Thunderbird行ったり来たり(余話)

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    金沢文芸館

     

     話はさかのぼる。我が先祖は日露戦争に従軍している。地域柄、第九師団に所属しての出征だったため、こうして石川県立図書館所蔵の古い書籍に関心を示すわけである。そこにしかない蔵書を見ているときの自己満足贅沢感はなかなかのものだ。むろん国会図書館には総じて置いてあるが、あの繁雑な場所で見なくて済んでいるという点で余計に贅沢気分になる。


     刺激を受けてにわかに久々に色々と調べたくなり、第九師団以外に気になっている別の戦争関連の文献を探し出した。国会図書館の所蔵はすぐに確認できるのだけど、関西周辺の図書館に置いてないものかを検索するわけだ。今時は、横断検索サイトが充実しているので手あたり次第に調べるのが多少なりとも楽ちんになっている。

     

     大阪の場合、市立、府立ともよその地域に比べると蔵書は充実しているという実感が、これまでの経験ではある。かつて都会だったころの貯金だろう。いつまでもつか危ぶまれるところも多分にあるが、今回も求めた資料が1つ府立にあった。貸出可だったので久しぶりに訪れた。

     

     府立(県立)と市立の図書館の役割分担として、前者はミニ国会図書館的なアーカイブ機能をより担うべきだと思っているし、大抵そういう側面を背負っていることが多い。なので新刊の小説等は要らないんじゃないとも思う。そういう多くの人が読みたがる本の扱いは、府立が立地している東大阪市立図書館が担う仕事だろ、と思ったのだけど、よくよく確認したら東大阪市立図書館は3館と分室にとどまり、人口50万もいる自治体の割に少々頼りないのであった。

     逆に言えば「頼りない」と感じるのは、自身に縁が深い北摂の自治体はいずれも市立図書館の数が多めだからで、これが今時の基準かと勝手に思い込んでいたせいである。改めて確認すると関西の自治体で4つも5つも図書館を抱えている方が珍しいのだった。数が多いというのは細切れに分けているだけでもあるのだが、その場所にいかなければ利用できない以上、蔵書数はともかく場所自体は多い方が便利なのは間違いない。というわけで、府立図書館は東大阪市のこの辺の住民たちにとっては市立図書館的位置づけになる。


     先日ある学生と図書館の蔵書の話になり、その学生は「人が集まるのだから新刊本はどんどん置くべきで、そのせいで専門書等の借り手の少ない本が所蔵できなくなるデメリットがあるにしても、人が来ないと話にならない」という。やれやれ。当人は博物館系の仕事に就きたいというので、「その理屈でいくと常にツタンカーメン展やガンダム展が優先になるよ」というと、あれ?確かに…と首をかしげていた。人間、自分の好きなものに対してはキリッとした爐錣りやすい疝屈を嫌うものなんだな。

     

     話が逸れた。毎度多少なりとも期待に応えてくれている大阪の図書館に今回は蔵書が1点しかないので、周辺の府県を検索した。結果、今まで全く知らなかったのだが、奈良県の施設は戦争関連の資料を割と豊富に所蔵しているのだった。
     2005年に移転新築された県立図書館で、正確には図書情報館という。近鉄新大宮ないしはJR奈良が最寄だが、アクセスが面倒くさそうなので自転車を借りた。まったくやる気のない雰囲気の爺様がやっている店で、手続きも超簡素。今時観光客を当て込んで運営しているレンタサイクルは割と手続きが煩雑なことが多いから、こりゃ気楽でええ店だと思ったら、前ブレーキのコードがだるんだるんで少々危ない。資本主義!といったところか。まあ贅沢はいうまい。

     

     ここは戦争資料コーナーを設けている。それもカラーボックスレベルの棚に「黒い雨」とかが並んでいるだけのよくあるやつではなく、市立図書館分室並みの書棚の数に、よそだといかにも書庫にありそうな資料が開架でざーっとならんでいる。実に壮観だ。求めていたもののいくつかは、自費出版レベルの個人の従軍回想だったり戦友会の文集的なので、こういうのをしっかり所蔵しているのはこれこそ図書館だよね。

     

