帰省の読書

0

     前日、友人と忘年会で肉をたらふく食べたら、帰宅して腹を下した。悲しい胃腸事情だ。おかげで早起きしてノンビリ座って帰省するつもりが、出遅れて混み合う特急で立ったまま国境の長いトンネルを超えると雪国であったの羽目になった。


     肉に懲りたわけではないが、直立姿勢の気を紛らわす旅のお供はこちら。

     発売と同時くらいに買っていて、期待通りっぽい印象だったので、こういう事態のためにとっておいた。夢中で読んでいると立っているのも大して気にならない。

     

     密漁の実態に迫った内容で、必然的に暴力団も絡んでくる。というわけでこのおどろおどろしいタイトルだ。こういうヤバい世界を取材したノンフィクションは、しばしば書き手に「裏社会に通じている」と誇示するかのような肩肘張った姿勢が垣間見えてそれがどうも苦手なのだが(似たような理由でヤクザ映画やヤンキー漫画も苦手)、この著者の場合、どこかちょっととぼけたような善良な感じが惹き込ませる。


     その一方で、このテーマが取材できる時点で当たり前なのだが、かなりの人脈と機動力に圧倒されるわけだが、突撃取材一辺倒ではなく、歴史研究的なアプローチの章もあって、こちらはちょっと予想外だった。特に北方領土近海の漁の話は、領土問題の地であるがゆえに領海って何?という前提を揺さぶる問いが横たわっていて、なるほど勉強不足だったなあ知らんことはいくらでもあるなあと多少恥じ入りながら面白く読んだ。頭の片隅で、先日見た昆布漁の写真展を思い出しつつ。

     

     本書に興味を持ったのは、著者自身がかなり以前に自身のツイッターで、ウナギ界隈のヤバさをほのめかしていたのをたまたま見たからだった。はてそんな恐ろしい実状なのだろうと勝手に妄想を膨らませていた分、なんとなくウナギの章に拍子抜けしてしまった感もあるが、要するにこれ、書けないことがそれだけ多いということなんだろう。それを想像するとゾッとる。

     

     「食べてるあなたも共犯者」と帯の惹句にはあるが、これはまあまさにその通り。非合法なマーケットの存在は、それを買う一般消費者がいるから成立するわけで、だったら買うのをやめときましょかという判断は考慮されてしかるべきだろう。無論、合法的な魚介もちゃんとあるし、それを生業にしている人々がいる以上、簡単な話ではないが、高級魚介を無邪気に喜ぶ態度は少なくとも慎むべきとは思った。映画「ブラッド・ダイヤモンド」は、まさしくそんな話だったっけか。

     

     そこへいくと南極海の鯨はもひとつわけのわからん話だ。市場規模と政府の強気がアンバランスな点象牙に似ているが、象牙と違ってナショナリズムが沸騰しやすいのは、食い物だからか。美味いやつは非常に美味いのだけど、美味いのが提供できる店は限られているから沸騰する人の多くは美味いのを食ったことがないと推計できる。話がわけのわからん自慢に逸れてきたのでこの辺で。


    年の瀬2

    0

       知人から夜に電話があり、そのまま夜中の3時くらいまで長電話だった。年齢上立場上、鬱屈しているものが鯨肉くらい在庫が貯まっているからだろう。そういう俺も個人事業主につき気の置けない間柄と暖簾をくぐって・・・、なんてことがまったくないので遠隔忘年会だなと内心思いながら、電話に応答しつつウイスキーを舐めていた。

       欠員が出たのに補充がない、と今時どこの企業でもありそうな愚痴をこぼすので、広河隆一でも採ったらどうかと助言した。少なくとも写真は巧いんじゃないか?(そうでもなかったりして)。すると翌日「茨城県庁がセクハラ処分の官僚を採用」というニュースが流れていて、おいおいホントにやってるやつがいるのかよ。

       

       さて話の流れで、本やサイトの選び方という議題になった。インターネットサイトが玉ゴミ混交なのはその本質上必然のことなのだが、書籍の世界でも同様の事情となっており、見分ける姿勢、いわゆるリテラシー的なものが重要になっている。大学1回生だと、検索結果のトップに出てきたものを何の疑いもなく引用してレポートを書いたりするものなので、引用可能なサイト、そうでないサイトの説明から始めなければならない。

