【La 美麗島粗誌】(2)高雄その1_鉄道・文創

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     ホテルにチェックインしてまずは汗をぬぐった。気温は今時の大阪と同じか1,2度低いかもしれないくらいだが、湿度が高い印象。おかげですぐべたべたになる。
     ホテルのWi-Fiでようやくネットがつながったのはいいが、携帯がグローバル設定にならない。調べたら機種が古くて海外通話サービスが終了していることがわかった。そういえば、去年のインドでも同じだったと今さら思い出した。あのときは案内人がいたので何の不都合も感じなかったからすっかり忘れていた。
     Wi-Fiは、駅等、公共施設には配備されているが事前に登録しないと外国人は使えない、とこれまた今更知った。泥縄的に登録を試みたがうまくいかなかった。どうやら今回はホテルWi-Fiだけが頼みの綱で、電話は諦めるしかない。ネットはともかく、一人で観光に来ていて電話など必要かという疑問は当然だが、実は電話を掛けたい相手が一人だけいるのだった。


     とりあえず、時間の許すうち簡単に観光でもしよう。俺はまず美麗島駅の服務中心(サービスセンター)でICカードを入手した。台北では「悠々卡」、高雄では「一卡通」というイコカや「はやかけん」のようなカードが売られている。日本と違って少し安くもなるから必須である。ピッと改札をくぐってMRTで一駅移動した。料金は60〜70円程度。

     ちなみに桃園〜左營の高鐵は4千何百円。大陸よりは高いが、それでもかなり安い(博多〜鹿児島中央の新幹線の半額以下)。というか東アジアでは日本が突出して交通費が高い。物価の差異を考えても。一卡通に1000元チャージしたが、1週間の旅行で丁度空になるくらいだった。日本だと3000〜4000円のチャージなんか気づいたらなくなっている。

    上が高雄、下が瀋陽。転落防止柵が全面ガラス張りの壁なところと、テレビモニターに広告とあと何分で到着するかのカウントダウンが表示されている点が共通。

     

     高雄の地下鉄は、駅の構造や表示システムが大連や瀋陽の地下鉄と同じだ。車内が全体にプラスチックな車両も同じだった。違うのは、ドアが開くなり乗ろうとする人がいないのと、席取りに必死さがないこと。大陸では空いた瞬間誰かが座るので、「絶対に勝つ!」という悲壮感がないと椅子に座れなかった。こちらは日本と同じで空いていても立ち続ける人がいるくらいだ。

     一駅目の高雄駅で降りた。台鐵(台湾鉄道)高雄駅との結節点だ。台鐵は日本のJRを想像すればよい。この高雄の玄関口の隣に、旧駅舎がある。1941年という建築時期を体現する帝冠様式だが、小ぶりなので中国で見た威容や愛知県庁の異様と違って、かわいらしい印象を受ける。2002年まで現役だったというから驚く。すぐ横を高架道路が走っているのだが、この道路建設に伴い元あった位置から82m移動した、とこれは「台湾 日本統治時代の遺産を歩く」(片倉佳史)からの丸写し。

    駅の伝言板を久しぶりに見た。落書きするなら「XYZ」と書く世代。


     中に入ると、新駅舎の完成モデルが展示されていた。まだ15,6年しか使われていない現駅舎は改装予定で駅の周りは工事の囲いだらけだ。前掲の本によると仮駅舎とのことなのだが、それにしては昭和のJRの駅のような雰囲気がふんだんに漂う作りである。


     再びMRTで南下し、美麗島でオレンジのラインに乗り換え、終点の西子灣で降りた。名前の通り海辺の駅で、夕暮れ時にいちゃつくカップルもいる。中にはうっとり手を取り合っている男子同士もいて、さすがアジア初の同性婚合法化に踏み出した国といったところ(台湾は国という表記が微妙なところはあるが、ただの個人の旅行記につき面倒くさいので国と書く)。


