サタデーの朝から夜

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     雨。「靖国」の大阪封切日。9時半の初回を見るため十三の第七藝術劇場へ行く。以前、「靖国」を巡るドキュメントを撮ったらオモロイんちゃうかと書いたので、自らDVカメラを持っていこうかと企むが、ちっとも早起き出来ず諦める。所詮その程度である。

     早く行くつもりが着けたのは9時。報道各社が劇場前に詰め掛けていて、結構な人だかり。知り合いの記者のナカムラさんの姿もある。観客誘導のためのボランティアスタッフに知った顔がチラチラしている。「あ、森下君!後で君コメントもらうからな」と報道対応をしている知人のおばちゃんから声をかけられる。

     予想はしていたが既に満席で、立ち見もしくは、下の中華料理屋のホールを別館よろしく借りて同時に上映するのでそちらに行けという。せっかくなので中華を選ぶ。ホテルの宴会場を想像してもらうと丁度いい。そこにスクリーンとスピーカーとプロジェクターが置いてある。館内のあちこちには無線を耳から下げた警備公安の警官がウロウロしていて、なにやらメモを取ったりしている。ボランティアの中には活動家のオッサンもおるので、どっちかというとそっちの監視が仕事じゃないかとも思う。

     映画の内容はさておき、上映終了まで特に何事もなかった。当たり前だ。不安は箱の中身を開けるまで。逆に言えばだから不安はいくらでも増殖してしまうものなのだろう。とにかく、いい宣伝になった。それだけだ。
     コメント求められるしなあ、と感想を考えながら外に出るも、テレビの人は誰も僕に声をかけてくれなかった。アレ?

     何もなかったとはいえ、カメラに収めておきたかったこともいくつか。

    ・警備の私服刑事が館内をうろつくのは「客が不自然に感じるのでは」と、映画館側と警察が話していると、ボランティアの警官嫌いなオッサンが「んなもんポリってつけとったらええねん、ポリってつけとけやコラ」などと中学生のように絡んでてた。
    ・超満員の様子について、記者の一人が映画館の支配人に「ここがこのように満員になるのは何年ぶりでしょうか」と邪気なく失礼な質問。「いや、●●のときも結構お客さん入ってましたし…」と支配人は口ごもる。
    ・僕の姿を見かけた前の会社の人間が「い、今、うちの元社員が館内に入っていきました!」と騒ぐ。わしゃ危険人物か。

     映画について簡単に。とりあえず8月15日の靖国のあの喧騒を撮り続けたことには頭が下がる。ただ、あの軍隊の格好をしている人々の中の誰かから、冷静なインタビューが取れれば完成度はググっと上がったと思う。難しいだろうけど。
     刀鍛冶の爺さんは何が気に食わなかったんだろうというくらい、何もしゃべってなかった。

     昼、学生相手の仕事に行く。早速今朝のことについて質問を振るが、学生は皆、「靖国」という映画があるということだけかろうじて知ってるくらいだった。

     夜。良元優作ライブに行く。セカンドアルバム発売を記念して、梅田のシャングリラで単独のライブである。会場は満杯で、休憩挟んで2時間超、とっくり聞かせてもらった。

     メンバーは、去年僕らの劇団の公演の後ライブしてもらったときと同じ、ウッドベースの中島さん、ギターの西條さんに加え、ドラムに小竹さんという人。ドラムといってもセットではなく、フツーの段ボール箱をブラシで叩くという奏法で、まーとにかく3人ともスキルが高い。

     ライブには、今朝ナナゲイ前で会ったナカムラさんや、ライブ会場でかなりの確率で遭遇するマツイさん(今回は無理矢理僕が、聞けとばかりに呼び寄せた)、芝居仲間のココロさんが来ていて、何と言うか、楽しかった。途中、酔いどれの客が卒倒して僕に激しくぶつかってきて、ナナゲイよりこっちがよっぽど危険じゃねーかと思ったが。