       こういう事態に年寄りが呆れるのは勝手だが、物心ついたときからネット上にサイトが溢れている環境でまっさらなまま育っているのだから、きちんと教えるのがおっさんの責務である。そうでないとまとめサイトから引用してるくせに大口叩いている破廉恥な大人と、それを回収しない破廉恥な出版社を横行させるだけである。


       個人のブログ、まとめサイト、フリー素材の写真だらけで「いかがでしょうか」で終わる記事を引用するなとか、そんなことを教える。最近、ネット素材のテキトーな張り合わせで出来ている記事の末尾に「いかがでしょうか」がないケースも出てきているのだが、あれはよくない。この記事はせいぜい暇つぶし用ですよと明示する意味で、最後に「いかがでしょうか」と必ず書いてほしいものだ。

       

       書籍についてはもう少し難しい。青林堂の本だと表紙がいかにもあやしげだから、あれはあれで良心的といえるかもしれない。名のある出版社が酷い本を出しているのは、話題の幻冬舎しかり講談社しかり。まあ本がすべて良心的ではないというのは昔からあることで今に始まったわけではないが、まず数の問題がある。書店の「歴史」「政治」「海外事情」といったコーナーは、昨今、アレ界隈の書籍で汚染が激しい。いよいよ資格試験の分野にも浸食してきたという話は以前に書いた

       

       脱線するが、ちょっと前に稲田朋美の「日本は聖徳太子のころから民主主義」という衆院での演説が話題になったが、かの試験の問題文に使われていたのも同じような趣旨の文章だった。この界隈は、狭いサークル内で互いに受け売りし合っているもので(だから労せずどんどん出せるという強みがある)、その一端が衆院という結構な表舞台に顔覗かせた格好であり、別に彼女の持論というわけではない。なので発言の是非を云々するよりも、このサークル内受け売りもたれあい構造を解明していく方が重要なのだが、幻冬舎の件でそれが続々と詳らかになっているのは素晴らしいことだ。

       

       話を戻すと、向学心旺盛かつまっさらな若人(年寄りもそうだが)に見分けるリテラシーを身につけろというのも無責任な話だ。書店の側も売るならせめてコーナーは分けてほしいものだ。どうせ購買層は共通なのだから、ジャンルに分けられているよりも買いやすい。分類名が「アレ」くらいしか思いつかないのだが、何か適当な名称はあるだろうか。「お目覚め」だろうか。そしてその書棚は、ツタヤのエロビデオコーナーのようにカーテンの奥に設置するといい。隣国を罵倒したくてしょうがないという隠微な欲求を持つ人にとっては、より興奮する演出ともなるだろう。知人曰くは「そのうちマトモな本の方がカーテンの奥においやられそうだが」とのことだが。

       

       ただし新書の場合は、新書という規格に含まれる分、単行本のように単独には扱いにくい。というか、書店の対応に頼るばかりでなく、こちらも爛螢謄薀掘辞瓩鮗けなければならない。結局は出典の明示という論文レポートの作法にたどり着く。ただしこれも万能ではない。ライトな読者層を想定している場合には省くこともあるからで、これはこれで一部で議論になっている。

       

       学生に対しては「本を読んでいない」という前提で説明するので、まずは新書・選書あたりから入ってはどうかという助言になる。その際に一定程度信頼のおける新書と、玉石混交度合の高い新書、ほとんど泡沫、と出版社ごとの概要を示したことはあるが、平均値の話でしかないのも確か。あとは「帯に腕組みした著者の写真があるやつはとりあえずやめとけ」と言ったら、後ろで見ていた教授だけ爆笑していた。これだとアレ界隈ではない人も一部含まれるが、まあいい。

       

       結局は「薦める」に行き着くのかもね。自分だって「これを読め」と周囲の薦めの積み重ねがあったものだ。年末なので張り切って図書館で色々借りたが、電車移動が多いときほど読み進むといういつもの矛盾にぶつかっている。

       とりあえず↓これ

      から取り掛かっているのだが、上下巻分のボリュームだ。どうやら新しい才能が続出してるっぽい雰囲気の韓国の小説も借りてきたけど、たどり着けるのやら。


      年の瀬1

      0

         外形上の仕事納めで、某私大へ。年に2度ほど依頼がある単発の講義で、たまにしかないので毎度担当営業の人が同行してくる。
        この若い男性とは、ことさら気が合うわけでもなく、ことさら合わないわけでもなく、つまり仕事上はスムーズに話が進む相手であるが、それ以上の付き合いや会話は特にないという間柄。なので毎回、講義前後の事務作業の打合せとか、仕事の延長線上の雑談くらいしか話したことがなかった。

