パリは盆地

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     盆の帰省は取りやめた。どうせ在宅仕事に追われているからちょうどいいと強がってみるものの、休み気分は抑えがたい。さりとてすることも思いつかず、手元に招待券があったので大阪市立美術館に行った。バロック・ロココ期のフランス絵画を集めたあんまり面白くない展覧会だった。


     ヴェルサイユ宮殿の建築に携わったシャルル・ル=ブランの作品を初めてまじまじと見れたのはよかったが、王室御用達だけあってか、作品としてはあまり魅力を感じなかった。映画「モリエール」で描かれているいけ好かない宮廷サロンの様子が伺えたのはよかった。あと当時、女性の画家もいたのは勉強になった。

     

     翌8/15、近鉄特急の新車両ひのとりに乗車して、高田本山に行くというプランを思いついたが、座席予約の画面を見ているち、すでに埋まっている〇印が何だか疑わしく見えてしまい気が引けてしまう。飛行機の座席前後で感染、というニュースもあったから余計。大して値段の変わらない「プレミアム」が埋まっているから、また今度、せめて別の用事も抱き合わせ出来るときに乗車しようと自分に言い聞かせて断念。近場の西本願寺に行くことにした。


     暑いから外ではマスクを外し、電車内で装着するようにしているが、車内でも暑いからだろう、あごマスクが何人かいる。世の中の人は耳が頑丈なんだな。俺はすぐ痛くなるので、しないんだったら外せよと思ってしまう。あごマスクは20年以上前にはやった延髄ヘルメットに似ている。大学生のころ、原付に乗っている人間はよくヘルメットを延髄にあてていた。整髪が乱れるのが嫌、というかそもそもヘルメットがダサい、だけどノーヘルで警察に捕まるのは避けたい、という矛盾を解決するため生み出された装着方法だが、科学的には何の意味もない。

     


     こちら西本願寺の本願寺派は母方の宗派になる。他の親戚にも本願寺派の家があったはずだから、理屈は一応立つ。東本願寺に比べると京都駅からの距離は若干遠い。着いたころには汗だくだった。
     8/15に実家以外の場所にいるのは、昔舞台で東京にいたとき以来だ。あのとき靖国のコスプレイヤーたちを見たのは勉強になった。こちら西本願寺は平穏そのものだが、いちおう盆の行事はいくつか設定されていた。

     

     ちょうど住職が法話を語っていた。生まれさせていただいて、生きさせていただいて、慈悲の心に触れさせていただいて、などなど、させていただくにもほどがあるさしすせ過剰で話がちっとも頭に入らなかった。「させていただき」をあちこちで耳にするようになってから十数年だが、仏教のような格式高いはずの現場で、こんな新マナーのような言葉遣いを聞くと軽薄さが際立つ。

     

     法話が終わると焼香台が用意された。人々が作る列に俺も並んだ。母方祖母や説明のややこしい親戚のために俺も祈るとしよう。ここではじめて数珠を持ってきていないことに気づいた。墓ではなく寺に来ているので、そもそも数珠を持参すべしという感覚すらなく、人のさしすせそを云々している場合ではなかった。

     

     ところで境内のどこかでは、「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」の上映をしているという。集会場のような場所を想像していたら、自販機を置いた休憩所の片隅にある家庭用テレビで流していただけだった。ちょうど今七芸でやっている劇場公開のドキュメンタリーなのに扱いが酷い。工事中で本尊が壁の向こうに御隠れあそばし、お堂がまるで映画館のようだったから、この壁に投影したらいいんじゃないかと罰当たりなことを考えたり。

     

     向かいには龍谷大の博物館がある。西本願寺=龍谷大=大谷探検隊であるが、お隣東本願寺は大谷派という宗派で大谷大学を持っているから何かこんがらがる。できたのは2011年とのことで、新しいモダンな建物である。


     シルクロードの仏教というようなテーマで、インドの仏像なんかを中心にした展示だった。仏像にはあまり興味がない方だが、ガンダーラ美術の仏像は見ていて楽しい。ソグド文字の古文書なんかもわくわくするところがあるが、シルクロードを専攻するとこういうのを読めるようにならないといけないので、それを想像するとゾッとする。まあフランス絵画より断然楽しんだ。人も少なく大変すばらしい。

     

     昼飯は盆なので、法事の飯のようなランチを食べた。試食品くらいの少量が何種類も盛り付けられた普段は絶対注文しないようなあの手のやつ。暑くて食欲が減退しているからちょうどいい。無論、全然おいしいと思わなかったが法事の飯なのでそういうものである。


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