     ナカムラさんが「人間がわざわざ気持ちを歌にするのは、こういうことなのかと思ったよ」と風体にそぐわずロマンチックな感想を言う。ナカムラさんやココロさんは多分、優作さんの歌とそう違わない景色で育った人なのだろう。僕は全く違うので、2人のように涙ぐむことはなかったが、歌を唄うっていうのはこういうことなんだなあという感想は同じである。

     まーせいぜい駄目出しを何かするとすれば、内輪の客がまだまだ多いこともあり、MCに内輪感が漂っていたところが、例えば初見のマツイさんなんかには若干しんどく聞こえたみたい。いずれにせよ、終演後飲みに行った先で、僕はアヤフヤな歌詞のまま、ずーっと「帰り道」を唄っていた。

    悲しい報告と落語家の話

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       はいこんにちは。「早く更新しないと向井君に怒られるぞ」と、向井を直接知らない僕の友人にも最近茶化されるようになってしまいましたが、またまた間が空きました。今回間が空いた理由は、単純に言えば落ち込んでいたからです。

       去年制作して、12月にin→dependent theatre2ndで上映もした映画を、ぴあの賞に出していたんですが、先月結果が届いて、見事カスリもせずと。一応遅ればせながらのご報告でございます。結構いい感想も貰ってたので、そういう方には何だか申し訳ないなあと、筋違いなのはわかってるけど、つい考えてしまいます。

       見に来てくれた知り合いのUDさんからは「え?あれで通ると思ってたの??」なんて傷口に塩なことをバッサーと言われてしまったように、他人からみりゃそれが正当な評価なんでございましょうが、作った方としちゃあ自信満々、いや低く見積もって「自信満」くらいで応募しとりますからね。
       しかし我ながら「落ち込みすぎやろ」という自覚もあり、慰め、分析、叱咤激励を求めて色んな人に話を聞いたらば、‖梢佑麓分にやっぱりさして興味がないものだ、と改めて思ったし、他人は自分を想像以上に見てるものだ、とも痛感させられた。

       そもそも小劇場で演劇をやるのと違って、映画は競い合いがあるぞ、とシビアな現実を求めたことが、カメラを回し始めた大きな理由なんだけど、いざシビアなことがあるとガッツリ凹んでいるから世話はない。まあとにかくやるしかないわい。

       とりあえず、他人の舞台に誘われたので、久々に出演することにしました。色々書きたいこともあるけど、詳細はまた。

       ところでわけあって、知らないバーに飲みに行ったときの話。会社を辞めて落語をやっているという人と出会った。落語をやってるだけあって、かなり愉快な人であったが、「いやあ僕も舞台とか映画とかシワくやってまして」と素性を明かすと、互いに思ってる不満とか意気込みとか悩みとかなんのかんの噴出して大いに盛り上がった。単純に言えば、刺激。やっぱり飲みには行くものだ、と思わされる。この人のこともまた改めて宣伝したいと思います。

      タワレコで帰り道を買う

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         良元優作2枚目のアルバム「帰り道」を、難波のタワーレコードで買った。
         本作の最後に収録されたアルバムタイトル曲の歌詞の一節

        「No music No lifeだとかド派手な看板がわかったふうに物を言う」

        が、この曲を初めて聴いたときから何でか凄く印象に残ってて、なのでその引用元からこれは是非買ってやろうと、そういうささやかなお遊びである。

         めでたくCDは吉井和哉とかの横辺りに一枚だけ置いてあった。僕はすかさずそれを手に取る。へへ、これでタワーのパソコンの売上データに「良元優作1」が加わるわいとほくそえむと同時に普通にすげーなあとも思う。
         このジャケットでは彼を知らない人間のジャケ買いは望めないんじゃねーか?と心の中で駄目出しをしつつ、メジャーではない日本人のほかのCDも欲しくなって、日本脳炎とエレクトリックイールショックと、あわせて3枚レジに持ってく。こういう大人な買い方は久々である。

         で、僕は結局自宅で後の2枚は大して聞かず、「帰り道」ばかり聞いている。我らがエノモトもアルバム作ってみるか、と考えつつ。いやいや頑張るのはそっちか?全部だよ全部。