     ここは港町として整備された高雄のかつての玄関口だ。広場には当時の線路がたくさん残っていて正直邪魔だと思うが、何となく雰囲気があるので歓迎されている様子。かつての玄関口につき、ここにも旧高雄駅がある。事務机なんかもそのまま置いてあってわかる人にはたまらなく楽しそう。当時浜線と呼ばれた地名がそのまま当て字で残って現在は哈瑪星という。

     線路の広場から海辺に進むと、古い倉庫その他が残っている。先ほどの駅舎と違って史跡というより観光マーケティング的リノベーションが施されているが、当地ではこういうのを「文創」という。日本でも古い倉庫街を改装して若人呼び寄せエリア化している地区があるが、あれと同じようなものだ。台湾の場合、島中のあちこちに古い建物が残っているのだが(日本同様地震が多いはずなのになぜだろう)、それらを解体するのではなく、いかに活かすかという試みが国を挙げて行われている。全国津々浦々「文創」だらけだ。
     とにかくここは旧満州国以上に当時の建物が残る島であり、当然旅の目的でもある。


     


    【La 美麗島粗誌】(1)解題と出発

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       なかなか飛び立たないと思っていたが、到着は定刻だった。eチケットには「フライト時間3時間」とあるが実質2時間だった。近いものだ。値段も3万何千円。ホテル代も入れると、東京に行くより気軽ともいえる。
       到着ロビーまでの長い通路をダラダラ歩いていると、隣の夫婦が「画数多いな・・・」と苦笑している。独自の簡素化を進めた大陸(中華人民共和国)と異なり、ここでは変わらず繁体字を使い続けている。このため大陸よりは遥かに違和感なく表示や広告の意味をくみ取れる。ただし、うっかり忘れてしまうが、日本社会も日本独自の簡略漢字を使って久しい。このため、今度は逆に漢字がやたらと難しく感じてしまうというわけだ。

       例えば当地は「臺灣」と書く。「臺」はどうやら台と書くことの方が当地でも多いようなのだが、「灣」は湾とは書かない。「氣志團」だって、わざわざそういう表記を選ぶ必要はない。この島では普通に「氣志團」となる。目に入る広告がなんとなくヤンキー臭く見えてしまったのは彼らのせいだろう。学→學にしろ医→醫、体→體、対→對にしろ、これまでに日本社会のどこかで見たことがあるため読める。だが初めて知ったのは塩→鹽だった。ミョウバンや重曹ならともかく、水とならぶ身近な物質にしては難し過ぎやしまいか。


       桃園空港に「高鐵」こと高速鉄道の駅があるのかと勘違いしていたが、捷運(地下鉄)で5駅ほど先の「高鐵桃園」まで行かないといけない。切符売場で係のおばちゃんから「台北行き?」とカタコト英語で聞かれ、「いいや、高鐵」とカタコト英語で答えた。英語の浸透は大陸(俺の場合、東北地方しか知らないが)より格段上で、年寄りも気軽に英語を使ってくることを考えると、日本や韓国よりも上をいく。

      高鐵桃園駅


       駅に着き、終点「左營」までの切符を買った。「Zuoying」とアルファベット表記が出ていたのでそう伝えたが、まったく通じなかった。この後、何度か同じようなことに挑戦したが、伝わった試しはなかった。中国語(北京語)は大学で1年だけ勉強して、途中で投げ出したと勘違いしていたが単位は一応取っていた。この体たらくでどうやって取ったのだろう。
       その上、出発時間を間違って購入してしまった。時差が1時間遅いのを忘れていたせいだ。窓口に並び直して直近の列車に変更を申し出ると「指定席は埋まってます」と言うので自由席券にしてもらった。指定分が返金される。こういうちょっとしたやり取りが日本と同じ常識で通用するところは、海外に不慣れな人間にとっては大変に楽だ。ちなみに最初に時間間違いの切符を買ったとき、要るのかと思ってパスポートを出したら「んなもんいらねーよ」とばかりに突き返された(大陸では必須)。