         

         ところが、ちょっと前に、彼の同僚たちと話す機会があったときに、どうやらロックバンドをやっているらしいと聞いた。「詳しくは知らないが、パンクバンドで絶叫しているらしいですよ」。これは当人が「ロックバンド」にはちょっとそぐわない非常に真面目臭い、カタブツ的な印象さえある外見をしているせいだろう。反動で過剰なイメージが独り歩きしているに違いない。それにしても気になってくる。

         

         というわけで、この日、ちょっとした空き時間の間に頃合いを見計らって尋ねことにした。
         「あの・・・、ちょっと小耳にはさんだんですけど、バンドやってるんすか?」
         「はい」
         独り歩きしている噂のせいだろう。俺の尋ね方はやや慎重さ多めだったのだが、彼の返答は実にあっさりしたものだった。「大阪市内に住んでるんですか?」「はい」くらいの軽い調子。
         「どんな感じの?」
         「どう、ですかねえ、まあ、普通の感じの・・・」
         「ハードコアパンクなんじゃないかと噂している人がいたんですが」
         「まあ、ギターのやつがメタルとか好きなんで、リフがそっち系の感じはありますが笑」
         本人はもうちょっと軽めのものが好きっぽい印象で、ついでに担当はベース。ステージの中央で髪を逆立て中指を立てながら四文字英単語を絶叫しているわけでもなんでもなかった。やはり噂は噂。若干の真実を含みつつ、全体的には相違が多いのだった。

         

         それで彼と、帰りの電車もやけに話し込んでしまった。ライブの頻度や全体の技量は我らより断然上という印象なので、色々質問しつつ、今年の持論の「台湾でライブやるべし」を語りつつ。まあバンドに限らず趣味は社会の潤滑油だよね、とまとめようとしてふと考え込んだ。それは果たして本当だろうか。

         

         例えば音楽を「聴く」だけの趣味だったら、ここまで話は盛り上がらなさそう。そもそも細分化されたジャンルごとに趣味に合う/合わないがある上、年齢にもしばしば相関するから、年が離れている分あまり重なるところがなさそう。これは読書とか映画とかにも同じことがいえる。

         

         じゃあ「やる」趣味の場合はというと、草野球とかフットサルの場合、特に仕事関係の間柄だと「試合しようよ」という話になったら面倒くさいから黙っておこうという深謀が働きそうな気もする。やってないので知らないが。知ってる世界でいえば、演劇だと変な警戒心が働いて黙るというのはよくある。「映画好き」と名乗る片方がタイタニックしか知らなくて、片方が小津安全部見た人だと、互いが互いに舌打ちをする。「タイタニックしか知らなくて映画好き自称すんなよ」「うるせえよスノッブエリート野郎」といった具合。これと似たような状況を避けたがる警戒心、といえば少しは伝わるだろうか。この場合、必ずしも作品の話ではなく、立場のある誰それさんを知っている知らないというケースの方が多いかも。いずれにせよ面倒臭いので適当に誤魔化してやり過ごすことも珍しくないものだった。
         そう考えると、こうしてリラックスして話せるのは音楽の特性だろうか。などと考えつつ年の瀬。


        【やっつけ映画評】共犯者たち

        0

           「共犯者たち」。確かにそんな内容なんだけど、ちょっと格好良過ぎやしないすかね。虎の意を受けて威を借るスネ夫たちがこれでもかと登場しては、総じて取材から逃げ回る様子が延々と繰り返される杉田某大会状態。こんな連中に「共犯者」なんて、ちょっと格好よさげな表現は勿体ない。「逃げ回る恥知らずたち」くらいがちょうどじゃないかしら。

           

           李明博〜朴槿恵政権がマスコミ対策に躍起になった事実は、彼女が失脚した後、日本でも知られる話となった。政権に批判的と目される芸能人のリストが作られ、レギュラー番組を失った芸人がいたり、「1987」もそんな状況下で神経尖らせながら制作されたと聞く。
           本丸は当然報道部門で、主要放送局では閣僚の不正を暴いたり政策の問題点を追及するような部門の閉鎖、番組の打切り、政権を批判したキャスターの降板等々が相次ぐことになる。NHKに限られる日本と異なり、いずれのテレビ局も、公益法人や公社が株主だったりで公共放送の性格を持つ分、政治が介入しやすい仕組みになっていることが背景としては大きいようだ。極端な例では李明博の側近だった人が社長に就任しているケースも紹介されているから「芸能人リスト」よりも介入の仕方が結構あからさま。いわゆる「息のかかった人」を経営陣なり株主の公益法人の理事に送り込むことで、矜持のある社員を制作部門、報道部門から追い出し、骨抜きにしていく。