        SPとサイード

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           ここ数年、近くの友人はもっぱら東京その他に就職・転勤で去っていくばかりだったのが、この4月から仲のいい友人が2人大阪に異動してきて嬉しい限り。とっとと飲みに行きたいところだけど、どちらも異動したてで忙しそう。

           そういうお前は暇なのかと言われれば、一応台本執筆その他で忙しくしておるつもりではあります。おかげでHPの更新がサボリがちだったのを、とうとう制作の向井からまたまた「更新せよ」と怒られてしまい、今日のこの日でございます。

           ところでHPは一体どうなっておるのかという問い合わせも2、3いただきましたが、現在復興製作中。なんせゼロからの再構築なので今しばらく時間をいただきたく。

           最近「SP」の台本を読んでまして。ええ、勉強させてもらお思いましてね、へへ。感想は特に書きませんが、読了したので、次なる活字を求め何となく立ち寄った本屋で、いくつか読んでみたい本があるなあと物色する中、結局購入したのはエドワード・サイード。

           あえて劇作との関連を見出すとすると、去年でしたっけ?ドキュメント映画にもなった著名な学者です。僕が学生のころは、院生の間で妙に流行っていて、院生たちは口を開けばエヴァンゲリオンかサイードか、ってな具合でしたが、ワタクシはようやく初見。それもインタビュー集という結構軟弱なスタイルの本です。聞き書きはビギナー向け。「バカの壁」と同じです。1300円もしましたが、ちくま文庫なので致し方あるまい。

           いやいや、チベットのニュースを見ていると、こういうのを読まないといかんのかなあという関心が湧いたのが多分、手にとってしまった理由です。

           チベットのニュースは連日やっているけど、何かこう、ゆるいんですよね。聖火の妨害が悲しいとかって、まあそりゃそうなんでしょうけど、それを言っとけば、チベットの問題という何だかムツカシソウな話から逃げをうてるみたいな、都合のいい落としどころみたいな性格を感じてあんまり好きではありません。

           偉大なる山本七平によると、どこの国でも大抵民族紛争とか虐殺とか経験してるので、ああいう話には敏感に反応する。日本にとっての核兵器みたいなもんだそうです。核を落とされたことがない日本以外の国には、日本人の核への忌避がピンとこないのと同じように、朝鮮人とかアイヌとかを苛めたくらいしか経験のない日本には民族問題があんまり響いてこないというわけです。

           井筒監督がアサヒ芸能のあほばかコラムで「スポーツ選手はもっと態度を表明せーよ」と書いてたけど、ここはひとつ、コウダさんあたり、アイスランドの歌姫ばりにビシっと一発「チベット〜」とシャウトするのはどうでしょうかね。


          【映画評】キューブ、キューブ2

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              「2」は当たるが面白くない。
             映画の場合ほぼ必ず当てはまる。「1」が成功すれば映画会社は二匹目のどじょうを狙う。客も1の面白さを期待して映画館を訪れる。だから興行的には成功するが内容は大抵の場合、トホホである。

             結論からいえばカルト的なヒット作となった「キューブ」の続編「キューブ2」もこの法則に漏れなかった。内容はトホホである。トホホの原因というか教訓は、「どこまで説明するか」ということである。

             物語の世界でどこまで説明するかは結構難しい。説明が不足すれば不満が残る。謎めいた仕掛けについて、ハナから説明する気もなさそうな作品は、消化不良どころか強烈な不快さえもたらしかねない。とはいえ説明過多なのも興ざめだ。無粋というやつである。

             「キューブ」はそういう点では絶妙の説明し具合である。

             立方体の部屋が延々と連続した謎の施設に閉じ込められた男女数人。餓死の危険もさることながら、部屋によっては刃物や毒薬が飛んできて危険極まりない。どこが危険な部屋でどこがそうでないかなどに実は法則性があって、これが程よい謎となってストーリーを盛り上げるが、結局のところこの施設が何なのか、これは最後までよくわからない。