     そして目的の1つだった記録を蔵書の一冊の中から一件確認した。この本自体は何十年も前に印刷され、散逸したならともかく、少なくとも2005年かその辺りからずっとこの書棚に収まっている「昔から平然とそこにあるもの」に過ぎないのに、おー、発見した!という気分になるのは毎度のこと。神々しいものすら感じてしまうのは、「記録」の重大性をおそらく現わしているんだと思う。


    Thunderbird行ったり来たり(5)

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       翌日は、仕事の予定に余裕があったので、博物館を訪れた。地図で見ると図書館のすぐ隣のようだが、森を挟んだ丘の上にある。空にそびえる黒鉄の城というほどではない煉瓦の建物がお出迎え。ちょうど地元の偉人・永井豪の展覧会をやっていて、9月に大阪にも来るらしいが、天保山のあのウンザリする場所で見るよりこちらの方が遥かに価値があろう。そしてよく知らずに来たのだが、この博物館は、第九師団の兵器庫の建物の移築再利用なのだった。やはり大阪開催を待たずして正解。

       

       上記記事(余話)で、博物館志望学生に偉そうに言うておいて、己は集金イベントに来とるやないかと叱られそうだが、それはマンガへの差別というものだ、と言いたいところ、学術的な視点はもう少しあってもよかった気はする。展示の遊び心は結構あったが。

       

       それにしても、「デビルマン」に代表される陰惨な作品群の一方で、ナンセンスギャグマンガも多数あり、こうして並べて見せられると「この人頭大丈夫か?」と思わせられるギャップが凄い。そんな話を若い衆にしたら、「あたしの母がデビルマン大好きです」、ということに驚く時期ももう過ぎたな。

       

       この人、師匠の石ノ森章太郎を他山の石として締切をきっちり守ってきたと吉本浩二「ブラック・ジャック創作秘話」で読んだけど、特に悪魔系の作品はこんな濃いタッチをよく期限内に仕上げたなと感心する。やっぱマンガ家って絵巧いんだなとなかなかに圧倒される画力だったが、世代的に思い入れもそこそこなのが損をした気分だった。

       

       さて当地の食べ物といえばガスエビに代表される魚介になろうが、特に出張前半は仕事が終わると厭世感たっぷりに疲れ果ててしまっていたので暖簾をくぐる元気がない。ホテルが駅周辺で、当地は盛り場が駅から離れているので余計もういいかとなる。で8番ラーメンという実家の近所にもあるやんけという店の選択で済ませていたのだが、出張後半は段々と時間に余裕も生まれて多少は物色することができた。

       

       カレーは有名チェーンが気色の悪い研修をやっていると小耳に挟んだので別の店舗でいただくも、まあカレーはカレーだなという感想。ハントンライスはこういうのをB級グルメというんだろうなという料理で大変によい。単に組み合わせただけちゃいますのという辺りがね。


       食堂でビールを1本飲むくらいしか飲酒をしていなかったので、最終日は飲み屋へと繰り出した。ちょうどホテルの近くに日本酒バーがあり、入りやすそうな雰囲気だったのでちょうどいいやと敷居をまたいだのだけど、市内に外国人観光客があふれる現状に対して店主の女性がポップなやわらかヘイトを無邪気に語るのであまり楽しめず。

       まあテレビが悪いんだけどね。「今日もテレビでやってましたよ」と、「外国人の迷惑行為」を語ってたから。おそらく実体験としては、ヨソモノがわんさといて面倒くさいなあとか、言葉がわからないのに道聞かれてシンドイなあくらいしかないはずのところ、テレビで露悪的に取り上げるのを見て実体験のかすかな摩擦が増幅されるんだろう。一応やんわりと反対意見を言ったら、客商売の器用さか、あるいは生来さっぱりした性格の方なのか、なるほどそうやねと同意いただいたが。

       ところで「日本人が『外国人』というとき想像するのは大抵白人」というのはよく指摘される話だが、こと観光客となると「中国人ばかり」と言う人が多い。実際、訪日数でいうとダントツ1位なんだが、当地のようにそれこそ欧米系もたくさん見かける場所でも同じ言い方がなされるのは何でだろう。ま、大体理由はわかるんだけど。


