才人だらけだ

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     改めて述べると我が劇団ころがる石が劇中使う音楽は、全部中野貴志君によるオリジナルである。フランク・ザッパのアルバムに「黙ってギターを弾いてくれ」というタイトルの作品があるが、中野君はまさに「黙ってギターを弾いている」寡黙な男である。寡黙な男だけに彼と付き合うようになる前の生い立ちなどなどはちっとも知らない。せいぜい偽ジョニー・サンダースみたいな活発なファッションをした旧友がいるというくらいである。なので何食って育ったからそうなったのか判らないんだが、とにかく彼の作曲の引き出しは数が多い。

     オリジナル音源の使用ということであれば、ONE WAY TRIPとか、身近なところでも珍しくなくいる。その音楽を毎度作っているジュン君はギターの腕前ということであれば多分中野君より上手いんじゃないかと思う。だけど中野君は音楽全般何でも作れるのがスバラシイ。昔「ニュースな女」という一人芝居をやったとき、「地方テレビ局の夕方ニュース番組のオープニングっぽい曲を作ってくれ」と頼んだら黙ってそれが出てきた。

     今回の作品は、1974の話と2004年の話が平行して進む構成になっている。1974年の話ではジャズ、2004年の話はジャズテクノが黙って出来上がってきた。なかなかクールな出来栄えで、そこらへんも注目(注耳?)してくださいませ。

     加えて今回は、役者のココロさんが話の中でドラムを叩くシーンが何度かある。彼はドラマーでもある。話の構成上、タイコの数がやけに少ないドラムを自在に叩く。これまたストーリーとは別に普通に見てて楽しいシーンであり、楽しみにしていただきたし。余談だが映画の中ではココロさんは料理をしている。彼は料理人でもある。役者の特技におんぶに抱っこな台本を書くワタクシである。

     そして荒木道成演じる片山も劇中、弾き語りをするシーンがある。「デジタル銀幕フィルモグラフィ」で彼が演じた中井戸という「素人にはついていけない曲を弾き語る男」のシーンがやけに楽しかったので、今回もつい悪乗りで片山は新聞記者なのに弾き語りをする。僕が台本段階でテキトーに書いた歌詞を一言一句変えずに見事尾崎豊風に仕立て上げてくれた。題して「裏金の歌」。記者なので当然社会派な作風である。

     加えて不肖・ワタクシもベースを弾く。そのために知り合いからわざわざフェンダーのベースを借りてきた。楽器が高級になれば多少救われるのではないかという浅はかな発想、ではなくて、時代設定上、僕のベースは合わないからだ。といっても僕がかつて高松市屋島西町の中古屋で買った3万数千円のグレコに比べ、フェンダーのベースはいい。確かに楽器が高級だと色々解決されることがあるのだと知りました。 余談ですが、今回豪腕な刑事を演じる浦田克昭さんには、映画の中でベースを弾いて貰ってる。彼はベーシストではない。即席で練習してもらったという荒業である。役者の人って凄いなあ。

    ごめんとありがとう

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       仕事が10時過ぎに終わり、あれもこれも山積みなんだけど、学生バイトのテラオカとついつい軽く飲みに行く。最早年の瀬、飲み屋は結構一杯で、たどりついたねずみがチョロチョロしてるチェーンの餃子屋で飲んでいると、有線から懐かしいというか珍しい歌が流れている。学生君は当然知らない。レッドウオリヤーズの「バラとワイン」である。曲調は売れ筋の名曲なんだけど、運が悪かったのか売れなくて、結局「隠れた名曲」のアーカイブ入りである。  さてこの仕事では学生と話すことが多いんだが、今の大学生はとてもキレイな価値観で生きているのに、よく驚かされる。知り合いはそれを「いい子病」と呼ぶが、確かに病と呼びたくなるほど、不健全なものを感じてしまうことも多い。一緒に飲んでいたテラオカは、就職活動の面接でも平気で嘘を言う至って普通の若者なんだが、彼が特殊に見えてしまうほどである。  週刊誌で井筒和幸が映画「恋空」を「ごめん」と「ありがとう」だけで構成されてる話と指摘していた。なるほどなあ。そういう映画がヒットしてしまう世の中は不幸である。  というわけで僕はチンケに抗う。今回の台本も勝者はいない。チラシにも書いた。0勝1敗1引き分け、それが日々のロマンというやつだ。そんな話のどこが面白いのか。それを面白いと思ってもらわないといけない何かを背負ってるんだ、とチンケな僕は一人勝手にそう意気込む。