           

           だけど本当に原因はトップの人事だけなのかしらと疑問には思った。
           本作で示される風景は、日本でも既視感がたっぷりだ。経営陣に息のかかった人間を送り込むことで、組織は政権の不正を追及する記者を追い出し、政権に批判的なニュースはひたすらネグって天気等のあたりさわりのなさそうな話題にことさらに時間を費やす。全部NHKで見たよ。こうなっている最大の理由は、官邸周辺からの圧力があり、その空気を先回りしてくみ取って、命じられていないことまでせっせと精を出すそれこそ忖度茶坊主幹部がいるからであるが、「一部の不心得者が大多数の良識ある職員の口を封じている」というわけでは決してない。現場にも現状を肯定している人が少なからずいるからこその実態のはずだ(職員個人の政治信条が問題なのではない。与党支持だろうと野党支持だろうと、ニュースをネグるのは別次元のことだ)。

           

           理由はいくつか考えられて、一つは田崎のスシローさんみたいに、政局情報のキャッチと禅問答の解読しかやったことがないので政権の振舞いが常軌を逸してきても同じ姿勢しかとれないケース。いわゆる正常化バイアスのようなものが働いて、異常事態なのに従来通用していた枠内でしか物事を把握できないので結果、思考回路が御用記者風味になってしまう。ただ、韓国の場合は弾圧と民主化の歴史が激しかった歴史を持つ分、この手の人は少ないかもしれない。

           

           もう一つは「ペンタゴン・ペーパーズ」でも描かれていたが、権力者にくっついているうちに同化してしまったり信仰のような感情を抱いたりしてしまうケース。ブラッドリーのような優秀な記者でも、ケネディという人気者の政治家にくっついていると色んなものを見らんふりしてしまうのだから、いくらでもこうなることは考えられる。そりゃまあケネディみたいな人気者ならわからんでもないが、李明博や朴槿恵ってそんなカリスマ性あったっけ?という疑問もつきまとうが、強引なやり方を好む政治家と記者は、通底する部分がありがちだと思う。朝の話を昼のニュースに、という高速自転車操業を日々繰り返す仕事な上、ある程度物事に白黒つけないと商品にならないから、必然せっかちで強引になる。そうすると法令に四角四面かつ何事も慎重な公務員が無能に見えてきて、彼らをこき下ろす政治家がとても有能で正しく見えてくる。そこにシンプルな正義感が加わると、いっちょあがりである。こちらは韓国にもいくらでもいそうな気はするけど、どうなんだろう。

           

           映画の中に、そういう人も一部出てきはするが、背景的にちらっと映っているだけでインタビュー等の積極的な形では登場しない。このため上部構造×下部構造の対立のような図式しか示されないが、果たしてそれが正確な姿なんだろうか? ま、長々書いた割には、こちらは脇の話の、ただのふとした疑問。

           

           政権側からの介入によって現場が変質していく様子を見ていると、報道のあるべき姿を改めて考えさせられてしまう。こちらが本題。
           


          映画の感想:シン・ゴジラ

          0
             テレビでやっていた話題作をようやく見た。なかなか面白く見たけど、ネットの書き込みを見ると酷評してる意見もかなりあって、へえ〜とこちらも興味を持った。怪獣映画の定石をなぞってないことから来る不満だろうか。ランボーみたいなものかね。2,3を見て派手な爆発を期待して1を見たら全然違う妙に重いドラマだった、みたいな。あんまり詳しいジャンルではないのでよくわからん。

             1作目をある程度トレースしている内容だと思う。天災と人災が混じったような形でわけのわからん巨大生物が首都をぶっ壊して、政府が右往左往する中で一般庶民が割を食う。そして、見てるこっちはろくに理解できない化学(薬学)によって解決に導く。大枠は大体一緒で、何やら社会的なメッセージが込められてそうなところも同様。災害をドキュメンタリー的に描くあたりも共通で、人間ドラマ的な部分はちっともない。日本映画でよくやらかしがちな「今そんなことしてる場合ちゃうやろ」という登場人物同士のじゃれ合いや、メロドラマがなかったのは個人的には大変によかった。
             