       宿泊のホテルでは、個人経営だからか外国人観光客のグループに抹茶を無料で振る舞って喜ばれている文化交流な場面と遭遇したのだけど、茶菓子を口に入れた途端に一様に微妙な顔つきになるコーカソイドの面々に苦笑した。見かけからしてあまりおいしくなさそうな菓子だったから、文化の違いという話ではおそらくないと思う。


      Thunderbird行ったり来たり(4)

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         ふるさと最寄りの「魅力度ランキングで上位にいそうな都市」に来ていた。地理的には身近だが、来たことは数えるほど。最後に訪れたのは20代の前半だったような気がするから記憶もろくにない。

         

         出張なので駅と仕事場とホテルを往復するだけ、とはいえ、行き帰りのバスは主要エリアを通るからうっすら観光気分にはなる。そしてやはり外国人観光客が多い。アジア系のみならず、英語以外の言葉を話すヨーロッパ系もかなり見かけた。バスは電車に比べてヨソ者にはわかりにくい公共交通だけど、当地は運行会社が2社あって、いずれもホームページの出来がよろしくないこともあり、余計にわかりにくい。外国人ならなおさらだろう。しかしそこはさすが表無の国! 運転手はニコニコと英語で案内していてスムーズなものである。研修受けさせられてんのか、手当はずんでくれよ、と余計なことを案じる。

         

         あるときは、何事か質問してきた白人男性に運転手がシャキーンとポケトークを出してきて、おお!秘密兵器の登場だ!と興奮した。なるほど難しいことを聞かれたときは現代の利器があるのかと頷いていたら、「近くです」⇒「It's near」と、あまり高性能を確認できない簡素なやり取りだった。英語?んなもんこれで済むんだよ、といわんばかりの態度が清々しい。この運転手、ことさら英語が苦手というわけではなさそうで、その後口頭で「歩いて5分くらいですよ」などと英語で伝えていた。だったら最初からポケトークは要らないんじゃないかというのは若い衆の発想で、言葉に詰まるのは日本語でもあること。そのうち「あれやあれ、あれやがな」状態になったとき、日本語⇒日本語のポケトークが出てくるかも、ってサイト検索がすでにその状態だわな。

         

         それにしても、趣深い街並みだ。百万石云々もあるだろうが、これはつまり、爆撃されなかった街ということで、小京都っていうのもつまりはそういうことやんね。市中心部の裏通りにある、なんてことない住宅地なんか京都と本当によく似ている。違いといえば、雪国なので軒がデカいことか。あと、雪国の常、アスファルトが錆び茶けているのは我が地元と同じであるが(融雪装置の錆びが路面に沈着すると思われる)、彼らは同じにされたくないだろうがね。戦前の洋風建築が多いところは台湾とも少々似ている。

         

         せっかく来たので、空き時間を利用して何かをしようと考え、試しに県立図書館の蔵書を確認した。当地にあった第九師団関連の文献は……、お、いくつかあった。
         ということで閲覧に訪れた。城址の周辺が文化ゾーンみたいになっているのはよくあることだが、当地はその度合が群を抜いている。広々としていて緑が多くて、美術館だの博物館だの大小合わせていくつあるんだろうという諸々がゆったりと建っている。このかなり贅沢な配置は、これこそ前田さんちの百万石パワーの名残りだろう。ヒグラシの合奏を聞きながら歩いた。維新の連中が力を持つと、この贅沢な公園緑地にチェーンの飲食とか、芸能事務所と結託したくそしょうもない劇場とかがわいて出ることになるのです全国の有権者の皆さん。


         目的の県立図書館は、懐かしい印象がふんぷんと漂う昭和のコンクリート建築だった。子供のころの図書館は、こんな具合の少々息の詰まる佇まいだった。wikiによれば、全国で4番目に古いだそうだが、むしろ世の図書館はそれだけみんな更新されたんだな。我が地元もそういえば、とっくの昔に新築移転した。こんな古さだと当然5時で閉まりそうなところ8時までやっていて、そこだけ現代風。


        Thunderbird行ったり来たり(3)

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          主計町

           

          主計町

           

          主計町

           

          出羽町


          Thunderbird行ったり来たり(2)

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            広坂

             

            広坂

             

            尾張町

             

            尾張町

             



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