      長い

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         公演が近づいてきて、稽古場の温度もあがっております。別に張り詰めたムードとかそういうのではありません。何事も切羽詰ったときにピリピリしがちですが、ピリピリするのは案外簡単な割には特に何も生み出さないので、そういう空気は嫌いです。(自分ではそう思ってるんだけど、小屋に入ると「声をかけづらい雰囲気」になるらしい。人間ができておりません)。明るく厳しく。それが理想です。そんでそういう空気で現在推移しております。  本日は二度目の通し。頭から尻まで一気にやってみる練習です。今回の台本はいつもに増していろんな話がぶつ切りで転換して紡がれていくという、一見舞台ではNGの構成をバンバン使用してるんで、全体の流れを把握しておく必要性が高いのです。  そしてまだ二時間超えです。前にも書きましたが、二時間超えるとお客にとってはそれだけでしんどいので、かえって勿体無い。なので削ります。異能の役者・竹越君のあれやこれやの面白いコネタもいくつか没になるでしょう。すいません。  一方、自分の役というのもいいかげんどうにかしていかないといけません。僕は特段優れた役者でもなんでもないので、脚本・演出・主演・俺という劇団俺俺な存在にはなれてませんで、かといって「別に出んでええやろ」という超端役で出演する、大物演出家みたいな出方も好きではありません。というわけで、サッカーで言うとFWの左前とか、そないに目立たないけど忙しいというような位置を担うようにしてます。今回の役は刑事です。自分で書いたんだけど、芝居がかったせりふが多くてやっかいです。ひねたフレッシュマンの上地宏到君と、クールな梅田裕介君、腕っ節浦田克明さんの男性ホルモン4人で全然仲の良くない刑事をやります。笑いが一切なくて、ひたすらシリアスなのは、やってて楽しいですけどね。

        片山

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          朝青龍が謝罪にこないので、横綱審議委員の皆さんは激怒してたけど、芝居やってると、ああいう人はしょっちゅうだ。俺の方がもっと怒る理由があるぜ、そんなに怒るなよとすら思ってしまう。相撲については、協会が斎藤君の事件をこのままで済ませてるうちは、俺は馬鹿にし続けることにした。勝手にしろ。  さて、続編を作るのは難しいとは、映画評でもさんざん書いたことで、巷の映画の「2」や「3」を見ればすぐわかること。エイリアン対プレデターの2は若干気になりますが(見ることはないでしょう)。無論俺には商業的要請など何もないので「2」を作る動機は何もないんだが、どこか憧れがあるのもこれまた事実。前作「デジタル銀幕フィルモグラフィ」は「13年後」を映画化する物語という、物語の外にもう一つ物語を作ってしまうという、なかなか無いタイプの続編だった。というか新発明だろう。今回もちょっとした続編(?)で、「マル特ロストワールド」で登場した片山と久保田という記者が再び登場する。  片山というキャラは日常的なしょっぱい人間ばかり出てくる僕の台本の中では珍しく、名探偵に代表される物語性の強い、ちょっと非現実感のあるキャラとなっている。なのでそれこそ名探偵のように何度も出したくなり、彼と正反対のキャラである久保田とセットで出すことにした。片山というのはある種、サラリーマンの理想のようなキャラで、会社の要請に適当に帳尻を合わせながら、自分のやりたい仕事をやるという記者。一方の久保田は会社の要請に着実にこたえて点数を稼ぐという、これまたサラリーマンの理想ともいえる、ようは出世するタイプだ。  片山を演じるのは再び荒木道成。僕があれこれ考え過ぎて書くキャラを、さらに考えをめぐらして演じる大した役者ですね。今回の作品も、濃い役者たちが、さまざまな種類の人間を演じるが、そうなると救いがなくなりそうにもなる物語を、この片山という魅力的なキャラがささやかな希望を支えてくれることになると思う。

          お知らせの続き

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            新キャストが決定しました。劇団万国トカゲ博覧会の土屋君です。何度も出てもらってる上、毎度毎度音響の操作をお願いしてるんで、ここ数年はほぼ毎公演にかかわってもらってます。というか、今回もそもそもは音響の担当で入ってもらってたという身近な感じが、姿を消したレスラーが覆面レスラーになって帰ってきたみたいなプロレス的なドラマチックさを漂わせていて素敵でしょ。  さて何やかし、手一杯な日々を送っておりますが、作品の仕上がり具合は段々と急傾斜のカーブを描きながらあがりつつあります。  さて、その中身にについて。  こっそりネタをぱくっといて知らんぷりとか、「これと似たような映画あったよね」と登場人物に喋らせる言い訳型パクリ(メジャーどこでは「踊る大捜査線」の「天国と地獄だ」が代表例)とか、しばしば見かけますんで、いっそ明言しときましょう。言ってしまえば僕が書いている台本は、毎回パクリの集合体です。構成上のテクニックとか、パクるというよりは学ぶという方が当たってるようなものもありますし、憧れみたいなレベルのものもあります。こういう雰囲気の俺も作りてー、とでも言えばいいか。たとえば「戦争の豚」は「ノーマンズランド」を俺も作りてーと思って、結果誰も真似だと言ってくれなかった出来で終わってしまいました。  今回は僕が大好きなものをいっちょやったるかと考えて、たどり着いた結論が「マークスの山」(をやりてー)です。  登場する男が誰も彼もしょっぱくて格好悪い、のがむしろ格好いい、という脱・北方謙三な男根主義ハードボイルドは、毎度毎度、私の得意とする分野なんで、全体的に高村薫の真似しっ子ではあるんですが、今作は刑事モノでもあり、まんまマークスの山を目指しました。といっても合田や吾妻のような刑事が登場するわけでもなんでもないんで、見た人には「どこが?」と言われそうですけどね。ノリです。ノリ。こういうノリの作品は、格好つけ方を間違えると出来損ないのマイアミバイスみたいになっちゃって、とてもとてもツライことになってしまうんで注意が必要です。そういう点では、役者諸氏、キャラを掴んできていて、抑制の利かせた演技がイカした感じでかみ合う部分が増えてきました。つづく。


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