ。妻が理解を示してくれているからどうにかやれているといった様子である。


     番組の中でははっきりとは示されていなかったが、この館長はそれほど映画マニアというわけでもなさそう。会社員やってて子供が幼いと、仮に好きだとしてもなかなか見に行くのは難しいだろうしで、廃業を選んでも誰も責められん。当人にもその選択はちらつくのであるが、ミニシアターの常、客層が濃いからその熱烈な思いに触れるとそう簡単にやめますわとも言えず。「決めれない…」と自身の優柔不断を嘆く様は、そりゃそうだろうと好感を持ちながら見た。結局決めないし、現在もその状況のままらしい。ま、それでいけてるんならそれでいいんじゃない。


     それで店で紹介された広報担当氏も、生業は別にあってボランティアのような格好で勤めているといい、ここの店の店主が十三の良心・第七藝術劇場の広報をしている縁で、たまに関西の劇場めぐりをする際に店に寄るとの由。

     

     かのメトロという映画館は、子供時代の俺からすると「ようわからんつまらん映画をやっている場所」だった。親がタダ券をもらったとか、そういうときに何の作品かもわからず行って、特にいい印象もなかったくらいの記憶しかない。
     大学生になり、そういう映画館で映画を見る行為は「格好いい」のだという価値観を知ることになる。当初は単なるスノッブ気取りだと思っていたが、ハリウッド以外にいくらでも面白い映画がある事実をやがて知った。都会と田舎の文化格差を痛感させられた出来事でもある。大阪出身の連中は、10代にしてすでにスピルバーグやルーカス以外にもいくらでも才能ある作り手がいることを知っていた。

     こうしてようやくメトロの価値を知ったわけだが、アホの大学生なりに当時の俺が考えたのは、早晩あの劇場は経営が立ち行かなくなるだろうから、俺が金持ちになって買い取って故郷の文化を守ろうという野心だった。誤算は金持ちになっていないことだが、そもそもなろうとしたことが一度もないのでなれるはずがない。

     

     というわけで、この広報氏のような地元の志高い面々によって手弁当で担われているのが正解の未来なのであった。そのような映画に通じた同郷人は、俺にとっては「中村優子と実家が近所」というショボ過ぎる自慢話を前提説明不要で披露できる相手であることを意味する。久々にしゃべったなこのくだらん話。

     

     この日は他に、壮年の常連男性2人組がいたのだが、そのうちの1人、中抜き業最大手の元社員の人と、この広報氏が揃いのTシャツを着ていた。我らの映画館を守ろうぜというような英語メッセージをあしらっていて、コロナで営業中止になった映画館の支援グッズのようなものである。「これ背中が最高やで」と店主が言う通り、背中には関西のミニシアターのロゴがずらり並んでいる。


     「これいいな…。ナナゲイに売っとんすか?」と店主に聞くと、電話して聞いてやるという。ちょうど閉館の微妙な時間帯だったので好意に甘えたのだが、スタッフ各位、明日のイベントの準備でバタついていたらしく、めちゃくちゃ恐縮しながら館の敷居をまたぐことになった。
     先ほどの2人が来ていたのは黒色で、これは注文販売のみの扱い、店頭販売は白だけになるけどいいですかと言われ、全然問題ないっすと平身低頭。サイズはLですかといわれそうですねえと返答したが、見せてもらうと妙にデカい。すんませんMで、とMを購入したのだが、それでも世間のMより少々大きかった。

     こういうミニシアターで、特に社会問題系のシリアスな作品を見に来る層は、なぜか痩身体型の人が多いから、このサイズだと購買層をちょっとハズしてるんじゃないか?と要らぬ心配をした。

     

    そのうち黄ばんだら、こんな具合に染めるつもりの染屋しぐさがすっかり定着。


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