       

       ホームは「月台」という。地名みたいな名称なので、一瞬「月台行き」のホームかと思ってしまった。それをいうと、台湾中のすべての鉄路は月台に通じる勘定になってしまう。大学生のとき、「月極駐車場」は「月極」という企業がやっていると思っていた友人がいたのを思い出した。全国にどれだけ土地を所有しているんだという(月決と書く地域もある)話だ。
       高速鉄道は、日本の新幹線を輸出したので本邦でも有名だ。車体だけでなくシステム丸ごと輸出したと聞くが、確かに自由席は端っこに追いやられている(ただし1〜3号車ではなく10〜12号車だが)。「自由座」と書かれた乗り口に並んだ。劇団の名前のようだ。というか大学のころそういう名前の劇団があった。やがて車体が現れた。色は違うが確かに新幹線である。当たり前だが中も同じ。ただしトランクケース置き場と、優先席(博愛座)がある。

      左營駅にて

       

       新幹線に多少興奮したが、いざ乗ってみると旅情が全く盛り上がらないのだった。うっすら鉄の俺としては、やはり国内では乗れない車両に乗ってこその旅だとわかった。輸出に熱心な人には申し訳ない感想だ。まあ、政府の鼻息とは裏腹に、残念ながら海外売込は割と連敗なのだが。


       車窓からはだだっぴろい平地が見える。ここで地図を見てみよう。今回訪れることになるのは、これら台湾の代表的都市で、いずれも西側にある。高速鉄道はこれらを結んでいるのだが(正確には違うが後述)、西側は割に平だ。台湾には高い山などなさそうなイメージがあるかもしれないが、戦前は狷本最高峰瓩世辰真傾盪海あるように、割と急峻な地域もある。「セデック・バレ」でも確認できるこれら山がちな地域はいずれも東側。列車からは山らしきものはろくに見えない。

        


       想像しやすいように似たような大きさの九州と重ねてみると、台北は北九州、桃園が博多、台中が熊本くらいで、高雄は鹿児島くらいになる。左營は高雄の一区域になる。すっかり景色が工場だらけになり、次に日本でいうところの公団住宅だらけのようになったころ、到着した。この公団住宅街的なエリアは、「眷村」だろうと早速本で読んだ知識を思い起こしたのだが、本の話はおいおい書いていこう。
       左營からは、捷運、別名MRTに乗り換える。要するに地下鉄だが、台北とここ高雄にだけ地下鉄がある。左營から6つめが「高雄車站」(車站は変換が面倒なので以下「駅」と表記)、7つめがMRTの2線が交わる要衝の「美麗島」だ。この美麗島のすぐ近くのホテルを予約したので、まずはそちらに向かう。

       このステンドグラス調の駅構内・穹頂大廳は、旅行ガイド的には高雄の一つの象徴のような扱いとなっていて、旅行客があちこちで写真を撮っている。なぜかピアノも置いてある。駅の名前がドレミならぬミレドだからだろうか。美麗島とは、台湾の別称でもある。種子島に鉄砲が伝来したころ、この島を猗見瓩靴織櫂襯肇ル人が「Formosa(=美しい)」と感嘆したことに由来している。このため駅名のアルファベット表示も「Meili dao」ではなく「Formosa boulevard(=大通)」となっている。その台湾の雅称がなぜ高雄の一駅に採用されているかというと、かつてここ高雄で起こった「美麗島事件」という弾圧を記念して、ということらしい(Wiki情報)。古い言い伝えと生々しい現代史が交錯していてややこしい。

       

       話を戻すと、ドレミの島ならぬミレドの島につき、本連載のタイトルをラミレドソシとした。都合のいいことに「島」は女性名詞なので冠詞はLaで正しい。ファがないが、これは台湾旅行のファなしである。


      十分 Shifen

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