             登場人物の推測によれば、どうやらこの巨大施設が公共事業だということ、そして人が使わないと無駄になるから彼らは連れてこられたということらしく、TVタックルもビックリの恐るべき無駄公共工事である。カナダの公共工事も日本と同じかと、これはこれでかなり興味深い話なのだがそれはさておき、とはいえこの巨大施設について、あくまでこの程度の推測しか説明はされない。

             というのも、この施設が何かということはあまり物語にとって意味がないからである。

             登場人物の一人が言う。「俺もさ、誰も彼もがシステムの一部なんだ。俺は設計し、君は見回る。君が言った通り、目の前を見るしかない。全体は誰にも見えない。人生は複雑だ。俺たちがここにいるのは人生を制御できないからだ」。

             つまり陳腐を恐れながら言えばキューブは社会の暗喩である。
             この台詞を言う人物は、勤務先から言われるまま、それが何かわからずキューブの一部分の設計に加わっていた。自分の行為が、風が吹けば桶屋が儲かる式に実はどこかで誰かに深刻な影響を与えているかもしれない。そんなことは誰にもわからない。この映画は巨大システムと化した現代社会をキューブに象徴させながら、そこでもがく人間を巧みに描く。

             なんだか説教臭そうな内容に思えてくるかもしれないが、例えば足手まといな知恵遅れの青年を連れて行くかどうかという議論は、単純だが面白い。ヒューマニズムか、マキャベリズムかという問いだ。そしてその青年が説得力を持った方法で活躍する場面は単なるトリックにとどまらない(展開としては結構バレバレだが)。

             話が逸れたが、キューブが社会の暗喩であるということは、この施設が何なのかを安易に説明すれば、社会全体を説明していることにもつながってしまい、「世の中はそんなに単純じゃないやろ」と安っぽく思われてしまいかねないといえる。

             とはいえ世の中には本作を見て消化不良だったもいるのだろう。キューブの盛り上げ要素となったトリックの部分に注視した人は、一体これが何なのかはやっぱり気になるというものである。

             だから2ではその説明を試みた。これが結局大失敗となったわけである。
             2も基本的な構造は同じ。立方体の謎の施設に連れてこられた複数の男女。わけのわからない事態に混乱しながら脱出方法を探る。同じように危険な部屋もあり、登場人物同士の内ゲバが起こるのも同じ。ただし今回は四次元立方体ということで、時間軸の概念が加わる。なので別の時間軸を生きるもう一人の自分が現れたり、目の前でそのもう一人の自分が死んだりミイラになっていたりする。時間の流れが早い部屋やスローな部屋もあり、アイデアとしてはなかなか面白い。登場人物にもそれぞれ謎めいた背景があり、ストーリーはかなり入り組んでいる。

             しかし逆にこのためトリックストーリーが先行して、登場人物の行動の必然性がトリック以上にはあまりない。代表的なのが人喰いに走る人物で、この人何でそうなっちゃったのか唐突でよくわからない。単に空腹だったから?

             2の場合は、こうやってトリックストーリーに終始しているだけに、これが何なのかを説明する必要に迫られたとも言える。

             さてそこまで謎が謎を読んだこの施設は一体何やねん。これを説明しないと収拾がつかない。デビッド・リンチじゃあるまいし、ってわけで説明を求められ、脚本家の思惑はどうであれ、実に苦し紛れに陰謀説で片付いてしまった。

             陰謀論、二文字でいうと「組織」というこの便利な存在は、ほぼ間違いなく物語を陳腐にする。どんなに強大な組織がいようと、それで全て支配できるほど世の中は狭く、単純ではないからだ。
             物語における謎、トリックストーリーは、果たして主役になれるのだろうか。なかなか難しい命題であるが、とにかく2は作らぬに越したことはないらしい。

            「CUBE」1997年 カナダ
            監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ 出演者:モーリス・ディーン・ウィント 、ニコール デボアー 、D ヒューレット

            「CUBE2 HYPERCUBE」2002年 アメリカ
            監督:アンドレイ・セクラ 出演者:ケリー・マチェット 、ジェラント・ウェイ・デイビス



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