             問題は「ほんとっぽさ」という説得力になる。「君の名は。」でも書いたが、東日本大震災のせいで、こういう巨大な災厄はいくらでもあり得るという感覚が身についてしまったため、巨大生物が暴れまわるという事態も、そんなに夢物語には感じなくなっている。制作者自体もああいうにわかに信じがたい事態が推移していく様子をリアルタイムで見ているから、本当っぽく作る方法論は2011年以前の業界よりは断然出来上がってしまっているとはいえそうだ。

             だとすると、テレビニュースの雰囲気なんかはかなりほんとっぽさがあったが、一庶民の「もうだめだ」という絶望的な恐怖(震度5以上の地震になると「あ、これ死ぬかも」という諦めと恐怖みたいなの感じますやん。ああいうの)は希薄だった。震災という現実があっただけに、デリケートで描きにくいようには思うが、思い切り政府側からの視点で描いている分、国民の描き方が薄いとなまじ社会的メッセージを漂わせている分、どうしても気持ち悪いことにはなるよね。といっても一般庶民A男とB子のサイドストーリーは要らないので、なかなか難しいところではあるだろうが。

             首相以下、政府の対応が話の中心なので、こういうのはテキトーに誤魔化すと途端に安っぽく嘘っぽくなるので大変だ。本作の場合はかなりホントっぽく作っていると思うが、今の政権のお陰で、こういうのはホントっぽく作ると嘘くさくなるジレンマに陥っている。

             「上陸することはあり得ない」と記者会見で断言してすぐ上陸して歩き出す場面なんか、実際だったら「あり得ない」には「あり得る」の意味も含まれるとかなんとか国語閣議決定がなされるのだろうかとか、「私がいつそんなこと言いましたか」とメメント記憶喪失状態になるのだろうかとか、余計なことを妄想してしまう。本作に限らず「半島を出よ」なんかも今から見るととても牧歌的に見えてしまうくらい、シミュレーション型のフィクションは現在、作るのが大変に難しくなっている。由々しき事態だ。政治はせめてホントっぽくやってくれよと切に願う。

             解決策の科学的な部分も、意味はようわからんが、なんやらホントっぽい具合に進行していく点よかったと思うが、そういう中にあって嫌でも悪目立ちするのが石原さとみが演じる米国高官の役だった。他がある程度ちゃんと作られているので、これはいったいどういうことなのだろうと著しく困惑させられた。なんだこの小劇場でよく見る風の安いキャラは?ってことです。

             あれこれとリアリティを担保するための材料をそろえ、吟味するセンスを持っていても、日系外国人、あるいはある種の女性に対してだけ突出した現状認識のゆがみがあるということなんすかね。ないしはバイリンガルへの強烈な怨念。あるいは俺が他の要素を買い被りすぎ? それとも、何かの意図を持ったあえての演出なんだろうか。

             だとすると何だろう。「こんな日米間を取り持ってくれる米政府の人間なんて実際はいませんよ」ということを、あえてのチープなキャラ設定に込めたのだろうか。それだと何となく腑に落ちる。そう考えると、主人公も、主人公というだけでなんとなく受容してしまっていたが、冷静に考えるとあんなやついねえだろ、という気はしてくる。官僚かと思って見てたら政治家だったし。ああいう風味のペテン師ならいるだろうけど(進次郎とか)。だとすれば、これもまた「こんな都合のいいリーダーいませんよ」というメッセージなのかもしれない。なるほど、スパイスがきいていていい映画じゃないか。

            2016年日本
            監督:樋口真嗣
            出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ


            calendar

            S M T W T F S
                 12
            3456789
            10111213141516
            17181920212223
            2425262728  
            << February 2019 >>

            selected entries

            categories

            archives

            recent comment

            • お国自慢
              森下
            • お国自慢
              N.Matsuura
            • 「続く」の続き
              KJ
            • 【映画評】キューブ、キューブ2
              森下
            • 【映画評】キューブ、キューブ2
              名無し
            • W杯与太話4.精神力ということについて
              森下
            • W杯与太話4.精神力ということについて
            • 俺ら河内スタジオ入り
              森下
            • 俺ら河内スタジオ入り
              田中新垣悟
            • 本の宣伝

            recent trackback

            recommend

            links

            profile

            search this site.

            others

            mobile

            qrcode

            powered

            無料ブログ作成サービス JUGEM